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マスコミ各社の選挙予測の「大外れ」、信頼できないのは選挙の出口調査だけではない、新聞・テレビのすべての世論調査・報道が信頼できない

11月1日の東洋経済オンラインは、「『自民苦戦?』テレビの出口調査が大外れだった訳 当日20時予想より自民は多く、立民は少なかった」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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「自民苦戦?」テレビの出口調査が大外れだった訳 当日20時予想より自民は多く、立民は少なかった
村上 和彦 : TVプロデューサー、京都芸術大学客員教授
2021/11/01 16:50 https://toyokeizai.net/articles/-/466145

 10月31日に行われた衆議院総選挙で、自民党は
261議席と改選前の276議席から減らしたものの単独で絶対安定多数を確保した。
 一方で共産党との「共闘体制」だった
立憲民主党は改選前の110議席から96議席に後退した。

(中略)

 そして今回、テレビ各局が画面に大きく発表≠オた自民党と立憲民主党の予想議席数は、以下の通りである(字数の都合で、ここでは2政党のみとさせていただく)。

日テレ(NNN) 自民 238     立民 114  
テレ朝(ANN) 自民 243     立民 113
TBS(JNN)   自民 239     立民 115
テレ東(TXN) 自民 240     立民 110
フジ(FNN)  自民 230     立民 130
NHK     自民 212〜253  立民 99〜141
 結果    自民 261     立民  96

 すべての局が
自民党を「少なく予想」して、立憲民主党を「多く予想」していた。
 民放で自民党を最も多く予想したテレ朝でも「243」と、結果に対して「18議席」少なく見積もっていたのだ。また数値を特定せずに「幅を持たせた議席数」を出すNHKも、自民党の予想上限は「253」だった。「取りこぼしをしないのが最重要課題」であるNHKの幅をもたせた予想≠謔閧燻タ際は「8議席」多かった。

 一方で立憲民主党の予想議席は各局とも110議席以上である。結果より「14議席以上」多く予想していた。
 「幅」のあるNHKでさえ下限の予想は「99」なので、立民はNHKの「まあ最低でもこのくらいは獲るだろう」という最低の数字にも「届かなかった」。
 つまり今回の選挙特番で、
テレビ各局「議席予想」大ハズレだったのだ。
 「予想合戦」は、残念ながら『全局が敗退』と言っていいだろう。

 ではなぜ、テレビは議席予想を「ハズして」しまったのか。

出口調査はどこまで正確なのか
 その背景には
「出口調査」がある。
 選挙結果を予測するために、テレビ・新聞などは投票所で「出口調査」を行う。
 文字通り、投票を終えた
有権者に、投票所の出口付近で声をかけて「投票先の調査」に協力をしてもらうというものである。

 さまざまなやり方があるが、模擬投票用紙に「投票した候補者名・政党名」を書いてもらい、回収ボックスに入れてもらう形が一般的である。現在はタブレットを使用するケースも多い。
 この出口調査で回収したデータを元に、各局は集計・分析を行って「議席数の予想」をするのだ。
 その「予想議席」よりも、実際は自民党が多く、立民が少なかったのである。
 この背景には「
出口調査に協力する人の特性」があるのだ。

 出口調査は、あくまで「協力してもらう」ものである。有権者の「投票」は国民の権利であり、責務でもあるのだが、メディアの
出口調査に応じる「義務」などは、もちろんないのだ。
 私自身は出口調査をしたことはないが、出口調査をするスタッフの「密着取材」をしたことはある。

 投票所から出てきた人にスタッフが「
○○テレビですが、投票先の調査にご協力お願いします!」と声を掛けるのだが、「はい、いいですよ」応じてくれる人もいれば、「あ、ゴメン」断る人もいる。
 もちろん協力していただければありがたいし、協力してくれない人にも文句を言える立場ではない。さらに
メディアに対して好意的な人ばかりではない。
 現在では、特に都市部では
テレビ・新聞の調査などに協力したくない・関わりたくない、という有権者も増えているだろう。

(中略)

 しかし20年以上にわたって実施されてきた出口調査と、それに基づく議席予想は、もはや「限界」なのではないか。

 テレビ・新聞の政治報道に対する
信頼度は、年を追う毎に低下しているのが実情である。

 今回の「議席予想 
全局全敗」は、政治報道への信頼度という点で、大きなマイナスポイントになるだろう。

 来年7月までに行われる「参議院選挙」までに、各局は議席予想の体制を再整備できるだろうか。あるいは「出口調査のあり方」を再構築するのだろうか。

 そして議席予想に必要なことは「メディアとフレンドリーな声」を過大評価せず、一方で
「静かな有権者」を過小評価しないことだろう。

 このことは選挙特番のみならず、日常の
「政治報道」にも求められているのだ。
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 今回予想が外れたのは
テレビ放送だけではなく、出口調査だけでもありません。宅配紙新聞の読売新聞は、10月29日の紙面で、投票日の3~5日前に当たる10月26日〜28日に実施した世論調査に基づく、選挙結果の予測記事を下記の通り報じていますが、自民党は「過半数の233議席の維持が微妙」、「立民増」としています。テレビ各局とほぼ同じです。



 問題は「出口調査」の信頼性だけの問題では無く、
新聞・テレビの世論調査、取材・報道すべての信頼性の問題と言うべきです。
 今回の選挙に関する世論調査は、いずれ
選挙結果(正解)が明らかになるので、今回のような「大外れ」も「外れ」もすぐバレますが、選挙以外の例えば「専守防衛の是非」や「敵地攻撃能力保持の是非」等についての世論調査は、結果(正解)の発表に当たるものがないので、国民の意識・意見との大きな隔たり(大外れ)があってもバレません。

 その他の問題として、
NHKのニュース報道では、何かというと頻繁に「街頭インタビュー」がおこなわれ、通行人達の言葉が報じられますが、NHKの記者達が、どういう基準で取材対象の人を選び、何人にインタビューを実施し、何人がそれに応じて、何人が断ったか(無回答であったか)は、何も報じていません。

 世の中にはNHK(NHKの報道)に対して、好意的な
(インタビューに応じる)人もいれば、嫌悪する(インタビューを拒否する)人もいると思います。それを考慮して対応しなければ、インタビューの結果はNHKの報道に対して、好意的な人の意見に偏ります。

 更に得られた
回答を全部報じているのか選別しているのか、それとも無作為抽出なのか、選別しているとすればどういう基準で選別しているのか、何の説明もありません。記者、編集者による(故意・過失のいずれにしろ)「世論操作・誘導」の可能性が否定出来ません。

令和3年11月2日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ