A254
放送行政(業界)の闇 −何も明らかにされない放送免許の基準・条件・有効期限等と、大手新聞業者の独占の弊害−

 3月6日の読売新聞は、「放送法解釈文書巡り首相『報道の自由への介入に当たらない』…高市氏は『自身の発言は事実ではない』」と言う見出しで、次の様に報じていました。
------------------------------------------------------------------------------------
放送法解釈文書巡り首相「報道の自由への介入に当たらない」…高市氏は「自身の発言は事実ではない」
2023/03/06 12:50 読売

A254-2

参院予算委員会で答弁する岸田首相(右)(6日午前、国会で)=源幸正倫撮影

 岸田首相は6日午前の参院予算委員会で、
放送法が定める放送局政治的公平性を巡る文書に関し、「報道の自由への介入との指摘は当たらない」と述べた。松本総務相は「文書の内容を精査中だ」と述べ、調査を急ぐ考えを示した。

 文書は、安倍内閣の礒崎陽輔首相補佐官(当時)が
政治的公平性に関する放送法解釈を変更するよう総務省に迫ったとする内容で、立憲民主党議員が公表した。首相は「結果として従来の解釈は変わっておらず、(総務省は)補充的説明をしたものと承知している」と強調した。

A254-3

参院予算委員会で答弁する岸田首相(左)(6日午前、国会で)=源幸正倫撮影

 当時総務相だった
高市経済安全保障相は「 捏造ねつぞう だ」として、捏造でない場合は議員辞職する考えを示している。高市氏はこの日も、「自身の発言部分などは事実ではない」と述べ、重ねて文書の信頼性に疑問を呈した。
------------------------------------------------------------------------------------

 
公平とは幅広く、漠然とした言葉であり、何が公平であるか(ないか)は明確とは言えず、“公平”の一言で「公平」を実現することは困難です。

 「放送」に於いて「公平」を実現するためには、
放送業界が(特定の業界関係者だけでなく)誰もが自由にものを言える環境であることが必要不可欠です。
 公平とは限られた
業界関係者だけの問題では無く、広く全国民を見据えた“公平”で無ければなりません。
 その為には記事のような
言葉尻を捉えての応酬は建設的な議論とは言えず、他意あるものか時間の無駄でしか有りません。

 そのような視点で
放送業界を論じるには、この業界で何が一番問題なのか、何が欠けていて何が必要かを考える必要があります。

 一番問題なのは、
放送業の“免許制度”です。放送は周波数の制約から、ごく少数の限られた者にしか免許が交付されないという致命的な制約があります。この一点はインターネットの世界とは決定的な違いです。

 その中で免許の交付はその
基準条件期間更新手続きなどが明確に示され、全ての国民に平等な権利の行使が保証されなければなりません。その為には限りある電波を有効に使うべく、例えば曜日別(或いは時間帯別)に分割して免許を交付するなど様々な改善策を検討すべきです。

 しかるに現状は
少数の業者だけに、無期限・無条件の免許が交付され、他の希望者の有無やその中でなぜ当該業者に免許が交付されたか、選定の理由選考の経緯も明らかにされる事がありません。

 しかもそのほとんど全てが
大手宅配紙新聞業者であり、彼らは地上波だけでなく、衛星放送重複して免許を取得しており、独占(競争排除)を意図しているとしか考えられない免許行政の実情です。しかも、衛星放送は地上波の再放送通信販売の広告・販売活動・韓国ドラマなどに占められており、本来の放送番組はほとんど見られず、視聴率極端に低いものと見られますが、視聴率が公表されることは全くありません。まるで大手新聞社系の潜在的競争相手を排除することだけを意図した免許行政で、あり得ない・あってはならない行政です。

 その結果生じた限られたごく
少数の放送業者にのみ“無制限・無条件の自由”が保証され、他の一般国民にはそれに対応する権利がゼロであると言う事態は、健全な言論の自由が保障された社会とは無縁の世界で、あり得ない事態です。

 背後には
役所と業界の強い癒着が窺われます。このような世界に於いては、業者・業界の自由は国民の不自由の裏返しである事が憂慮されます。

 
放送業者はいかなる意味に於いても、視聴者の代表でも、国民の代表でもありません。両者は利害が反すると言っても良い関係です。
 更に近年では
“視聴率”が公表されることがなくなり、漠然とした視聴者・国民の支持の動向を把握することすら不可能になっています。まさに“放送行政(業界)の闇”という事態です。

 今必要なのは高市氏ら対する
揚げ足取りの議論ではなく、公平・公正な放送免許制度の実現に向けた議論です。

令和5年4月2日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ