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ネット上の“閲覧おすすめ機能”の対象は“デマ”だけで無く、“正論”も対象となるはず −言論・思想信条の自由の制約を主張する読売新聞と鳥海不二夫、山本龍彦両教授
1月7日の読売新聞は、「ネットのおすすめ機能で『情報の偏食』、デマ氾濫の要因…[虚実のはざま]」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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ネットのおすすめ機能で「情報の偏食」、デマ氾濫の要因…[虚実のはざま]
20220107 0500 読売
ネットの「おすすめ」機能によって、知らず知らずのうちに好みの情報や似た意見ばかりに囲まれる。そんな「情報の偏食」が、デマの氾濫や社会の分断の要因になっているとして、研究者が6日、対策の提言を公表した。
「デジタル・ダイエット宣言」と題した提言をまとめたのは、SNSのビッグデータ分析が専門の東京大の鳥海不二夫教授(計算社会科学)と、AI(人工知能)が個人の権利を侵害するリスクを研究する慶応大の山本龍彦教授(憲法学)。
鳥海教授らは、人が摂取する情報を食べ物に例え、「インフォメーション・ヘルス(情報的健康)」の考え方を提唱。偏った食事が体に良くないように、利用者が情報のバランスを意識する重要性を強調した。
その上で▽ネットで目にする情報の性質を、カロリーや栄養成分のように可視化できる指標▽利用者自身が偏りをチェックできる「情報ドック」の機会▽偏りを解消できるデジタル・ダイエットの仕組み――が必要だと指摘した。
「プラットフォーマー(PF)」と呼ばれるSNS事業者が取るべき対応などについて、様々な分野の専門家と検討を進める。
問題の背景には、PFが個人の閲覧履歴などからAIで好みの情報を推測し、おすすめ表示する「アルゴリズム」の機能がある。同じ価値観の人ばかりがつながり、根拠のない言説でも増幅されていく「エコーチェンバー」と呼ばれる現象の要因ともされる。
提言では、利用者がアルゴリズムを変更する自由の確保も必要だとした。
山本教授は「バランスのとれた情報摂取は、偽情報への『免疫』の獲得にもつながる。社会全体で『情報的健康』の意識を高めていく必要がある」と話す。
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記事は「ネットの世界」を“情報の偏食”世界であるとし、「ネットの世界」が「デマの氾濫や社会の分断の要因」となっていると批判しています。しかし、批判の対象が“偏り”なのか“デマ”なのか、或いはその双方なのかが曖昧です。
確かにネットの世界は自由で“玉石混淆”の世界で、デマが混じっていることは否定出来ないと思いますが、「言論の自由」の世界では避けられない側面であり、それを口実にして言論に制約を課そうとすれば、大きな“不自由”を招きます。
人には「食事」に関しては好きなものを食べる自由があります。その結果“偏食”となり、最悪の場合身体に悪影響が出る可能性がありますが、「偏食」の有無については、医師らによって医学的な判断が可能です。「デマ」に当たる食中毒は別問題です。
これに対して「情報」に関しては、「言論・思想信条の自由」の根幹に関わる問題であり、「情報の偏食」には医学のような客観的な基準はなく、誰にも(当然新聞社にも)判断は下せません。
SNS事業者や新聞社、学者等が「偏食」の基準を作り、その判断を下そうとすれば、それは「検閲」(言論の自由の否定)に繋がります。
情報の可否の判断は「自由で公正な市場」で多数の国民(消費者)の判断に委ねるしかないのです。
SNS事業者がする「おすすめ表示(アルゴリズム)」の機能を「デマが増幅」されると批判していますが、「好み」に基づいて「おすすめ」を選定する行為は、利用者にとって歓迎すべき行為であり、反対に「バランスのとれた情報摂取」の名の下に、「社会全体」から「健康食」を強要される方が権利の侵害に繋がる危険があります。
情報の受信に於いて、何が「健康」かは人によって大きく異なり、頼まれもしないのに「社会全体」が「健康食」を強要する方が、「言論・思想信条の自由」を侵害する恐れが大です。それは中国政府がしていることに酷似しています。
それに同じ価値観の人が集まるのは、結社の自由の下ではごく普通・当然のことです。
また、当然ですが「おすすめ表示」により“増幅”されるのは、デマばかりではない筈です。“正論”も閲覧者が多ければ確実に増幅されるはずです。そう考えれば「増幅」機能は必ずしも悪とは言えないと思います。
この人達が、その点に触れる事無く「おすすめ表示機能」を批判するのは、単に自分たちの主張を閲覧する人が少なく、結果的に「おすすめ表示」の対象にならず、「増幅」しないからではないのでしょうか。
自分たちの少数意見が、国民の多数意見に埋もれているネットの世界の現状に対して、不満を募らせているだけではないのでしょうか。
先の自民党総裁選挙で、高市候補がネット上で予想外の高い支持を得、また自民党が新聞各紙の予想以上の多数の議席を得て、立憲民主党は予想外の不振となりましたが、今や新聞は情報を独占する存在ではなくなったことを受け入れるべきです。
令和4年1月8日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ