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うっかり見過ごしてはいけない、NHKの「親中」報道 −オーストラリアの対中国WTO提訴に“懸念”を表明−

 12月16日のNHKのテレビニュースは、「豪政府『大麦の関税上乗せは不当』 WTOに中国を提訴へ」というタイトルで、次の様に報じていました。
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豪政府「大麦の関税上乗せは不当」 WTOに中国を提訴へ
2020年12月16日 18時07分 NHK



 オーストラリア政府は、中国がオーストラリア産の
大麦に関税を上乗せしたのは不当だとして、WTO=世界貿易機関に提訴すると発表しました。中国はこれに反発していて、関係のさらなる悪化が懸念されます。

 中国政府はことし5月、オーストラリア産の
大麦が不当に安く輸入されているとして、80.5%の関税を上乗せする措置を始めました。

 これについてオーストラリアのバーミンガム貿易相は16日、記者会見し、
中国側の措置は不当だとして、WTOに提訴すると発表しました。

 バーミンガム貿易相は「自国の生産者の利益を守るため
冷静かつ秩序ある方法で対応していく」と述べ、中国側の措置には正当な根拠がないと強調しました。

 これに対して、中国外務省の汪文斌報道官は、16日の記者会見で「オーストラリア政府は中国側の懸念に真摯(しんし)に対応し、中国企業への差別的な対応を是正すべきだ」と述べ、
中国側の措置を正当化したうえでオーストラリア側に反発しました。

 両国関係をめぐってはオーストラリア側がことし4月、
新型コロナウイルスの発生源をめぐる独立調査が必要だとの考えを示したことに中国が強く反発し、大麦に加えワイン肉製品などのオーストラリアからの輸入を制限する措置を相次いでとっています。

 こうした中国側の措置に対し、オーストラリアがWTOに提訴するのは初めてで、両国関係のさらなる
悪化が懸念されます。
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NHKはオーストラリアのWTO提訴に対して、「懸念」を表明していますが、これは正しい反応でしょうか。

 もともと中国がオーストラリアの、「
新型コロナに対する調査が必要」との考え表明に対して強硬反応して、対抗措置として大麦の関税引き上げの他、牛肉、ワインなどのオーストラリアからの輸入に対して、相次いで制限措置を発動したのが発端です。

 しかるに中国は大麦の関税引き上げを「コロナ調査」への対抗措置とは言わず。
不当な安値輸出に対する措置だと言って正当化しています。これに対してオーストラリアがWTOに提訴するのは当然ではないでしょうか。
 確かに「
一層の関係悪化が懸念される」のは、その通りですが、通常このようなときにこのようなタイミングで「懸念を表明する」のは、提訴に対する“婉曲な非難の表明”に当たります。

 一方で今年の5月に、
中国がオーストラリアに対して、対抗措置として関税引き上げを発表したときに、NHK「懸念の表明」をしたでしょうか。その時のニュース報道は下記の通りです。
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新型コロナウイルス調査要求の豪産大麦に中国 関税上乗せ措置
2020年5月19日 20時02分 NHK



 新型コロナウイルスについてオーストラリアが、
ウイルスの発生源などに関する独立した調査が必要だと主張する中、中国政府は、オーストラリア産の大麦不当に安く輸入されているとして、19日から関税を上乗せする措置を始めました。

 
新型コロナウイルスをめぐってオーストラリアのモリソン首相は先月下旬、発生源や感染が拡大した背景を調べるため独立した調査が必要だという考えを示し、中国側が反発しています。

 こうした中、中国商務省はオーストラリア産の
大麦が不当に安く輸入され、自国の生産者が損害を受けているとして、19日から5年間「反ダンピング関税」など、80.5%の関税を上乗せする措置を始めました。

 これについて
中国外務省の趙立堅報道官は19日の記者会見で「関連する法律や、WTO=世界貿易機関のルールに基づいて調査を行ったうえで、最終的な決定を行った」と述べ、新型コロナウイルスをめぐる問題とは関係なく公正な判断に基づく措置だと強調しました。

 その一方で、趙報道官は「
新型コロナウイルス政治的に操作するのは強く反対する」と述べ、オーストラリアの対応に改めて反発しました。

 中国は今月、輸入した牛肉の検疫で違反が見つかったとして、オーストラリアの企業4社からの
肉製品の輸入を停止していて、新型コロナウイルスをめぐるオーストラリアの対応に反発した措置ではないかという見方も出ています。

豪 WTOを通じた解決も視野に
 中国がオーストラリア産の
大麦が不当に安く輸入されているとして関税を上乗せする措置を始めたことについて、オーストラリアのリトルプラウド農相は「控えめに言って失望している。中国の決定に対して冷静かつ系統的に対処し、WTO=世界貿易機関にはかる権利は残しておく」と述べ、WTOを通じた解決も視野に対応を検討していく考えを明らかにしています。

 また、オーストラリア政府が
新型コロナウイルスの発生源感染が拡大した背景を調べるため独立した調査が必要だという考えを示してきたことと、今回の中国の措置との関連性については、「危険な臆測だ」として否定的な見方を示しています。
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 この報道で、NHKは中国の取った措置に対して
「懸念の表明」をする事は無く、中国の主張を中心に報じていましたが、この時こそ中国に対して「懸念の表明」をすべきだったと思います。
 NHKはオーストラリアと中国の対立に対して、
中国に偏った報道を繰り返しています。

令和2年12月17日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ