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官僚政治を助長する読売新聞のアンケート

 元日の読売新聞に、「10年経ったら『谷垣さん』」、「新世紀期待の政治家」という見出しの特集記事があり、次のように報じていました。

 「読売新聞社は中堅のキャリア官僚100人を対象に『2010年に活躍が予想される政治家』についてアンケートを実施した。トップには自民党の谷垣禎一・元金融再生委員長、二位に石原慎太郎東京都知事、三位に額賀福志郎経済企画庁長官が選ばれた」
 「官僚100人が選んだ『21世紀中に首相になって欲しい政治家』では、石原慎太郎、谷垣禎一郎両氏がそれぞれ11人の支持を受けてトップに並んだ」


 官僚は政治家に任免される立場の人達です。政治家を任免する立場ではありません。任免される立場の人が任免権者について論評したり、人気投票をするのは、組織の健全性を保つ上で、好ましくないと思います。こういうアンケートが公表されれば、政治家に対して何らかの影響力を及ぼす恐れがあります。

 もし、他のマスコミが、読売新聞の次期社長には誰がふさわしいか、読売新聞の役員や幹部職員100人に、アンケート調査をし結果を発表するといったら、読売新聞社はこれを認めるでしょうか。会社の秩序を乱すとして決して容認しないでしょうし、回答する者もいないと思います。

 官僚の側としても、公務に全く関係ない政治的問題で、個人的にアンケートに回答するのは、公務員の政治的中立義務に反し、好ましくないと思います。今回のアンケートで、官僚が、「21世紀中に首相になって欲しい政治家」として挙げた16人の内、14人が自民党の議員で、残る2人も保守系の知事ですが、このような結果が公表されると、公務員の政治的中立性に対する信頼が損なわれると思います。

 誰が首相にふさわしいかを決めるのは、言うまでもなく一般国民です。読売新聞はなぜこのような官僚アンケート調査をしたのでしょうか。それは読売新聞社が、高級官僚を単なる公務員(公僕)として見るのではなく、国家の担い手であるかのように見る、誤ったエリート官僚像をいまだに持っていて、彼らの政治的影響力を期待しているからだと思います。このような見方は反面、国民の意思を軽んじることになり、官僚政治を助長し、健全な民主主義にとって有害だと思います。

平成13年1月6日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ