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繰り返される不毛の選択

 参議院選挙は誰も予想しなかった自民党の惨敗で終わりました。もう一つ今回の選挙で注目すべき事は、社民党(旧社会党)が淘汰されたことがはっきりしたことです。
 自民党の惨敗はこれが初めてではありません。9年前の参議院選挙でも、5年前の衆議院選挙でも自民党は惨敗しました。9年前ブームとなり躍進したのは社会党でした。そのときの委員長は土井たか子で「山が動いた」と言う名せりふをはきました。それから9年後の今日の事態をご本人も夢想だにしなかったことだと思います。5年前のブームは日本新党で代表は細川護煕でした。しかし今や党は消滅し、彼は議員を辞職して政治の表舞台からは消えてしまいました。

 社会党が凋落したのは自民党と手を組んだからと言う人がいますが、そうではないと思います。無責任な野党から脱して、政権の一翼をを担えば否応なく現実的にならざるを得ないのです。そして、現実的になれば自民党以上の能力は元々無いことを暴露せざるを得なくなるのです。輝いて見えるのは野党の時だけです。細川日本新党も全く同じです。

 自民党に対して怒り、自民党に愛想を尽かして反対政党に投票してみても、それは批判としての意味はあっても、自民党以上の選択にはならないのです。大阪府民がオール与党体制に怒って横山ノックを知事にしても、怒りの意志表示にはなっても大阪府政が改善されるわけではないのです。

 民主主義とは無縁の存在である共産党が自民党以上の政治をする、経済を立て直して、景気を回復できると本気で思って投票した人がどれだけいるでしょうか。共産党は「生きている化石」とも言うべき政党で世界の流れに完全に取り残されています。自民党があまりにひどいので共産党に投票した人が多いと思いますが、共産党が自民党よりも遙かに非民主的で経済、外交、防衛いずれの面でも政権担当能力がないと分かっていれば多くの人は共産党には投票することをためらったと思います。新聞を見れば批判の対象はいつも自民党だけで共産党(共産党に限らず野党全て)への批判は皆無と言う偏向報道が共産党躍進を支えたのだと思います。公明党についても全く同じ事が言えると思います。

 今回のヒーローは民主党の菅直人と鳩山兄弟です。しかし、この党も旧社会党のメンバーが多数混じっているほか、経験、実績のある人は少なく、第二の日本新党になる可能性は決して低くありません。今回の選挙結果を高く評価する人がいますが、楽観的に過ぎると思います。非自民党政権は自民党政権よりましだと言うことにはならないのです。そのことは、細川、村山両政権が証明しています。
 こうしてみると我々は残念ながら選挙の度に不毛の選択をしていると言えます。我が国ではなぜ有能な人が政治家にならないのか、有能な人が政治家になることを妨げているものは何かを真剣に考えなければいけないと思います。

平成10年7月17日     ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る     A目次へ