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裁判官の職権濫用と消費者金融の問題

 大阪地裁で、破産者が消費者金融業者によって給料を差し押さえられた事を不当と訴えた訴訟で、裁判所は原告である破産者の請求を棄却したものの、「今の破産法は大量の個人破産者が生じることを想定していない。破産と同時に免責されるような手続きを定める法律が早期に制定されることを望む」と述べ、裁判官が法律の制定につき異例の指摘をしました。
 判決では原告の主張が退けられており、この指摘は判決理由ではありません。判決の趣旨とは無関係な裁判官の個人的な意見です。裁判官が法廷で個人的な意見を言うことは公私混同、職権濫用であり、立法府に対する干渉になると思います。法廷は裁判官の私有物ではありません。

 今年の1月30日、最高裁は、京都の市民グループが、京都市教育委員会が小中学校に「君が代」の録音テープを配布し、卒業式などで演奏させたのは、特定思想の押し付けで違憲だとして、テープ購入代金の市への返還などを求めていた裁判で、原告の請求を棄却しましたが、その際もし、裁判官が法廷で「日の丸、君が代が国旗、国歌でとして法制化されることを望む」と言ったら、新聞は何と書くでしょうか。不当な政治的発言として大騒ぎをすると思います。

 個人破産者の問題は破産法の不備と言うよりも、消費者金融という名の高利貸しを放置していることが原因です。「高利貸し」を「消費者金融」などと呼んで「正業」扱いすることが既に間違いなのです。消費者金融が野放しにされている原因の一つは、彼らから多額の広告料収入を得ている新聞社が、消費者金融の反社会性を隠蔽していることにあります。

 5月17日発表された、今年の高額納税者リストを見ると、消費者金融(サラ金)経営者が多数上位に名を連ねています。新聞は公的資金の注入を受けた銀行役員の高所得水準を批判していましたが、それよりも批判すべきは消費者金融経営者です。
 裁判官の職権濫用や、消費者金融の反社会性に目をつぶっている新聞の責任は重いと思います。

平成11年5月23日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ