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結局、自衛隊の削減を主張しているだけの朝日新聞

 8月11日の朝日新聞は社説で、自衛隊創設50周年に当たって次のように述べていました。

■自衛隊50年――新潮流への備えこそ
 自衛隊の前身である警察予備隊が発足してから、10日で50年がたった。
 警察予備隊から保安隊を経て、陸海空の3自衛隊が誕生したのは、冷戦真っただ中の1954年7月だった。
(中略)
 自衛隊の役割と守備範囲は、ひと昔前には想像もつかなかったほど広がっている。そのことは一面で、「外敵による大規模侵略の阻止」という最大の任務の現実味が薄れ、冷戦後の新たな方向性を探しあぐねている自衛隊の現状の投影でもあるだろう。
 2001年度から5年間の「中期防衛力整備計画」(次期防)の策定作業が政府部内で始まった。忘れてならないのは、時代の潮流変化に柔軟に即応する視点である。
(中略)
 しかし、先の南北首脳会談を機にようやく緊張緩和の兆しが見える朝鮮半島を、冷戦状態に引き戻すような敵視政策は許されまい。米国との共同技術研究段階にある戦域ミサイル防衛(TMD)構想には、北朝鮮や中国などの警戒感が強く、技術面、コスト面での難点も多い。開発を断念すべきである。
(中略)
 次期防では、コンピューター網に侵入して軍事システムに打撃を与える「サイバーテロ」などへの対応も課題になる。兵器を使わずに敵を制する――。米国で進む「軍事における革命」(RMA)は、既成の兵器体系や兵力構成、そして戦闘概念そのものを劇的に変える可能性をはらんでいる。

 そうした点も視野におさめながら、自衛隊の装備や要員の削減についても真剣に議論すべきときではないか。


 朝日新聞は「冷戦が終わり」、「緊張が緩和し」、「『外敵による大規模侵略の阻止』という最大の任務の現実味が薄れ」たと言っていますが、それでは、かつての冷戦の真っ最中の時代には、「軍事的緊張が存在し」、「外敵による大規模侵略の現実味があった」と認めて、自衛隊の存在を支持していたのでしょうか。決してそうではなかったと思います。朝日新聞は冷戦の真っただ中においても、「自衛隊は違憲」、「非武装中立」と言う主張を支持していて、相当規模の自衛力の保持の必要性を主張してはいませんでした。

 また、「アメリカで『軍事における革命』(RMA)が進み、戦闘概念そのものを劇的に変える可能性をはらんでいる」ことを理由に自衛隊の削減を主張していますが、形が変わっても戦争のおそれが無くなるわけではありません。それなのに「劇的な変化」にどう対応すべきかを論じないで、現在の装備や要員の削減だけを主張するのは無責任です。

 結局、朝日新聞にとっては緊張があろうが無かろうが、「軍事における革命」がどうなろうと、本当はそんなことはどうでも良いことで、彼らは「自衛隊は違憲」と言う替わりに、自衛隊を削減せよ、限りなくゼロに近づくまで、戦力と言えない程度にまで削減せよと言っているだけだと思います。

 今回の社説には、「自衛隊は違憲」とする、憲法の視点からの主張が見あたりません。朝日新聞は「自衛隊は違憲」という主張が国民の支持を得られず、非現実的になったために、それを引っ込めて、替わりに「冷戦の終結」や「軍事における革命」、「戦闘概念の変化」、「時代の潮流変化に柔軟に即応」などと言うことを口実に、自衛隊削減(実質的な廃止)を狙っているだけだと思います。

平成12年8月13日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ