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少年犯罪をめぐる議論のすり替え

「少年犯罪『厳罰主義は解決策にならぬ』」(平成10年2月27日朝日夕刊)、「刑事罰を科せばいいと言う発想では、何の解決にもならない」(平成10年3月3日朝日夕刊)

 よく聞く言葉です。何気なく聞くと本当にその通りだと思ってしまいます。それが落とし穴なのです。解決策とは何でしょう。これ一つすればすべて問題が解決する。それが解決策だとすれば、確かにおっしゃるとおり厳罰主義だけではすべての解決にはならないでしょう。それでは解決策にならないことはしない方がいいのでしょうか。また、してはいけないのでしょうか。そんなことはないのです。現状のまま放置するよりもした方がいいことはすべきことなのです。それに反対するのであれば、よりよい具体的な案を提案しなければいけません。それをしなければ反対は単なる反対のための反対になってしまいます。

 「教師ばかりを責められない」、「教育に特効薬はない」これも以前新聞にでていたもの(平成9年6月30日朝日朝刊)ですが、手口は同じです。教師の無能、無気力、無責任ぶりが指摘されたり、戦後の教育に対する疑問の声が出ると必ずこういう反論が返ってきます。仮に教師ばかりを責められないのが事実であるとしても、それは教師を責める事が不当であることにはなりません。特効薬でなくても効果のある薬を探して飲むことは必要なことなのです。飲まないよりはよいのです。

 彼らのこうした巧妙な言葉のごまかしにより教師批判や、戦後の教育に対する疑問の声は封じられ、いつしかタブーになってしまいました。学校内でどんな事件が起きても担任教師は匿名扱いで、校長のみが非難の矢面に立つというのが慣例になってしまいました。普段、校長の言うことなど聞かない教師も、こういうときは校長の背に隠れ顔さえ出さないのです。こうして教師の資質や教育制度をまじめに議論しようとする人たちは口を封じられてきました。非難されるべき人が非難されず、責任を負うべき人が何の責任も負わず、公立小中学校の荒廃が進むことになったのです。

 平成10年3月3日産経新聞夕刊によれば、東京都教育庁は指導力不足教員16人を授業からはずし一年間研修させることとし、3年連続指導力不足と認定された場合は退職を勧告することになったそうです。また、埼玉県教育委員会は体罰(体罰と言うより暴力という方が正確)だけでなく教師による刑事事件や不祥事が生徒の信頼を失わせ、教育に悪影響を与えている現実を指摘するマニュアルを作成したそうです。
 学校を荒廃させているものは何か。少年犯罪を減らすためにはどうしたらよいのか。もはやこれ以上真実を隠蔽することは許せません。

平成10年3月7日     ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る     A目次へ