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日本語の「還流」を英語の「キックバック」に翻訳して報じる、日本の公共放送局NHKのテレビニュース

 12月15日のNHKテレビニスは「『
キックバックは現金で』事情聴取に安倍派議員の複数秘書説明」と言うタイトルで,次の様に報じていました。
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キックバックは現金で」事情聴取に安倍派議員の複数秘書説明
2023年12月15日 18時39分  NHK

 自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、安倍派の所属議員の複数の秘書が東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し「派閥側からの
キックバックは現金で受け取り、政治資金収支報告書に記載しないよう指示された」などと説明していることが関係者への取材でわかりました。
東京地検特捜部は、
キックバックされた金額が多い議員を中心に任意の事情聴取を要請していて、派閥側や議員本人の認識など、不透明な資金の流れの実態解明を本格化させるものとみられます。

自民党の最大派閥、安倍派「清和政策研究会」の政治資金パーティーをめぐっては、松野・前官房長官ら派閥の幹部6人を含む大半の所属議員側が、パーティー収入の一部について
キックバックを受け、議員側の政治団体が政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあり、議員側にキックバックされた資金の総額は去年までの5年間で、およそ5億円に上るとみられています。

関係者によりますと東京地検特捜部はこれまで、
キックバックを受けていた安倍派の所属議員の秘書ら数十人から任意で事情を聴いていますが、複数の秘書が特捜部に対し「派閥側からのキックバックは現金で受け取り、政治資金収支報告書に記載しないよう指示された」などと説明していることがわかりました。

特捜部は、すでに
キックバックされた金額が多い議員を中心に任意の事情聴取を要請していて、派閥側や議員本人の認識など、不透明な資金の流れの実態解明を本格化させるものとみられます。

元秘書「議員の胸ポケットに」

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安倍派の所属議員の元秘書がNHKの取材に応じ、派閥のパーティー収入をめぐる
キックバックの実態を証言しました。

キックバックは当たり前”
元秘書は「政治の世界に秘書として入って1年目から、
キックバックというものがあると先輩秘書や派閥の事務局などから聞いていた。当たり前のように感じていたので、事務所の中でも悪いという認識はなかったと思う」と話しました。

派閥幹部から議員に現金手渡しか
その上で「年末が近づくと派閥の幹部から議員の事務所に連絡があり、本人が議員会館や派閥の事務所に出向いて幹部と面会していた。面会を終えた議員の胸ポケットには封筒が入っていて『先生、その胸ポケットのやつって、何かの資料ですか』と聞くと『これは派閥からの
キックバックだよ』と言っていた。封筒の中身を見たことはないが、現金以外には考えられない」と証言しました。

収支報告書に記載せず
さらに「
キックバックを受けた分は本来、政治資金収支報告書に記載すべきだと思うが、派閥から『記載しないでください』と明確な指示があったので、一切記載していなかった。派閥の事務局に『これは裏金なのではないか。記載しないとやばくないか』と聞いたところ『なので、逆に記載しないでください。記載してしまえば、裏金ではなくなってしまいます』と言われた」と明かしました。

資金の使途は
また、
キックバックされた資金の使いみちについては、「聞いてはいけないと思い、聞いたことはなかった」とした上で「議員が派閥の幹部と会った2、3週間後に寸志のような形で事務所のスタッフに配られていたので、派閥のキックバックの金がそうした用途に使われているのだと思っていた」と話しました。

(中略)

 その上で「パーティー券が送られてきた分だけ代金を支払わなければならず、企業にとっては負担だ。政治資金パーティーは資金を集めるための行事なので、
キックバックもあるのではないかとうすうす感じてはいたが、こうしたやり方は国民をばかにしていると感じる」と話していました。

自民党関係者「腹立たしいというか、おかしい」
20年ほど前から毎年のように派閥のパーティー券を買っているという福井県内の自民党関係者は「パーティー券を売った分だけ食事や飲み物を用意すると経費がかかり、集めた金がむだになる。パーティー券を買うだけ買って行かないほうが政治家にとってもいいだろうから、これまでほとんど出席してこなかったし、秘書も『本音でいえば来ないほうがありがたい』と言っていた」と話していました。

そのうえで「金を集められないと派閥でも党の中でも要職につけないことがわかっているから、少しずつでもみんなで応援したいという気持ちでパーティー券を買っていたのに、なぜもらった
キックバックを収支報告書に記載してきちんと政治活動に使わないのか。腹立たしいというか、おかしいと思う」と話していました。

販売側「購入額が20万円超えないよう言われた」
安倍派の所属議員の関係企業に勤めていた男性が、NHKの取材に応じました。

男性は、下請け企業などに派閥のパーティー券を販売していたとしたうえで、収入が所属議員側に
キックバックされる仕組みについて「私を含め、お金を払った人は全部派閥に行ってると思っているので、それがキックバックという形でかすめとられたとは思っていませんでした。皆さん余裕がない中で政治にいかされると思って1枚2万円を払っていたわけで、それが議員本人の懐に入っていたのが事実ならば、皆さんの気持ちを裏切っていると思います」と話しました。

さらに、別の社員がパーティー券の割りふりを決めていたとしたうえで「購入額が20万円を超えないように強く言われました。名前を出さないと届けをしないといけないからでしょう。地方から旅費や宿泊費を使ってまで行くだけの時間的な余裕も金銭的な余裕もないので、要はパーティー券を買って献金しているような感じでした」と話していました。

継続購入者「裏切られた気持ち」
安倍派のパーティー券を継続的に購入していた事業所に勤める男性は、NHKの取材に応じ、政治資金パーティーをめぐる問題について「ずっと応援してきたから、こういう形で報じられてとても残念です」と話しました。

そのうえで「お願いされていた枚数はいつも10枚で、2万円の券なので20万円になります。派閥のパーティーは、東京では他の議員と重なってしまうことがあって、議員の秘書から、『なかなか売りにくいので、地元でノルマをこなさなければいけないんだ』と聞いたことがあります」と語りました。

さらに「ノルマをこなすのは大変だから協力してほしいと言っていたが、こんなにたくさん
キックバックをもらっているんだとしたら裏切られた気持ちだ」と話していました。

(以下略)
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「キックバック」という言葉が頻繁に使われていますが、外来語として余り馴染みのない言葉です。しかるにNHKは何の“注釈”も無く多用しています。これでは正確でわかりやすい報道とは言えず、分かりにくい報道と言わざるを得ません。

 他方でこの問題に関して読賣新聞は、「パーティー収入裏金、安倍派が
還流議員の氏名や金額示す記録作成…特捜部が入手」という見出しで次の様に報じていました。
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パーティー収入裏金、安倍派が
還流議員の氏名や金額示す記録作成…特捜部が入手
2023/12/13 06:31  読売
裏金疑惑

 自民党の「清和政策研究会」(安倍派)による政治資金パーティー収入の裏金化疑惑で、同派が収入の一部を
キックバック(還流)した所属議員の氏名や金額を示す記録を作成していたことがわかった。東京地検特捜部は13日の臨時国会閉会後にも本格捜査に着手し、記録などを基に所属議員から一斉聴取する見通し。同派の会計責任者については、還流分を政治資金収支報告書に記載しなかったなどとする政治資金規正法違反(不記載、虚偽記入)容疑での立件を視野に入れている。

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 安倍派については、裏金化された疑いのある
還流分が直近5年間で計5億円規模に上ることが判明。派閥側の収入と支出を合わせた不記載額は総額で10億円を超える可能性がある。議員側も、還流を受けた分を収支報告書に記載していなかったという。

 特捜部は応援検事を含む50人規模の捜査態勢で、数十人規模の所属議員への事情聴取を検討。同法違反容疑で告発された同党5派閥のうち、安倍派については裏金化が組織的、継続的に行われ、不記載も多額に上る疑いがあるとみて集中的に捜査を進めるとみられる。

 関係者によると、安倍派では議員側にノルマを超えてパーティー券を販売した分を現金で
還流し、収支報告書に記載しないよう要請。派閥の会計担当職員は各議員の秘書らとの間で現金の受け渡しや要請を行っていた。さらに超過分を含めたパーティー収入の金額や、還流した議員の氏名、金額などを示す記録を作成。特捜部は任意捜査の過程で記録を入手したという。

 同派では事務総長経験者の松野博一官房長官(61)、高木毅国会対策委員長(67)ら幹部を含めて所属議員数十人が
還流分を裏金化し、このうち松野、高木両氏ら10人以上は1000万円超に上るとされている。

 一方、岸田首相が会長を務めていた「宏池会」(岸田派)が、実際のパーティー収入よりも少ない金額を収支報告書に記載していた疑いがあることも判明。安倍派などと同様にノルマ超過分を議員側に
還流していたが、派閥側の支出と議員側の収入には記載していたという。特捜部もこの事実を把握し、慎重に調べている。
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 誰が最初に
“キックバック”と言い出したのか、情報源の「官庁」なのか、他のマスコミなのかは分かりませんが、“キックバック”は読売が最初に「キックバック(還流)」と書いて、以下の文章には「キックバック」と書かずに、「還流」で統一したと言うことは、明確な「キックバック」表現の否定と考えて良いと思います。

 今回の事態は明らかに読売の
「還流」という言葉が当てはまり、それが妥当な現実(事実)だと思われます。
 しかるに日本語の
“還流”を使わず、わざわざ“英語?”“キックバック”を使用したNHKの行為は不可解であり、“日本語の英訳”とでも言うべき“倒錯”現象です。

 
日頃NHKの放送を見ていると、このような事例は決してまれではありません。12月19日のNHKテレビニュースは、「市販薬『オーバードーズ』乱用防止へ法改正を検討 武見厚労相」と言う見出しで、次の様に報じていました。
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市販薬
「オーバードーズ」乱用防止へ法改正を検討 武見厚労相
2023年12月19日 14時38分  NHK

 若者の間で深刻な問題となっている、市販薬の
過剰摂取・オーバードーズをめぐり、武見厚生労働大臣は、乱用を防ぐための法改正を検討するとともに、薬局などに対し、若者にかぜ薬などを売る際には、名前や年齢を確認するよう求めていく考えを示しました。

 かぜ薬やせき止めなどの市販薬を
過剰に摂取するオーバードーズによって若者が救急搬送されるケースが相次いでいることを受けて、厚生労働省の検討会は18日、20歳未満には複数の箱を販売するのを禁止するなど、乱用を防ぐための販売制度の案をまとめました。

 これについて武見厚生労働大臣は、閣議のあとの記者会見で「深刻な問題と受け止めている。検討会の報告には、複数販売の禁止など法改正が必要な内容が含まれているので、審議を行うことになる」と述べ、法改正を検討する方針を示しました。

 そのうえで「現状の法制でもできる規制は確実に進める」と述べ、薬局やドラッグストアに対し、かぜ薬などを高校生以下の若者に販売する際には、名前や年齢を確認するなどといった現行のルールを順守するよう求めていく考えを示しました。
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 記事の本文では
「過剰摂取」明記(並記)しているものを,なぜタイトルでは“オーバードーズ”とするのでしょうか。正式には「過剰摂取」と言うべきだか、世間では“オーバードーズ”が広く使われていると言う実態があるわけではありません。在日英語圏の外国人に知らせるべき特別な事情があるわけでもありません。

 一体何故NHKは
“オーバードーズ”を並記するのでしょうか。これはNHKが聞き慣れない外国語を使用することによって、何か新しい(革新的な)ことをしているかのごとく、視聴者を錯覚させる(欺く)ことが目的だと思います。

令和5年12月日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ