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アメリカ大統領選挙の世論調査における“誤差問題”で指摘された、「隠れトランプ支持者」の存在 −同じ事は日本のマスコミの世論調査(操作)にも言える−

 9月3日のNHKニュースはアメリカ大統領選挙の世論調査における“誤差”の問題について、次の様に報じていました。
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米大統領選 投票日まで2か月 コロナと人種差別問題の対応 焦点
2020年9月3日 18時32分 NHK

 アメリカ大統領選挙は、投票日まであと2か月となりました。新型コロナウイルスや人種差別問題への対応が引き続き焦点となっており、トランプ大統領とバイデン前副大統領が、それぞれの主張を激しく戦わせています。

(中略)

 一方で、ベルト教授は「両陣営ともに共通しているのは選挙戦のカギを握るのは郊外に住む有権者だと位置づけていることだ」と述べ、両陣営がいずれも郊外に住む有権者の支持獲得に、力を注いでいくことになるという見方を示しました。

世論調査は信頼できるか
今回の大統領選挙では、世論調査で、民主党の
バイデン氏が一貫してトランプ大統領をリードしています。

 ただ、
4年前の大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン氏も世論調査で終始リードし、主要メディアの多くはクリントン氏が勝利する確率は71%から99%だと予測しましたが、実際に勝ったのはトランプ氏でした。

 では、今回の選挙で、
世論調査は信頼できるのでしょうか?

〈前回の結果を検証〉
 前回の選挙のあと、
アメリカ世論調査協会は、世論調査の精度が低かった原因を検証し、報告書にまとめています。

(中略)

 
「隠れトランプ支持者」をどう把握するか
前回、2016年の大統領選挙で世論調査が実態を正確に反映できなかった要因として指摘されているのが
「隠れトランプ支持者」の存在です。

 「隠れトランプ支持者」とは、
トランプ大統領を支持しながらも、世論調査などに対してはそれを明らかにしない人たちのことを指します。

 前回の選挙でこの点に注目し、トランプ大統領優位の結果を導き出したとされる世論調査機関、トラファルガー・グループのロバート・ケイヒリー主任調査員は「隠れトランプ支持者」の存在には、世論調査やアンケートの回答者にみられるある傾向が影響していると指摘します。

 これは回答者が質問に対して、みずからの
本音とは異なっていても社会的に受け入れられやすい回答をしてしまうという傾向で、「社会的望ましさのバイアス」と呼ばれているということです。

 前回の選挙の場合、トランプ氏の発言やふるまいへの批判の高まりから、
批判に同調したほうが社会的に受け入れられやすいと判断したり、トランプ氏を支持していると言い出しにくかったする傾向があり、これが「隠れトランプ支持者」につながったといいます。

 こうした「隠れトランプ支持者」は、多くの
世論調査に正直に回答せず、結果としてトランプ氏の支持率が実態よりも低く出た可能性があるということです。

(中略)

 これについてケイヒリー主任調査員は依然「隠れトランプ支持者」が存在し、ほかの世論調査に正直に回答していない可能性があると指摘しています。

 その理由として、トランプ大統領の就任以降、社会の分断がさらに深まったことで、
トランプ大統領支持を言いにくい環境がより強まっていることがあるとし、「隠れトランプ支持者はさらに増えるだろう。人々は自分の意見を口にすることに神経質になっている」と話しています。

 一方、専門家の間では「隠れトランプ支持者」が世論調査に与える影響は限定的だという見方もあります。

 調査機関モーニング・コンサルタントによると、調査の際に人が直接、電話で質問する形式と、これに比べて正直に答えやすいとされる自動音声やウェブ上で質問する形式とを比較した場合、数字にほとんど差がなかったという結果が出ています。

 こうしたことからアメリカ世論調査協会の報告書では「隠れトランプ支持者」が調査結果を大きくゆがめた根拠は見つけられなかったとしています。
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 この報道では、結論として世論調査における
「隠れトランプ支持者」の影響は限定的としていますが、調査の対象者が調査者に対して、「正直に答えない可能性」に言及した意義は大きいと思います。
 現代の「世論調査」はわが国に於いてもほとんどが
電話によるもので、書面によるものはほとんど無いようです。電話調査の実態が詳しく報じられることはないので、電話ではどのような質問(会話)が交わされるのかよくわかりません。

 例えば
NHKの場合は、毎回「コンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける『RDD』という方法で世論調査を行いました」とはいうものの、実際に調査担当者がどのような質問・会話をしているかまでは何も明らかにしたことがありません。

 そうすると調査者の
話し方や雰囲気が、調査対象者の回答に影響を与える可能性は否定できません。調査者の中には“誘導尋問”的な質問をするものが居る可能性が十分あります。
 例えば
「あなたはヘイトスピーチに賛成ですか、反対ですか」と聞かれたら、心の中では在日韓国・朝鮮人に非が有ると考え、ヘイトスピーチを法律で禁止すべきではないと思っていても、「賛成」とは答えにくさを感じると思います。

 すべての調査者が果たして
同じ質問(会話)をしているかも疑問です。仮に質問(会話)が事前に決められていたとしても、調査対象者からの質問などに対しては、調査者が独自の判断で受け答えをする場合が少なくないと思われ、その場合の影響は無視できません。

 
また、選挙の場合は「結果」が出るので、世論調査との誤差ははっきりしますが、それ以外の「賛否」などについては、誤差があっても明確に表面化することがありません。世論調査ならぬ“世論操作”がまかり通ってしまいます。

 
朝日新聞産経新聞の世論調査結果が、大きく異なるのは単に「読者層」の違いに止まらない、調査担当者の質問話法の違いが大きく影響している可能性があります。

 世論調査の正確性を高めるためにも、電話で世論調査を行う場合は、質問(会話)の詳細を明らかにすべきだと思います。
 そしてさらに、
質問はあらかじめ決められた内容で録音したもののみを伝え、調査対象者の回答は言葉(音声)ではなく、賛成は「1」を、反対は「2」をというデジタル方式にするなどの対策が必要で有効です。

令和2年9月24日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ