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新聞の「再販賛美」と読者の知る権利

 11月9日の読売新聞夕刊に、「再販堅持 緊急アピール」、「活字文化懇 公取見直しに対応」と言う見出しで「活字文化懇談会」の緊急アピールを報じる、次のような記事がありました。

 「日本新聞協会、日本書籍出版協会、日本雑誌協会と文部省、文化庁でつくる『活字文化懇談会』が・・・著作物の再販売価格維持制度(再販制度)について、その堅持を訴える緊急アピールを採択した」
 「アピールは『再販制度は多種多様な著作物を、国民の誰もが全国どこにいても同一の価格で、容易に入手することを可能にしているものであり、文化政策上の意義は極めて大きく、その維持は不可欠』などとしている」


 読売新聞は10月13日の朝刊でも、新聞週間特集の記事の中で、再販制度が国民の『知る権利』を保障し、民主的な諸制度を守るために必要な仕組みだと考えられている」とか、「新聞などの再販制度が廃止されれば、新聞が決まった時間に確実に家庭に届く便利な宅配制度が崩壊しかねない」などと、新聞の再販と宅配を賛美しています。

 彼らの再販賛美が当を得ているかどうか以前の問題として、記事の中には再販制度を見直そうという公正取引委員会の考え方の紹介や、再販に批判的な人達の意見がほとんどありません。これでは読者は新聞の再販の問題について、自由に判断することが出来ません。読売新聞は再販制度を、「国民の知る権利を保障する仕組み」と言っていますが、このような偏った報道は「国民の知る権利」を奪うものです。

 戦争中の新聞報道は「戦争賛美一色」だったと言われますが、今の新聞は、「再販賛美一色」と言っても過言ではありません。戦争中の「戦争賛美一色」は政府の言論統制によって強いられたものと言われ、その言論統制は国民に多大な不利益をもたらしましたが、今の新聞紙面の「再販賛美一色」は誰に強いられたものでもなく、新聞業界自らの意志で行われているものです。新聞業界は自ら言論統制を行っています。

平成12年11月11日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ