A271
戦時中・戦後のブラジルの日系人差別・迫害について何も報じず、その責任を被害者の日系人に転嫁する読賣新聞 -自国に厳しい“反日・シングル・スタンダード”-
7月30日の読賣新聞は、「日系ブラジル人 苦難と努力の歴史が報われた」と言うタイトルの社説で、次の様に論じていました。
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[社説]日系ブラジル人 苦難と努力の歴史が報われた
2024/07/30 05:00 読売
移民先のブラジルで不当な扱いを受けた日本人の名誉を回復する、歴史的な判断である。日本とブラジルの関係を更に深める契機としたい。
ブラジル政府の諮問機関である恩赦委員会が、第2次大戦中や戦後に行われた日本人移民らへの迫害について、初めて公式に謝罪した。
先の大戦でブラジルは連合国側につき、日本は敵国となった。
恩赦委は今回、サンパウロ州サントスの日系移民約6500人がスパイの疑いで住む場所を追われたことや、戦後も日本の敗戦を信じない日系人172人が「狂信的なテロリスト」として収監されたことを、人権侵害だと認めた。
アルメイダ委員長は「あなた方の祖先が受けた迫害や人種差別について謝罪する」と述べた。
戦後80年近くが経過し、実際に迫害に遭った当事者は少なくなった。それでも、ブラジル政府が過ちを認め、名誉回復を図ったことは、評価できる。
昨年1月、元軍人で右派のボルソナロ前大統領から、左派のルラ大統領に政権交代し、過去の人権侵害について積極的に検証するようになったことが大きい。
日本からブラジルへの移住は1908年に始まり、いまや約270万人と、世界最大の日系人コミュニティーを形成している。しかし、戦中戦後の苦難の歴史はほとんど知られてこなかった。
迫害された移民の多くが、再び排斥されることを懸念し、口を閉ざしてきたためだ。今回は、日系3世の男性らが、賠償の要求は見送り、迫害認定と謝罪の実現に絞って運動を行った。
日系人は差別を乗り越え、政財界や芸術、農業など幅広い分野で戦後ブラジル社会に貢献してきた。こうした地道な努力が、ブラジル政府による「負の遺産」の清算を後押しした側面もある。
ルラ政権は、日本との連携強化に意欲を示す一方で、経済面では中国との関係を重視する。中国はブラジルの最大の貿易相手国で、両国は新興国グループ「BRICS」に加わる。
日本との貿易総額は近年、縮小傾向にあったが、アマゾンの森林保護などの環境分野で、日本の技術や資金への期待はなお高い。
日本とブラジルは、国連安全保障理事会改革を目指す4か国(G4)のメンバーでもある。グローバル・サウスと呼ばれる新興・途上国の大国であるブラジルとの絆を生かし、国際社会の安定に寄与していきたい。
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先の大戦に際して、ブラジルで日系人に対してこのような大規模な公権力による迫害・差別行為が行われていたとは、正に“寝耳に水”で、大変驚きました。今までそんな事は全く聞いたことが無く、報道されたこともないと思います。
念のため読売の過去記事を調べたところ、「ブラジル」、「第2次世界大戦」、「日系人」、「迫害」をキーワードにして検索したところ、今回(2024年5月~7月)の一連のブラジルの「迫害認定」、「謝罪」関連の記事が6件あるほかは、2016年4月20日に下記のブラジルではなくペルーの1件があるだけでした。
A271-2
(中略)
A271-3
(以下略)
(念のため朝日新聞についても、過去の報道を調べましたが、今回(今年の5月~7月)の報道以前に、日系人に対す差別・迫害の事実を報じた記事はありませんでした)
記事では彼ら日系人が「口を閉ざしてきた」と言って、報じられてこなかったことについて、被害者に責任を転嫁していますが、読賣新聞はこのような問題で、当事者(被害者)からの訴えがない事件等は把握していないのでしょうか。それでは取材能力(意志)がゼロです。
記事では「回復」、「清算」、「乗り越え」、「報われた」と言う言葉が使われていますが、賠償を伴わない単なる「リップ・サービス」に対する評価としては、「過大評価」と言わざるを得ません。
仮に「回復」されたとしても、それは「名誉」だけで、被害・損害などの実害は回復されてはいません。また、「報われた」と言う表現も適切ではありません。「報われた」のは名誉回復の努力だけで、賠償により精神的・経済的な損害(苦痛)が“報われる”ことはありませんでした。
ここで類似のケースとして、読賣新聞が今まで韓国が日本に対して、既に解決済みの問題に対し重複請求を繰り返してきたことに対して、韓国・日本両国をどの様に評価してきたかを併せて、今回の日本・ブラジル両国を巡る同社の論説を比較すると、ブラジルと韓国には甘く、自国には厳しい「ダブル・スタンダード」と言わざるを得ません。
否、相手国を問わず、被害者・加害者の立場に関係なく単に“自国に厳しい”と言うだけの“反日・シングル・スタンダード”かも知れません。
国家・民族の問題なのですから、マスコミ各社には関係者・関係機関に対して本業の取材をして報じる義務がある事は言うまでもありません。
歴史的に見ても日本のマスコミが国家・民族の重大問題を長年無視し続け、報じなかったことは国民に対する背信行為と言うべきです。
読賣新聞他の日本のマスコミ業者は、“フェイクニュース”の一言で、ネットの情報を批判することが常ですが、彼らはすぐバレるような嘘は書かないと言うだけで、今回の様に大事な情報を報じないで隠すのは日常の事です。隠すのは嘘を吐くのと同じ(あるいはそれ以上)です。
反対にネットの情報には“フェイクニュース”が紛れ込んでいるのは否定出来ませんが、ネットの情報は、日本のマスコミが隠していることを報じていると言う重要な役割を果たしているという事を認めるべきです。
今までブラジルで起きていた悲惨な出来事を一言も報じてこなかった日本のマスコミの責任は免れません。被害者への責任転嫁は言語道断です。
日頃他者に対して厳しい批判を浴びせる日本のマスコミ関係者は、自己に対してそれ以上に厳しくあるべきです。
令和6年8月15日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ