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NYタイムズの“デジタル版部数”を報じる一方で、自分の発行部数も、テレビ局の番組視聴率も一切報じなくなった読売新聞

 2月6日の読売新聞は、「NYタイムズ 電子版有料読者509万人…前年比48%増」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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NYタイムズ 電子版有料読者509万人…前年比48%増
20210206 2102 読売
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 【ニューヨーク=寺口亮一】米新聞大手ニューヨーク・タイムズは4日、2020年末時点の
電子版有料購読者が、前年末に比べて約166万人(48・4%)増え509万人になったと発表した。新型コロナウイルスや米大統領選などを巡り、質の高い報道を求める読者から支持されたとみられる。

 クロスワードや料理レシピのアプリを含めた
デジタル全体の契約者は同52・2%増の669万人紙媒体の有料購読者は同2・7%減の83万人だった。

 デジタルと紙媒体を合わせた
全契約者数は、同43・3%増の752万人となった。同社は、25年までに全契約者数を1000万人にする経営目標を掲げている。

グーグルニュース 豪でサービス開始…大手メディアなし
 【バンコク=山村英隆】
米グーグルは5日、オーストラリアで、メディアに記事の使用料を払った上で利用者にニュースを提供する「グーグル・ニュース・ショーケース」のサービスを始めた。地方紙やオンラインメディアなど7社が参加するが、現状では大手メディアは含まれていない。

 オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙は、1社当たりの契約金額は20万〜200万豪ドル(約1600万〜1億6000万円)だと報じている。

 豪政府は昨年12月、IT大手にニュース記事の使用料支払いを強制する法案を国会に提出しており、グーグルは反発していた。今回のサービス開始で、政府が法案を修正する可能性があるとの見方も出ている。
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 記事は、
ニューヨーク・タイムズ紙の紙媒体デジタル版それぞれの購読者数の増減を報じていますが、紙媒体の83万人に対して、デジタル版が509万人圧倒的に多数である事に驚かされます。
 かつて
欧米の“一流紙”は、数百万部を誇る日本の全国紙と比べて部数は少なく、多くても100万部程度と言われてきました。いつの間にこんなに増加したのかと、デジタル版の威力に改めて驚かされます。

 一方、このニュースを報じている
読売新聞他の日本の新聞はどうなのでしょうか。読売新聞は数年前までは、紙媒体の読者に対象を限定した有料デジタル版を発行していましたが、その後デジタル版は存続しているものの、紙媒体と抱き合わせで無料発行に切り替えられました。なぜ、宅配の紙新聞と抱き合わせでない、デジタル版を単独販売しないのでしょうか。

 宅配紙新聞と、デジタル版では、基本的には“媒体”が違うだけで、中身は同じです。であれば、その
両方を提供する意味はありません。どちらか一方で済むはずです。
 読売新聞がデジタル版を単独販売しない理由は、
単独発売は読売新聞にとって、宅配紙新聞の発行部数減少を招くだけでなく、トータルで増加するどころか、むしろ減少の恐れが大きいからだと思います。

 宅配紙新聞の場合は、
宅配網の強弱が発行・販売部数に大きな影響を与えますが、デジタル版の場合は、販売網の強弱は基本的に差がなく、紙面の中身で勝負が決まると言って良いと思います。すなわち自由競争の世界です。各社がデジテル版を単独発売すれば、他社も追随するだけでなく、新聞市場への新規参入が容易になり、新聞市場は自由競争の市場になります。

 読売新聞はそれを回避しようとしているのです。と言う事はつまり
読売新聞「紙面の中身」には自信が無く、今の部数は「強力な販売網」の産物である事を理解していて、デジタルの世界での競争は、現在の「優位」の喪失を意味するだけでなく、業界への新規参入をも促すことと理解して、そういう事態の実現を恐れているのです。

 そのせいで、近年
日本の宅配紙新聞社「発行部数」を報じることはほとんど無くなりました。自社の新聞に限らず、他社発行分も含めて発行部数(及びその増減)を記事にして報道することが皆無になっています。
 同様に宅配紙新聞企業の傘下にある、
テレビ民放業界も(NHKも)ほぼ時期を同じくして“視聴率”を発表することがなくなりました。彼らは業界ぐるみで自由競争の封殺、既得権益の死守を図っているものと思われます。

令和3年5月27日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ