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“も”を乱用する朝日新聞の欠陥文章

 「通信傍受法案」の衆議院通過を伝える、6月2日の朝日新聞朝刊を見ると、第一面で「・・・『国会審議が不十分で国民的合意もなされていない』という声があり、参院ではさらに具体的な議論を望む声強い」と報じています。それに続く第三面を見ると、「・・・だが自民党が連立相手にともくろむ公明党内には与党路線に突っ走る執行部への不満くすぶる。自由党内には自民党の公明重視への反発ある。表向きは『盤石』に見える自自公だが、自民党にとっては綱渡りの連続である」となっていて、“も”の使用が目立ちます。

 “も”という言葉はたとえば、「ここにリンゴがある。そして、みかんある」というように、まず主たる文があり、それに続いて従たる文が続くという使い方をされるものだと思います。ところが朝日新聞の文章には、「ここにリンゴがある」に当たる主文がありません。リンゴがあることには全く触れず、「ここにみかんあります」とだけ述べるという、欠陥文章になっています。

 これは一体なぜでしょう。朝日新聞は主文に当たる部分を隠蔽しているのだと思います。「通信傍受法案」に対する肯定的な事実を隠しているのだと思います。例えば最初の例で、「参院ではさらに具体的な議論を望む声強い」というのは嘘ではないにしても、「参院では法案の早期成立を望む声が多数である」という事実を隠していると思います。これは今回の記事に限りません。朝日新聞の記事を注意して読むと、非常に“も”が多いことに気づきます。「・・・疑問の声」とか、「・・・反発する声」という表現はしょっちゅう出てきます。そして、主文に当たる「多数の声」についての言及はいつもありません。

 “も”を入れないで、「ここにみかんがあります」にしてしまうと、リンゴの存在を否定した様になってしまい、それでは虚偽になってしまいますが、“も”を入れて「ここにみかんあります」にしておけば、「リンゴの存在を否定してはいない」という言い逃れができます。
 このような記事の書き方は、自分の気に入らない多数意見を隠し、自分の支持する少数意見があたかも多数意見であるかのように報じる、朝日新聞の情報操作だと思います。

平成11年6月3日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ