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「素粒子」の話のすり替え

 奈良県の母親による薬殺未遂事件が報じられた、7月17日の朝日新聞の「素粒子」に次のように書かれていました。今どき、「素粒子」を読む人なんてあまりいないと思いますが、典型的な朝日新聞の「話のすり替え」だと思ったのでご紹介します。短いので全文を引用します。

 例えば〈家族はあまりにしばしば悪意の共同体だ〉(J・スウィフト)と、あるいは〈家族!すべての社会悪の温床〉(A・ストリンドベリ)言われてきはした。だが。

 今、夫婦、親子、どちらの誰から、命を脅かす何が飛んでくるかわからないとは、どこで、何かの一線を越えてしまったのか。

 教育問題にすべてを押し付けたり、「昔はよかった」と懐古、復古を唱えてすむことではなさそうだ。

 前半は何を言っているのかよくわかりません。問題は最後のところです。教育問題にすべてを押し付けようとしている人は、あまりいないと思いますが、今の教育に問題があると考えている人は多いと思います。

 教育に問題ありと考える人が増えているのに、こう言う言い方をして、いつまでもこの問題にフタをしておこうというのが、「素粒子」の意図するところだと思います。

 「昔は良かった」と、懐古、復古を唱えてすむと考えている人もほとんどいないと思いますが、今の日本には、昔の日本にあった良いものが失われてしまった、と考えている人は少なくないと思います。

 これに対して常日頃、「昔の日本は悪かった」と言い続けているのが朝日新聞です。「懐古」、「復古」、という非難は、「戦前」は悪、「戦後」は善と言う単純な虚構を何としても死守したいという気持ちの表れだと思います。

平成12年7月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ