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今回の自衛隊のワクチン予約システムは、ごく一般的なシステムで、その「弱点」は許容される範囲内のものであり、それにも拘わらず敢えて不正行為をした上で行われた“欠陥”報道は、「業務妨害」と言うべきだ

 5月20日、21日の朝日新聞デジタル記事は、自衛隊によるワクチン大規模接種の予約について、次の様に報じていました。
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防衛省「抗議」に野党が批判 大規模接種予約システム巡る記事
朝日新聞デジタル記事 2021年5月20日 5時00分

 政府が東京と大阪に設置する新型コロナウイルスワクチンの
「自衛隊大規模接種センター」の予約システムをめぐり、防衛省は、架空の情報でも予約ができると指摘した朝日新聞出版毎日新聞社に抗議文を送った。野党側は19日、抗議に至った経緯についてのヒアリングを行った。

 朝日新聞出版のニュースサイト
「アエラドット」が予約が始まった17日、防衛省関係者の情報に基づいて、記者架空の接種券番号や市区町村コードを入力しても予約できたと「欠陥」を指摘する報道を行った。予約はキャンセルした。毎日新聞日経BPのサイト「日経クロステック」も同様の手法で問題を報じた。

 
岸信夫防衛相は18日の閣議後会見で「ワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、ワクチンそのものが無駄になりかねない悪質な行為」として、抗議する考えを示した。

 岸氏は自身のツイートでも会見と同様の内容を発信。実兄である安倍晋三前首相は18日夕、岸氏のツイートを引用する形で「朝日、毎日は極めて悪質な妨害愉快犯と言える」とツイートした。

 
立憲民主、共産両党は19日に防衛省に対するヒアリングを実施。芹沢清官房長は「サーバーに負担もかける」「不正な予約が積み重なったり、広がったりと波及することがありうる」と抗議の理由を説明した。出席議員からは「取材の自由、報道の自由にプレッシャーをかけることになる」といった意見が出た。

 
立憲の安住淳国会対策委員長は19日、安倍前首相のツイートについて、「システムに不備があることは明らかであって、指摘した側に対して『愉快犯』なんていう言葉を、一国の総理をやった人が使うべきではない」と指摘した。

「公益性高い」
 アエラドットは「予約システムに
重大欠陥」などの見出しで17日に記事を配信した。防衛省関係者の情報に基づいて東京会場の予約サイトに架空の接種券番号や市区町村コード、生年月日編集部で入力し、予約ができることを確認したという。その後、予約を取り消した。

 
毎日新聞は17日のニュースサイトと18日の朝刊で、記者架空の接種券番号などを入力し、予約作業を進めることができたと報じた。毎日新聞は19日の朝刊で「公益性の高さから報道する必要がある」と判断したと記し、「記者が実際に入力して事実であることを確認した。予約はすぐに取り消した」と説明した。

 
<朝日新聞出版のコメント> 記事は大規模接種に関する予約システムについて誰でも予約できてしまう脆弱(ぜいじゃく)性があることを指摘したものです。取材過程での予約は情報に基づいて真偽を確かめるために必要な確認行為で、記事にある通り、確認後にキャンセルしました。政府の施策の検証は報道機関の使命であり、記事は極めて公益性の高いものと考えています。
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大規模接種の予約、なぜ混乱 カギは接種券番号の下1桁
朝日新聞デジタル記事 牛尾梓 2021年5月21日 14時00分

 政府が東京と大阪に設置する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターの予約が17日、始まった。だがその予約システムは、
架空の接種券番号や生年月日などを入力しても予約できてしまうことがわかり、防衛省はシステムの改修を急ぐとしている。なぜこのような問題が起きたのか。兵庫県芦屋市のCIO(最高情報統括責任者)補佐官で、自治体の情報システムに詳しい立命館大の上原哲太郎教授に聞いた。

 ――なぜ架空の情報を入れても予約が取れたり、自治体との二重予約が防げなかったりするシステムが使われるのでしょうか。

 まずシステムの仕様からお話しします。自治体が主体で接種する予定のなか、大規模接種センターが作られることが決まって、国も接種することになった。今回の問題の根本原因は、
全体でワークフローを整理せずに、予約システムを用意したということにあると思います。

 東京と大阪では別のシステムが使われていて、
今回東京で使っているシステムは、私がCIO補佐官を務める芦屋市のほか、いくつかの自治体でも採用されているものと同じ会社のシステムです。

 
1日あたり最大1万人の予約を受け付けられるほどのシステムを一から作る余裕は無く、いくつかの企業があらかじめ作ったものの中から、今回のシステムが選ばれたのでしょう。システム自体はごく最低限の作りです。

 本来は、対象となる
接種券番号をあらかじめデータベースに登録しておき、入力された番号がデータベース上にあるかどうかを登録時に確認する。ただ、誰にどの接種券番号を割り振ったかという情報は各自治体が持っているので、その情報を全部集めるのは時間的に間に合いません。そこで防衛省は、予約は予約で受け付けて、接種した時点で接種券番号を自治体に渡し後から確認してもらうという仕組みにしたわけです。

 つまり、防衛省は接種した番号を渡し、自治体が
後でゆっくりとデータベースと照合して「消し込み」作業をすればいいだろうと。我々情報屋さんからしたら、よくある話なんですよ。

「生かされていない」過去の気づき
 一般に、入力時にデータベースと照合できるようにするとシステムが重くなるので、ものすごく殺到が予想されるときには避けた方がいい。ただ、それには前提条件があって、登録されたデータが「腐って」いてはだめ。後処理が大変なことになります。

大規模接種センターの予約では「正しい接種券番号などを入力したのに予約できない」というトラブルも発覚しています。今後自治体で混乱が生じる恐れはないのでしょうか。

(以下略)
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 朝日新聞は、21日の記事で、防衛省の採用した
システムが、ごく普通のものでそれ自体には問題がなく、今回の「コロナ事態」でそれを採用したことについても問題がないことを、大学教授の発言という“間接的”な表現、言い方で暗に認めました。

 そもそも予約をすると言う行為は、あくまで
「予約」であり、物品、サービスの提供行為自体ではありません。従ってその正当性・適切性確認が予約の時に十分になされず、確認が行為の「実行」の時であったり、「後日」であることは、取引の種類・形態によってはあり得ることで、そのこと自体が誤りであるとは言えません。

 今回のワクチン接種に関して言えば、
予約取得の時には、本人確認が十分でなくても、ワクチン接種時には対象者が持参した「接種券」により、対象者である事の確認は出来、その接種券番号等により後日対象者のデータとマッチングされて消し込みが行われるのであれば、仮に「架空の接種券番号や市区町村コード」の申告により予約が為されていたとしても、それが多くの不正、不当利得を引き起こすとは考えられません。そうであれば、それは許容範囲の「弱点」に止まるのではないでしょうか。

 
「弱点」で済まされるか、「欠陥」に当たるかは、「緊急度合い」コスト「個人情報の取り扱い」などと、「リスク」総合的に見て判断すべきで、「重箱の隅を突く」がごとき議論をすべきではありません。

 そう考えればこのシステムに
「重大欠陥」が有るとし、さらにそのシステムを採用した防衛省の運営を批判した、この「アエラドット」の記事の趣旨自体が不適切で、誤りであり、“扇動的”であったと言うべきです。

 次に誤った記事を報道するに至った経緯ですが、まともな記事を書こうとするのであれば、システムの“弱点”を知った段階で、
防衛省に取材する必要があります。「(匿名の)記者」は事前に防衛省に取材をしたのでしょうか。20日の報道を見る限りでは、防衛省への取材はなかったようです。

 取材をしたにも拘わらずそこで回答を拒否されたり、虚偽の回答をされたのであれば、どちらが真実かを確認するために、違法と知りながらも、実害が軽微であると確認した上で、偽りの予約を“試してみる”行為は、
正当化の余地があると思います。

 そうでなく、
当事者に必要な取材もせずに、逆にしてはならないワクチンの不正予約行為を実行して、“効果的な扇動記事”のレベルアップを図ったとしたら、それは極めて悪質で、悪意に満ちた行為と言うほかはありません。
 その視点、取材手段共に社会秩序、報道業者が守るべき最低限のモラルにも反した言わざるを得ません。

 20日の記事では、
当事者である朝日の主張・弁明に先立って、野党立憲民主党と共産党の発言が掲載されていますが、本人“朝日新聞”の主張よりも野党の主張が先に出てくるのは、最初から“政治問題化”が目的だったように見受けられます。

 また、朝日新聞はこの不正行為を実行した社員について、
「記者」としか書いていませんが、なぜ氏名を書かないのでしょうか。報道機関の使命公益性に基づき、記者として「必要で当然」のことをして、読者の「知る権利」行使に貢献したと本当に思っているならば、実名・顔写真付きで紙面に記載して、その功労を称えてもおかしくないと思います。
 それにも拘わらず
“匿名”を通すのは、彼を称賛する者よりも、非難する者の方が多いと感じているからだと思います。

令和3年5月23日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ

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令和3年5月29日   掲示板 No.1000 - 2021/05/19 より転載

 国家の非常・緊急事態で頑張っている組織に対して、この程度の“不備”で、このような騒ぎ方をする「朝日」と「毎日」の行為は人間のクズのすることです。
 産経新聞が
「中立的な論調」で、識者の「中立的な意見」を報じるのは“一つ穴の狢”と言うべきです。

 批判したいなら、すべてを
自治体任せで何もせず(出来ず)、混乱と大幅遅延を招来し、挙げ句の果てに自衛隊に丸投げで縋った厚労省以下役所・役人批判してからにすべきです。

 今回のコロナ禍に限らず、
地震が起きても、台風が来ても当然のごとくボランティア・自衛隊の出動を要請し、自らは専ら事務所に籠もって、外に出るのは“罹災証明の発行”程度しかしていない、役所・役人の劣化は目に余るものがあります。

 このような中で、究極の国家非常事態、
戦争が起きたら、日本は戦闘が始まると同時に、国内が収拾のつかない大混乱に陥って、即、敗北するでしょう。