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「少子化対策」をめぐる各党の選挙公約を論じる読売新聞の記事は、確信的な悪意に基づき、読者に対して「人口危機」を隠蔽する為のものである。

 10月26日の読売新聞は、「[衆院選2021・政策分析]少子化対策…子育ての不安 拭えるか」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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[衆院選2021・政策分析]少子化対策…子育ての不安 拭えるか
2021/10/26 05:00 読売



 「離乳食は何を食べさせているの?」。10月上旬、東京都世田谷区の住宅街。
育児支援施設「おでかけひろば まーぶる」では、0〜1歳の子どもを連れた母親4人とスタッフが子育ての悩みを話し合っていた。

 NPO法人「せたがや子育てネット」(松田妙子代表)が区から補助を受けて運営するこの施設では、利用者に合った地域の
子育て支援情報を紹介するほか、保育士資格を持つスタッフが子どもの遊び相手をしたり、妊娠から子育てまで幅広い相談に応じたりする。利用は無料だ。

 1歳の長女とともに利用する若井 野恵留のえる さん(32)は出産後、
育児の悩みで気分が落ち込んだ時期があった。「子どもの年齢を問わずに相談できる居場所があり、孤独じゃないと思える。今はもう一人子どもを産みたい」と話す。

 松田代表は「
妊娠から出産、育児まで切れ目ない支援を確立し、経済的、精神的不安なく子どもを産み育てられる環境整備が必要」と訴える。

 2020年の
出生数約84万人と過去最低を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大で結婚を延期したり、経済状況の悪化で子どもを持つことへの不安を抱えたりした人が増えた影響があるとみられている。

 社会保障制度を支える現役世代の先細りを招く
深刻な少子化に直面する中、各党は子育て世帯の負担軽減措置や、妊産婦期も含めた幅広い支援、新省庁の創設を訴えている。

 自民党は、支援の必要な
子育て世帯の孤立を防ぐため、公約に「妊娠・出産から子育てまで、全ての親子を対象に一体的に支援する拠点を全市区町村に創設する」と明記した。立憲民主党は子ども・子育て予算の倍増を打ち出し、妊娠前から出産・子育てまで一環したサポート体制の整備を主張する。「子ども省」の創設も打ち出した。

 公明党は0歳から高校3年生までの
全ての子どもに1人10万円相当の「未来応援給付」を届けるとし、「子ども家庭庁(仮称)」の設置も盛り込んだ。共産党は児童扶養手当や就学援助など子育て世帯への現金給付の拡充を訴える。

 国民民主党は親の
年収に関係なく、児童手当を18歳まで一律で月1万5000円にすることを掲げる。日本維新の会は、子どもの数が多いほど税負担の軽減が大きくなる「世帯単位課税」の採用を主張する。

 ただ、こうした
支援策によって少子化に歯止めをかけられるかどうかは未知数だ。内閣府が今年公表した少子化社会に関する国際意識調査では、日本は子どもを産み育てやすい国と「思わない」が61%にのぼっている。根強い子育てへの不安を解消するには、子どもに優しい社会の実現に向けた息の長い取り組みが求められる。
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 この記事(を書いた記者)は、一体何を言いたいのでしょうか。
「少子化対策子育ての不安 拭えるか」と言うタイトルから考えると、「少子化」を解決すべき課題と考えて、各党の子育て支援の公約が、その解決に役立つか否かを言いたいのだと思われますが、図の左側には、「少子化対策」「子育て支援」と並列的に表記されていて、両者の関係がよく分かりません。

 しかし、最後の部分で「こうした
支援策(選挙公約)によって少子化に歯止めをかけられるかどうかは未知数だ」と言っているので、「少子化対策」が目的で、「子育て支援」はその手段であると理解します。
 そうすると最初の見出しで、「不安が拭えるか」と言っておいて、「未知数だ」で終わっていると言う事は、各党の
子育て支援の公約は、少子化対策として有効か否かは未知数であると言う低い評価と考えられます。

 記事は最初の部分から、
「子育て支援」の必要性・有用性を論じて、当然のように「子育て支援」が「少子化対策」であるかのように書いていますが、少子化と子育て支援を結びつけて論じるのは、既に破綻した欺瞞の繰り返しです。現実に目をつぶる思考停止はいい加減にすべきです。少子化の主たる原因は未婚の増加です。1組の夫婦あたりの出生数のわずかな減少が原因ではありません。
(参照)2020/10/20 財務省財務総合政策研究所
人口動態と経済社会の変化に関する研究会 第一回報告
「日本で少子化対策はなぜ失敗したのか」
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou202010.pdf

 おまけに最後のところの、「
子供に優しい社会の実現に向けてた息の長い取り組みが求められる」に至っては、何を言いたいのか、もしかしたら「何かを言うべきだ」という認識はあるものの、言えない・言うことを禁じられている為、何も言うことなく「ごまかして終わりにする」と考えているとしか思えません。

 1989年の
出生率1.57ショックから始まった、32年に及ぶ「少子化対策」が何らの成果も上げる事なく経過し、人口減少が加速している現実の前で、「こうした支援策によって少子化に歯止めをかけられるかどうかは未知数だ。・・・息の長い取り組みが求められる」とは、その呑気さ加減は正気の沙汰とは思えません。
 これが
まともな新聞社(新聞記者)の記事と言えるでしょうか。

 各党の
公約もお粗末ですが、それを論じる読売新聞のお粗末さはその比ではありません。これは確信的悪意に基づく隠蔽です。日本が直面している危機に対して、読者にその危機の存在を隠蔽していると言うことです。
 なぜそんな事をするのでしょうか。詳しくは分かりませんが、今まで自分たちが支持してきた
「少子化対策」の誤りを認めたくないという点はあると思いますが、それだけでは説明しきれないものがあるはずです。

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