A253
公務員の劣化を直視すべき −マスコミは、民主政治の障害物−
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 2月16日の読売新聞の社説は「国家公務員離れ 政治の劣化が招く『官』の負担」という見出しで、次の様に論じていました。
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国家公務員離れ 政治の劣化が招く「官」の負担
2023/02/16 05:00 読売社説

 国の針路に携わる
官僚誇りを失えば、政策立案能力低下しよう。与野党は質問通告や「官」との接触のあり方を改める必要がある。

 
内閣人事局は、昨秋の臨時国会で中央省庁が答弁の作成にかけた時間を調査した。答弁は全864件で、作成に着手した平均時刻は、委員会前日の午後8時前、答弁を作り終えた平均時刻は当日の午前3時近くだった。

 与野党は、委員会の
質問通告の期限「前々日の正午」と申し合わせている。それが守られていたのは、19%にすぎなかった。

 質問通告が
遅れれば、官僚は深夜残業を余儀なくされ、疲弊しよう。政府は繰り返し、質問通告時間を守るよう各党に呼びかけているが、いまだに改善されていないのは不見識というほかない。

 調査によると、
答弁作成に要した時間は平均約7時間だった。

 官僚が答弁に労力を割くのは、国会が本来の
政策論争の場になっていないことが背景にある。

 野党は、首相や閣僚の
スキャンダルの追及や、発言の揚げ足取りに終始しがちだ。答弁を準備する官僚は、枝葉の部分にまで気を配らねばならず、負担は大きい。

 国会を
政策の狙いや意義を問う議論の場に改めていくことが不可欠だ。そうした取り組みが、官僚働き方改革につながろう。

 2022年度の
国家公務員の総合職採用試験の申込者数は約1万8000人で、10年前より3割減少した。入省10年未満の早期退職者も増加傾向にある。

 政治主導をはき違え、野党が
「ヒアリング」と称した会合で、官僚を高圧的な態度で問い詰めるケースも少なくない。「官僚いじめ」のような場面が報道された結果、国家公務員の仕事に魅力を感じなくなった人も多いはずだ。

 理不尽な手法を改めなければ、若者の
「国家公務員離れ」に歯止めはかかるまい。

 官僚の
意欲を高めるには、処遇の改善も課題となる。

 大卒の総合職の初任給は
18万9700円で、大企業に比べれば見劣りする。国家公務員が海外に出張する際の宿泊費は、1984年の規定が今も適用されており、自腹で差額を 補填ほてん せざるを得ない状態だという。改善は急務だ。

 行政改革の結果、国家公務員数は現在、30万人まで減少し、今も定員削減計画の最中にある。一人にかかる負担は増していよう。

 日本の国家公務員数は
人口比では欧米各国より少ない。官僚の採用も検討すべきではないか。
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 記事は
「官」“誇り”を失うことを憂慮していますが、「官」の“誇り”とは、“驕り”表裏一体であり、彼らの“誇り”を尊重することはすなわち“驕り”を容認する事に繋がります。それは決してあってはならない事です。“誇り”のもたらす僅かな利益よりも、“驕り”の弊害の方が遙かに大きいのです。

 記事は「政治の劣化」と言っていますが、そもそも政治は
なぜ劣化したのでしょうか、
 その例として、野党による「
スキャンダルの追及や、発言の揚げ足取り、ヒアリングにおける官僚いじめ」のような場面を挙げていますが、それらが増えたのは、新聞・テレビなどのマスコミが、そのような場面を“野党の追及・攻勢”として、大きく肯定的に報じているからです。多くの読者・視聴者はそのような報道にはウンザリしています。

 質問者が質問内容の
通知期限のルールを守らないのが問題の原因ならば、なぜその事実を政党ごとに報じ無いのでしょうか。政府がルール違反を理由に答弁を拒否したら読売新聞は何と言うでしょうか。

 他方で
選挙の時にマスコミは国民(有権者)が必要とする候補者の情報をもれなく伝えているでしょうか。何か隠したりすることはないでしょうか。もし伝えていたら、“ガーシー議員”が当選することはなかったでしょう。
 今の
選挙運動期間は短く、始まったと思ったらもう終盤戦で、報じられるのは各党の獲得議席の予想がほとんどで、候補者間の討論は深化しておらず、その詳細が報じられる事がありません。
 結局有権者は候補者について、詳しい
情報が無い中での投票を余儀なくされています。従って選挙結果が国民の意思を反映する可能性は低いと言わざるを得ません。

 こんな選挙は何回しても日本の政治は良くなりません。なぜ日本のマスコミはそうなのでしょうか。それは彼らは選挙により
民主制度が機能して政治に民意が反映することをを望んでいないからです。なぜなら民意が反映すると、自分たちの意見が反映しなくなるからです。政治の劣化の大きな原因はそうしたマスコミの存在です。

 今の日本のマスコミは国民に
必要な情報を隠して報じず、国民の多数意見が政界に届けられるのを阻止するという、国民と政界の両者の間に立ちはだかる「民主政治の障害物」と言うべき存在になっています。

 記事の“政治の劣化”という認識に異存はありませんが、その「政治」には
「政党と議員」だけではなく、「官僚」「マスコミ」もふくまれると考えるべきです。この三者は“記者クラブ”などを舞台として、出演者として渾然一体となって読者には見えない“政界”を構成してます。読売新聞も“劣化”の当事者から逃れることは出来ません。

 また、この“答弁書作成問題”と若者の
“国家公務員離れ”を結びつけて論じていますが、何ら根拠を示していません。10年前と比べれば少子化の影響もあるはずです。最近でも女性公務員増加している様です。国家公務員数も欧米との比較だけで、無条件に欧米の後追いで増員を主張するのは軽率の極みです。待遇に関しても官僚の場合は制度上、採用直後は低額であるものの、それはごく短期間で遜色ない金額に上昇すると聞いたことが有ります。
 読売新聞は
官僚の事を心配するより先に、自身の劣化を心配すべきです。

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