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夫婦別姓について、世論調査とは言えない“世論操作”の結果を報じる“公共放送”NHK
11月18日のNHKテレビニュースは、「結婚前の姓を名乗れる選択的夫婦別姓7割が『賛成』」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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結婚前の姓を名乗れる選択的夫婦別姓 7割が「賛成」
2020年11月18日 5時04分 NHK
結婚したあとも希望すれば以前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」についておよそ70%の人が賛成と答えていることが研究者などの最新の調査でわかりました。
調査は、家族法に詳しい早稲田大学の棚村政行教授と市民団体の「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が共同でインターネットを通じて先月行い、全国の20代から50代の男女7000人が回答しました。
それによりますと、「選択的夫婦別姓」について、「他の夫婦が同姓でも別姓でもかまわない」として賛成と答えた人は、合わせて71%にのぼりました。
一方で、「自分は夫婦同姓が良いし他の夫婦も同姓であるべきだ」として反対と答えた人は14%でした。
また、「別姓にできなかったことで結婚をあきらめたことや事実婚にしたことがある」という人も、全体の1%余りにあたる94人いたということです。
調査では都道府県の比較も行われ、賛成の割合が多かったのは沖縄で77%、青森と和歌山が75%でした。一方、賛成の割合が低かったのは愛媛で60%、新潟の62%、山口の64%などとなっています。
調査を行った市民団体では、地域によって差はあるもののすべての都道府県で賛成が大幅に反対を上回っていることがうかがえるとしています。
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先ずこの種の世論調査結果を報じるに当たっては、どのように対象者を決定(選定)して、どのような質問と、回答選択肢を用意して、どのような方法(面接、電話)で実施したかを明確にする必要があります。それによって結果が大きく左右され、信頼性に拘わってくるからです。
先ず対象者ですが、これについては「全国の20代から50代の男女7000人が回答しました」とありますが、「・・・が回答しました」という表現は、質問者は年齢も人数も制限しなかったが、結果的に回答者は20代から50代までの男女で、人数も7,000人丁度となったと解釈しますが、極めて不自然です。
「インターネットを通じて」というのが、回答者が調査者のホームページを閲覧して回答すると言う方法であるならば、ホームページを見る年齢層、性別、職業分布などが偏っていないことが重要です。
しかし、もとより「ホームページ」というものは多種多様であり、どのホームページも万人が平均的に閲覧することはまれで、閲覧者は個人の趣味・嗜好、意見の相違などにより、大きな偏りがあるのが普通です。従って、そのホームページが万人に偏り無く閲覧されていることが確認されてなければ、そこに寄せられた声が国民の平均値であると捉えることはできません。
そしてこの問題に関して言えば、この調査に利用されたホームページは万人に偏り無く閲覧されている根拠は示されていません。そのホームページに示された主義・主張の同調者が多数である事、つまり回答者に偏りが有ったことは十分考えられます。
回答者に偏りがあった場合は、その結果を全国民の総意であるかのごとく扱うべきではありません。あくまで特殊な調査による参考程度の調査結果として報じなければなりません。
いずれにしても、ホームページの閲覧を通じて回答したのだとすれば、そのホームページの存在と、世論調査の実施を知っていた者でなければ回答できず、その回答者は全国民から見ればごく一部に過ぎず、その回答を元に集計した調査結果は、多数意見を示すものとして受け入れられるものではありません。これでは世論調査ではなく、“世論操作”です。
結果的には、今回の調査は多数意見と確認できないものを多数意見として集約し、それが事実として報じられた事になります。これはトランプ流に言えば、立派な“フェイク・ニュース”です。
以上のことは世論調査の常識であり、これをないがしろにして行われた調査は信頼性に欠けるものであり、“公共放送”を自称する放送局(NHK)が取り上げるニュースではありません。
また、回答選択肢がすべて「夫婦の姓」となっていますが、「姓」の問題は夫婦だけの問題ではありません。「夫婦が別姓」となれば、その子は必然的に父母のどちらかとは親子別姓となり、兄弟・姉妹も別姓となる場合が出てきます。
「子供の姓」をどうするかという質問・回答選択肢も必要です。この調査ではその事に全く触れていませんが、この点も“臭いものに蓋”をした欠陥世論調査として批判されるべきだと思います。
令和2年11月29日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ