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選挙が有効に機能しない原因

 自民党の総裁選挙が終わり小渕総裁が再選されましたが、はたして選挙は有効に機能し、その役割を果たしたと言えるでしょうか。立候補した3人の主義、主張が十分党員に理解されたうえでの結果でしょうか。大変疑問であると思います。

 9月10日の産経新聞には、「総裁選3候補
データ」という記事(一覧表)がありましたが、そこに書いてあるデータとは、身長、体重、血液型、家族構成(家族の名前入り)、趣味、愛唱歌、好きな食べ物、私の一冊、座右の銘、となっていて、およそ総裁選びに必要なデータとは言えないものばかりです。総裁を選ぶに当たっては、各候補者が過去に何を言い、何をしてきたかということが重要だと思います。

 候補者のひとりである
加藤紘一氏はかつて、「共和ヤミ献金疑惑事件」で、1000万円のヤミ献金の受け取りの疑惑をもたれましたが、その事実を否定したため、献金した側の人から100万円の損害賠償を求める訴えを起こされたことがあります。彼は政治家としてヤミ献金受け取りを否定したにもかかわらず、その裁判には出廷せず(本人はもちろん代理人も)、つまり相手の主張に反論せず、欠席裁判で負けて賠償金100万円を支払いました。欠席したのは真相(ヤミ献金の受け取り)が明らかになることを恐れたためであると思います。そして、裁判に欠席して負けていながら、なお、受け取りの事実を否定していました。これでは彼は嘘つきと言われてもやむを得ないと思います。

 
嘘つきを総裁(総理大臣)にしていいかどうかという問題は、選挙の最大の争点になっていいはずです。ところがどの新聞を見てもこれを問題として取り上げているものはありませんでした。彼の裁判欠席戦術は成功を収めたことになります。選挙がこんな状態であれば政治家は今後も嘘をつくことをためらわないでしょう。数年経てばほとぼりが冷めて、それを咎めるものは誰もいないのですから。

 
過去の言動が徹底的に暴露され、追及されるアメリカの選挙とは天と地ほどの違いがあります。それは日本とアメリカのマスコミの質の違いだと思います。このようなマスコミのもとでは、有権者は本来の選挙権を十分に行使することができません。情報不足のもとでの選挙では、有権者が最良の選択をすることは困難だと思います。選挙で買収供応、義理人情、利益誘導が幅を利かせるのは、有権者に必要な情報が提供されていないからだと思います。そしてその責任はマスコミにあると思います。

平成11年9月25日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ