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「神の国」は本当に選挙の争点だったのか

 アメリカの大統領選挙で共和党の候補者に指名されたブッシュ知事は、選挙公約として公立学校の再建を国防問題と並ぶ最重要課題として掲げました。その他、今回の共和党大会では表面に出なかったものの、妊娠中絶の是非をめぐる問題は、いつも選挙の重要な争点になっています。

 わが国の選挙を振り返ってみると、一体何が「争点」になっていたでしょうか。先の衆議院選挙では、
「神の国」と「三党連立の是非」が争点だと言われてきました。解散、総選挙にあたって、6月3日の朝日新聞は次のように報じていました。

 衆院解散、争点は「首相の資質」「連立」「財政」

 衆院は2日、解散され、25日投票の総選挙へ向けて事実上の選挙戦がスタートした。「日本は天皇を中心とする
神の国」と発言した森喜朗首相の姿勢や、前回の総選挙のあと繰り返された政党の離合集散、今の自民、公明、保守による政権の「枠組み」が有権者の審判を受け、新しい政治地図をつくる3年8カ月ぶりの機会となる。首相の資質そのものが問われる異例の選挙でもある。・・・
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「神の国」
 野党側は一斉に、首相の「神の国」発言を
選挙戦の前面に出した。首相として森氏がふさわしいかどうか、民意の洗礼を受けるという判断からだ。

 民主党の鳩山由紀夫代表は2日の党常任幹事会で「『森隠し』解散とか『森のお粗末』解散とか言われ、品性の問題がある」。共産党の不破哲三委員長も「天皇中心とか、神国日本と平気で口にする首相を担ぐ自公保政権に政治をやる資格はない」と断じた。

 アメリカの公立学校の現状が、どのような状況なのか詳しいことはわかりませんが、ブッシュ候補が公約の第一に挙げ、「貧困地区にある学校の4年生の10人に7人は子供向けの本も読めない。
教育現場に暴力も蔓延している」、と語っているのはかなり深刻な状況なのだと思います。

 それでは日本の公立学校の現状はどうなのでしょうか。8月4日に文部省が発表した学校基本調査によると、小中学校の
「不登校」の生徒は、13万人で過去最多となったそうです。その他にも学級崩壊教師の資質の低下いじめの問題など、何とかしなければならない問題が山積みだと思います。最近の少年事件の陰には必ずと言っていいほど、学校での「いじめ」が見え隠れしています。日本の選挙ではなぜそれらの教育問題が、争点にはならないのでしょうか。

 
「神の国」問題を最大の争点にした選挙の結果、投票日前の世論調査では、優勢と見られていた自民党が敗北しましたが、選挙が終わると、誰も「神の国」については論じなくなりました。「神の国」は選挙期間中だけの争点だったようです。この問題は単に自民党に対する攻撃材料に使われただけで、本当に議論されるべき争点は覆い隠されたまま、選挙は終わってしまったのではないでしょうか。

平成12年8月5日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ