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NHKニュースの“あれから○○年”は、ニュースの価値がない安易な時間つぶし −その陰で重要なニュースが飛ばされていく−

7月26日のNHKテレビニュースは、「相模原 障害者施設19人殺害事件から
7年 再建の施設で追悼式」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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相模原 障害者施設19人殺害事件から7年 再建の施設で追悼式
2023年7月26日 14時22分  NHK 1分34秒

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相模原市の
知的障害者施設19人が殺害されてから7年となった26日、施設で追悼式が行われました。

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 2016年7月26日、相模原市にある県立の
知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者19人が殺害された事件から7年となった26日、現場に再建された施設で追悼式が行われ、遺族などおよそ90人が参列しました。

 まず
黒岩知事が「犯人が口にした『意思疎通が図れない人間生きている意味がない』という考え方が、いかに自分勝手で、でたらめで、間違ったものであるか。私たちは二度とこのような悲しい事件を、起こさないようにしなければなりません」と式辞を述べました。

 続いて
黙とうが行われ、参列した人たちは静かに19人を悼んでいました。

 このあと、事件の前から園で暮らしていた
奥津ゆかりさん(54)が、入所者を代表して「私は会長として、園のみんなが困ったときや悩んでいるとき、相談して不安な気持ちを解決したいと思っています。19人の皆さんこれからも天国で私たちのことを見守ってください」と追悼のことばを述べました。

 園の正面玄関の前には鎮魂のモニュメントと
献花台が設置され、犠牲者のうち遺族が希望した10人の名前が刻まれています。参列者は花を手向けて手を合わせていました。

園では午後5時まで、一般からの献花を受け付けます。

献花に訪れた人は
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東京から献花に訪れたという40代の男性
「弔いの気持ちをもって手を合わせました。あのような事件を
絶対に再び起こしてはならないと改めて感じました」と話していました。また、「SNSの投稿や街なかの場面をみると、弱い人たちへの視線や思いやりを欠いていると思うことも少なくありません。優生思想に染まってはいけないと考えています」と話していました。

相模原市内に住む50代の女性
障害のある友人がいて、事件はひとごとではありません。7年たっても忘れられないし、絶対に繰り返してはいけないことです」と話していました。

兵庫県明石市の公立小学校で特別支援学級の担任をしている40代の男性
風化させたくないと思い、毎年献花に来ている。まだ7年しか経っていないが、事件を知らない子どもたち事件を思い出す大人が少なくなったと感じています。子どもたちには命の重さに軽いも重いもないということを伝えていきたいです」と話していました。

神奈川県大和市から献花に訪れたという60代の男性
「私にも
脳性まひのある娘がいます。きょうはひとくくりに『19人』とまとめられない一人一人に、名前を確認できる人は一人一人確認しながら、ひまわりを供えました」と話していました。また、「障害のある人が被害者となる事件が起きるたびに、いつまでこうしたことが続くのかという気持ちになります」と話していました。

「津久井やまゆり園」で6年間働いていた元職員の原田隆彦さん
まだ7年かなという思いです。当事者の目線にたって目の前の人を幸せにしたり、困っている人を助けたりしたいと考える原点となった場所でした。この場所を忘れてはいけないという気持ちで手を合わせました」と話していました。

施設運営の理事長ら会見“事件を若い世代にきちんと伝えないと”
追悼式のあと、施設を運営する「かながわ共同会」の山下康理事長と「津久井やまゆり園」の永井清光園長、それに家族会の大月和真会長が
記者会見を開きました。

 山下理事長は「いろいろな場所で事件のことを講演していると、
若い世代から『そういえば聞いたことがある』とか『よくわからない』といった声も聞く。事件のことを若い世代にきちんと伝えていかないといけない。風化させないための取り組みを進めて参りたい」と述べました。

 永井園長は「事件から
7年たつが、つらく悲しい。こういった思いが癒えることはなく逆に深まっているように感じる。事件前の写真を見ていると、楽しかったころの記憶がよみがえってきて悔しくてしかたがない。ご遺族も同じ気持ちだと思う」と述べました。

 大月会長は「
7年たち、利用者もけっこう亡くなり家族も年をとった。利用者の意思決定の支援を進めると言われると、居住の場をどうするかなどやきもきする面もある。しかし、社会全体で見ると、障害者に対する理解というのが少しずつ広がってきていると感じる」と述べました。

黒岩知事と相模原市長会見「決して風化させてはならない」
 追悼式のあと、神奈川県の
黒岩知事と相模原市の本村市長が記者会見しました。黒岩知事は「事件から7年間、二度と起こしてはならないという強い思いで走り続けてきた。今までの障害者福祉は施設の安全のために管理する側の目線で行っていたのではないか。一人一人の目線に立った福祉ができていなかったのではないか。その延長線上に事件があったのかもしれない。正しい障害者福祉や当事者目線の福祉の実現に向け全力で頑張っていきたい」と述べました。

 また、本村市長は「事件から
7年たつが、決して風化させてはならない。誰1人取り残さない、ともに支え合う社会を目指して取り組みを進めていかないといけない。誰もが自分らしく地域社会で生きていけるようにしたい」と述べました。
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 このニュースを見て、
そう言えばそういう悲惨な事件があったなと思い出して見ていましたが、事件から7年経過したと言う事は当然のことで、何も新しい展開があったわけではありません。“7回忌”を迎えたというわけでもありませんし、想定外の展開があったわけでもありません。これ自体は事前に分っていることで、これを番組で知らせることは、“ニュース”に値する放送なのでしょうか。

 仮に過去の
悲惨な出来事を放送して視聴者に“思い起こさせる”と言う事が、意義のある事だとしてもニュース番組でする事ではありません。

 一方で
“取材(番組作成)”する者にとっては非常に楽な仕事です。事件・事故と違って、“突発的”な出来事ではなく、予定された行事であり、十分準備の期間・時間があり非常に楽な仕事です。役所の記者クラブに出入りしていれば誰にでも出来る取材です。

 報じられた中身を見ても、
多数の人似たような発言をダラダラと報じているだけで、1分34秒の長時間である必要は全くありません。

 最近NHKのニュース番組では、このような
“あれから○○年”という報道が増えています。10周年、20周年の区切りの年に、特別な行事が盛大に行われたというなら、まだニュースと言えなくもないと言う評価が可能だとしても、NHKはこの7年とか、9年、11年とか全然区切りでも何でも無い年に報道する事が大半です。毎年報道しているのでしょうか。このようなニュースは民放(NHKは以前“商放”と言っていました)ではほとんど見かけません。

 こう言う
ニュースとして意味の無い報道に時間を費やすのは、取材能力がなく、他に報道することがなく、時間つぶしで報じているのではないかという気がします。
 あるいは能力と体力が必要な本来の取材の
手抜きとして、安易な“あれから〇〇年”にのめり込んでいるのでしょうか。

 その陰で必要、
重要なニュースが報じられることなく、通り過ぎている(握りつぶされている)ことが一番心配です。

令和5年7月27日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ