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公正取引委員会の不思議な世論調査(意見照会・意見聴取等)

 公正取引委員会(以下、公取と略します)が3月14日、新聞などの再販制度の是非に関する世論調査結果を発表しました。公取のホームページをみると再販制度を支持する意見が98.8%の多数であったとされていますが、この結果には疑問を感じざるを得ません。まず、公取は今回の調査を
「意見照会・意見聴取等」と言っていて、世論調査と言っていませんが、このへんがまず胡散臭いところであると思います。

 公取の発表では、「・・・国民各層からの幅広い意見を求めたほか,本年1月から2月にかけて,消費者団体(64団体)及び著作権者団体(14団体)から意見を聴取してきた」と、なっています。「国民各層から幅広い意見を求めた」というのは、平成12年12月7日に発表し、平成13年1月25日に締め切られた、郵便やFAX、電子メールによる意見照会(公募)を指していると思います。そして、それとは別に消費者団体、著作者団体の意見聴取をしています。

 世論調査であっても、意見照会、意見聴取であっても、国民の意見を聞くに当たっては聞く相手を公平に偏らずに選ぶことが必要不可欠です。これが完璧に行われていなければ結果は偏った意見になってしまい、国民の意見を知ることにはならなくなるからです。
 公取は確かに平成12年12月7日に国民の意見照会をするに当たっては「・・・国民各層から幅広い意見が寄せられることを期待している」と言っていましたが、公取がいくら国民各層の意見を期待していたとしても、寄せられた28,386件の意見が国民各層の偏りのない意見かどうかは分かりません。利害関係者の意見が多数寄せられる恐れは十分あります。

 また、意見聴取の対象となった消費者団体や著作権団体は、全国民から見れば限られた特殊な団体の人達です。消費者団体の代表は全消費者の正当な代表ではありません。このような人達だけを対象にした調査は、政府機関が行う意見聴取の方法としては極めて不適切であると思います。

 公取のホームページを見ると、「再販制度が廃止されると価格競争が激化して,書店の品揃えは売れ筋のみに偏り,出版社は売れ筋のみを発行するようになる,また,地域の最寄り書店が淘汰されたり,書店間の価格差が発生する結果,特に地方の消費者,高齢者,児童等に不利益を与える」とか、「再販制度が廃止されると価格競争が激化して,販売促進経費が増加する結果,販売店が経営効率化のために過疎地等において戸別配達を放棄したり,割高の価格を設定すること等により,新聞情報への平等なアクセスが阻害され,また,取材経費が圧縮されて紙面の質が低下すること等により,民主主義の基盤が維持できなくなる」などの意見が寄せられたことが紹介されています。

 もし、このような意見が正しいとされるならば、家電製品だって衣料品だって、自由価格は過疎地の消費者には不利と言うことになります。自由価格にすると研究開発費が圧縮されて粗悪品が増え、消費者の利益を損なうと言うことになります。新聞、雑誌という紙で出来た商品だけが例外だと言う根拠はどこにもありません。再販制度は「善」であり、全国一律の再販価格拘束こそ望ましいと言うことになります。これは市場経済の否定であり、このような主張が容認されるのであれば、公正取引委員会は存在の意義を失うと考えるべきだと思います。

平成13年3月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ



著作物再販制度の見直しに関する意見照会・意見聴取等の状況について

平成13年3月14日
公 正 取 引 委 員 会

はじめに
 公正取引委員会は,平成12年12月7日に「著作物再販制度の見直しに関する検討状況及び意見照会について」を公表し,本年1月25日を期限として,著作物再販制度の存廃等の問題について国民各層からの幅広い意見を求めたほか,本年1月から2月にかけて,消費者団体(64団体)及び著作権者団体(14団体)から意見を聴取してきた。これらの意見照会,意見聴取等に基づく意見の状況は,次のとおりである。

1 意見照会の状況
(1) 著作物再販制度の存廃等の問題についての意見照会に応じて,個人及び団体から多くの意見が寄せられた。提出された意見の件数をみると,次の表のとおり,再販制度の維持を求める意見が28,048件,同制度の廃止を求める意見は338件であった。

 ○公正取引委員会に提出された意見の件数


対  象         再販制度維持の意見       再販制度廃止の意見
書籍・雑誌          13,388(99.6%)         60( 0.4%)
新  聞           11,787(99.5%)         57( 0.5%)
音楽用CD等(注)        488(94.6%)         28( 5.4%)
著作物再販制度一般    2,385(92.5%)        193( 7.5%)
合  計           28,048(
98.8%)        338( 1.2%)

(注)レコード盤,音楽用テープ及び音楽用CDをいう。以下同じ。
 このほか,日本新聞労働組合連合等から,新聞の再販制度の維持を求める署名(計71,154人)が寄せられている。

(2) 提出された意見の内容をみると,主に以下のようなものであった(具体的な内容については別紙1参照。以下(3)についても同様。)。
  ア 書籍・雑誌
    再販制度の維持を求める意見としては,文化商品である本について経済効率の面から流通制度を考えることは不適当である,再販制度が廃止されると価格競争が激化して,書店の品揃えは売れ筋のみに偏り,出版社は売れ筋のみを発行するようになる,また,地域の最寄り書店が淘汰されたり,書店間の価格差が発生する結果,特に地方の消費者,高齢者,児童等に不利益を与える等の指摘が寄せられている。再販制度の廃止を求める意見としては,消費者が書店を選択する等の努力をして良い商品を安く購入したいというニーズは満たされるべきである,再販制度を廃止して市場原理に任せれば,優れた内容のものを含めたより多様な書籍・雑誌が発行され,市場の活性化につながる,また,低価格販売を行う書店や価格以外の工夫をする書店など消費者のニーズに対応した魅力ある書店が増加する等の指摘が寄せられている。

  イ 新聞
    再販制度の維持を求める意見としては,再販制度が廃止されると価格競争が激化して,販売促進経費が増加する結果,販売店が経営効率化のために過疎地等において戸別配達を放棄したり,割高の価格を設定すること等により,新聞情報への平等なアクセスが阻害され,また,取材経費が圧縮されて紙面の質が低下すること等により,民主主義の基盤が維持できなくなる等の指摘が寄せられている。再販制度の廃止を求める意見としては,消費者のニーズの強い戸別配達を販売店が放棄するとは考えにくく,戸別配達の維持との因果関係は成り立たない,競争の結果,紙面の質が低下することは市場経済の中では考えられない,再販制度が存在し,読者が販売店を選べないため,新聞販売における消費者のニーズが反映されない等の指摘が寄せられている。  ウ 音楽用CD等
    再販制度の維持を求める意見としては,再販制度が廃止されると価格競争が激化して,レコード店の品揃えは売れ筋のみに偏り,メーカーは売れ筋のみを発行するようになり,その結果,音楽文化の維持や作家・アーティストの育成が困難になる,地方のレコード店が廃業したり,レコード店間で価格差が発生することによって消費者が安心して購入できなくなり,特に地方の消費者,高齢者,児童等に不利益を与える等の指摘が寄せられている。再販制度の廃止を求める意見としては,再販制度を廃止すれば,消費者がレコード店を選択して,より良い商品をより安く購入することが可能になり,結果として市場の活性化につながる,再販制度を維持することにより,インターネット等を利用した取引を内容とする今後のIT革命の流れを阻害する可能性がある,我が国のみ音楽用CD等に再販制度を必要とする特別の事情は見当たらない等の指摘が寄せられている。
(3) また,再販制度の存廃自体に関する意見とは別に,同制度の運用や流通・取引のあり方について,消費者利益の確保の観点から,非再販化された書籍・雑誌や時限再販期間経過後の音楽用CD等の値引販売等を消費者の目に見える形で実行すべきである,新聞に長期購読割引を導入すべきである等,現時点において是正すべき事項がある旨を指摘している意見があった。

2 消費者団体からの意見聴取等の状況
(1) 公正取引委員会は,平成13年1月から2月にかけて,消費者団体計64団体(北海道4,東北6,東京8,中部17,近畿16,中国5,四国5,九州2,沖縄1)から著作物再販制度自体の存廃等の問題について意見を聴取したところ,全体的にみて,著作物再販制度の廃止を求める意見が多数であった。意見の内容をみると,著作物再販制度は消費者がより安くてサービスの良い販売店を選択することを阻害する,同制度を廃止することで企業意識が向上するとともに競争原理が働き,消費者のニーズが伝わるようになる,また,著作物について一般の商品のように価格差があっても消費者が混乱することはない等の指摘があった(具体的には別紙2参照。以下(2)においても同様。)。しかしながら,新聞の戸別配達への影響や著作物の価格の上昇に対する懸念から,再販制度の維持を求める意見もあり,地域(北海道及び沖縄)によっては,このような意見が多数であった。

(2) また,各地域において,著作物再販制度の存廃とは別に,消費者利益の確保の観点から,書籍・雑誌及び音楽用CD等について一定期間経過後は自由価格にすべきである,文化の普及等に必要なものに限って認めることとすべきであるとする意見や新聞について長期購読者に対して割引をすべきであるとする意見があった。

3 著作権者の団体からの意見聴取の状況
(1) 公正取引委員会は,平成13年1月,書籍・雑誌の著作権者の団体8団体及び音楽用CD等の著作権者の団体6団体から意見を聴取したところ,いずれの団体においても,著作物再販制度の維持を求めるとの意見であった。意見の内容をみると,書籍・雑誌及び音楽用CD等の再販制度に関する意見照会に応じて寄せられた意見と同様のもののほか,再販制度を廃止すると,印税収入が不安定化し,創作活動に専念できなくなるといった著作権者の利害に関わるものがあった(具体的には別紙3参照。以下(2)においても同様。)。

(2) また,再販制度の維持を求める意見の中でも,注文した書籍の入手期間の短縮等の流通改善や文化振興に対する国の支援等について是正すべき点を指摘するものもあった。

4 地方公共団体の議会による意見書
  公正取引委員会が把握しているものとして,22の都道府県議会及び212の市区町村議会において,著作物再販制度の維持を求める意見書の採択が行われている。意見書の内容をみると,再販制度の廃止の結果,地方の中小販売店が衰退して,著作物の入手が困難となったり,地方での著作物の価格が上昇したりする結果,情報伝達や文化水準に地域格差が発生することにより,地方の住民に不利益が及ぶことを懸念し,同制度の維持を求めるものがあった(具体的には別紙4参照。)。

(問い合わせ先) 公正取引委員会事務総局 経済取引局 取引部 取引企画課
          電話 03(3581)3371(直通)
(ホームページ) http://www.jftc.go.jp


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別紙1

意見照会に応じて寄せられた意見の具体的内容

1 書籍・雑誌
 <再販制度の維持を求める意見>
○著作物はあくまでも文化商品であり,経済効率の面から制度を考えることは不適当。再販制度が廃止されれば,書店は売れ筋しか在庫せず,出版社は売れ筋だけを発行することになり,文化の多様性が失われる。1冊の本が読者の人生観を変えることすらあるので,このようなことは避けるべきである。
○再販制度がなくなると,書店の経営が苦しくなって地域の最寄り書店は維持できなくなる結果,地域の住民が本を入手するのが不便となり,高齢者や子供が読書の機会を均等に得られなくなる。
○再販制度が廃止されて販売価格が自由になると,弱肉強食で大手出版社の本だけが残り,良質の専門出版社の本が発行されなくなる。また,現在の価格は国際的にも安く,再販制度がなくなると価格が上昇する可能性が高い。本は我が国の知的水準を支えるために重要な商品であるので,このようなことは避けるべきである。
○本はどこで買っても同じ値段であるので安心して購入できるが,再販制度が廃止されて書店間・地域間で価格差が生じると,高く買った消費者は不平等感を感じるだけでなく,安い書店を探すことが負担となって購入意欲を失ってしまう。文化へのアクセスの平等性の観点や,文化の発展の観点からも,再販制度により全国同一価格とすべきである。
○我が国は,再販制度がない他の国に比べて,公共図書館の数や予算の規模で格段の違いがあるので,この種のインフラが整備されない状況で再販制度を撤廃することは不適当である。

 <再販制度の廃止を求める意見>
○インターネットにより流通が革新的に変化している現在,既存の業界を保護するための再販制度は廃止すべきである。関係業界が,常に書店の選択等の努力をしてより良いものをより安く購入したいという消費者のニーズに応えず,変革期に発生する混乱のみに着目して問題を先送りすれば,将来的により大きな問題をもたらす。
○著作物再販制度を廃止し,市場原理に任せれば,優れた内容のものも含めてより多様な書籍・雑誌の発行がなされ,結果として構造不況に陥った出版市場の活性化につながる。また,再販制度が廃止されても,関係事業者が合理的に経営判断すれば委託販売制はなくならず,書店の品揃えが乏しくなるということはない。
○再販制度で一定のマージンを保証されるからこそ,書店は等しく売れ筋を取り扱ってグロスの利益を最大化しようとしている。同制度が廃止されると,低価格販売する書店や地域の消費者に密着して低価格以外の工夫を行う書店など,様々な消費者のニーズに対応した多種多様な魅力ある書店が増える。
○競争の結果,本の価格が上昇することは経済社会の常識として考えられない。また,競争の結果どんな商品でも需給関係で地方間価格差が生じることは常識であるが,出版社が希望小売価格を示せばそれに近い価格で販売される。

 <現在の流通・取引のあり方について是正すべき点を指摘するもの>
○発売後一定期間が経過した書籍は,商品価値が下がっているのであり,また,そのまま裁断するのは環境保護の観点からも問題であるので,消費者の利益となるように,自由価格として販売すべきである。
○書店で注文した場合に,在庫の有無が判明するまでに数週間かかるといった状態を改善すべきである。
○取次による出版社に対する取引条件や書店に対する売れ筋商品の配本についての差別的取扱いを是正する必要がある。

2 新聞
 <再販制度の維持を求める意見>
○著作物再販制度が戸別配達と同一紙同一価格を保障し,新聞の文化・公共性,言論の多様性を担保している。これにより,憲法が要請する言論・表現の自由,国民の知る権利にこたえ,民主主義の維持・発展に不可欠な要件である国民全体での情報の共有化が達成されている。著作物再販制度は消費者の利益にかなう大事な制度である。
○再販制度が廃止されると価格破壊を起こし,値引きや景品による競争が激しくなり,販売網の維持のために販売促進経費が増大するのは必至であり,販売店は経営効率化のために,過疎地等の手間のかかる読者の戸別配達を放棄したり,割高の価格を設定せざるを得なくなり,新聞への公平なアクセスが崩壊し,新聞の普及率が低下する。
○再販制度が廃止されると,過当なシェア競争が起こり,その結果,淘汰される新聞社や販売店が発生して言論の多様性が後退し,民主主義の基盤を危うくする。
○再販制度が廃止されて販売促進経費が増大する結果,取材経費が圧縮され,ジャーナリズムの質の低下を招きかねない。市場の自由の中に放置されるだけでは公正なジャーナリズムの成立はおぼつかなく,市場の失敗に会えばジャーナリズムが深く傷つけられ,国民の知る権利に対して適切な有り様が失われるおそれがある。
○再販制度が廃止されると,価格競争の結果,経営が行き詰まる販売店が生じ,読者の望むサービスができなくなる可能性が高い。また,現在の不況の下では,従業員等の雇用・生活の維持に深刻な影響が生じる。

 <再販制度の廃止を求める意見>
○消費者からのニーズの強い戸別配達を販売店が放棄することは考えにくく,内部補助により戸別配達は維持できるので,再販制度と戸別配達の維持との因果関係は成り立たない。
○再販制度による収益の増加部分は,その用途に制限がなく,文化振興のために費やされる保証はどこにもないから,再販制度が文化振興に関係するという根拠は薄い。「競争の導入が合理化をもたらし,新聞の質を悪くする」という新聞業界の論理は,市場経済の中で生活している国民にとって理解できない。
○過疎地も都市部も同一の購読料が維持されているというが,ページ数は地域格差を生じており,また,実際には,値引き,大型拡材,無代紙等の形で価格競争が行われている。再販制度を乱用し,新聞社の販売拡張戦略そのものを反映した価格が設定されていたり,また,新聞販売における消費者のニーズが反映されないのは,消費者が販売店を選べず,再販制度という過保護な制度があるためである。
○再販制度は販売店経営の自由を著しく歪めている。再販制度がなくなれば新聞社の販売店に対する締めつけが緩くなり,公平な競争ができる。

 <現在の流通・取引のあり方について是正すべき点を指摘するもの>
○消費者に利益となる長期購読割引等の割引制度や朝刊・夕刊・配達料の別立て料金制等の設定を行うべきである。
○消費者が希望する販売店からの購読が認められないのは不合理。また,強引な勧誘,景品提供等の問題が改善されていない。
○購読料の値上げ時期や休刊日がそろっているのはおかしいのではないか。
○新聞社から販売店への新聞の押込み販売は販売店の経営に深刻な影響を与えており,是正してほしい。
○新聞の公共的性格や再販制度によって過剰な利益を上げていないかどうかを監視するため,新聞社の資金使途,経営状況,決算等について情報公開すべきであ
 る。


3 音楽用CD等
 <再販制度の維持を求める意見>
○再販制度が廃止されると,文化的価値は高いが売れ筋でないようなCDはあまり店に置かれず,売れ筋商品の安売り合戦により,ヒット商品しか店に並ばなくなる。
○日本で発売されている音楽用CD等のタイトル数は世界でもトップクラスであるが,これは再販制度があるためで,廃止されてしまったら,レコード会社は売れるCDだけしか発売しなくなり,日本の音楽文化は商業主義に駆逐されてしまう。
○ユーザーが様々なジャンルの音楽作品を選択できるようにするため,再販制度を維持して売れ筋でない分野の作家やアーティストの育成・活躍の場が失われることがないようにする必要がある。
○再販制度が廃止されると,地域密着型の中小販売店は,価格競争の結果廃業してしまい,行動範囲の限られる高齢者,子供等が,音楽文化に身近に接する機会を剥奪することになる。インターネットで手に入れることが一般化したとしても,ITに対応できない年配の消費者は,文化の享受から取り残される。
○再販制度が廃止されると,音楽ファンの誰もが音楽用CD等を同一の価格で購入できなくなるので,消費者が安心して購入できなくなる。地方では大きいレコード店がなく,欲しい音楽用CD等も少ないので,都市と地方では大きな値段の格
 差が出てしまう。

 <再販制度の廃止を求める意見>
○著作物再販制度を廃止し,市場原理に任せれば,消費者がレコード店を選択してより良い商品をより安く購入することもできるようになり,より音楽文化に触れる機会が増加することになる。
○音楽用CD等はレンタルが普及しているが,再販制度が廃止されれば消費者がCDを安く購入できるようになり,レンタルよりも購入する消費者が増えることが期待でき,結果として市場の活性化につながる。
○音楽用CD等については,いち早くインターネット音楽配信や各種メディアでの
 配信が進むと思われるところ,再販制度を維持した場合,音楽業界等にある旧来からの権益を守るため,IT革命に無用の制限を加えることになるおそれがある。
○諸外国において,音楽用CD等の再販制度はすでに廃止されている。我が国において同制度がどうしても必要とするような特別な事情は見当たらない。また,映画ビデオ,DVDでは,人気のない商品はすぐに値段が下がっており,近くに陳列されることが多いにもかかわらず,音楽用CD等のみ再販制度に縛られているのはおかしい。

 <現在の流通・取引のあり方について是正すべき点を指摘するもの>
○音楽用CD等の再販制度は,時限再販という方法で運用されてきたが,この方法がベストであると思う。ただし,その期間は3か月〜6か月にすべきである。
○商品を細かく区分して,再販制度の廃止の対象となるものと,教養に関わる音楽用CD等今までどおり存続するものに分けるのが妥当ではないか。
○時限再販,部分再販などを今までのように運用しながら,欲しい商品が低価格で購入できる機会がもっと多くの面で広がり,消費者利益が確保されることを望む。


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別紙2

消費者団体から聴取した意見の具体的内容

 <再販制度の廃止を求める意見>
○再販制度のために消費者が安くてサービスの良い店を選ぶことができない。業界が現在行っている弾力運用だけでは限界があるので,基本的には廃止すべきである。
○再販制度を廃止することで企業意識が向上するとともに競争原理が働くのではないか。他の業界と同様に自由競争に取り組むべきである。関係業界は,再販制度の維持よりも,最近の消費者のニーズの変化を十分に把握することに努めるべき。消費者の意向が伝わらないような業界は消費者に見放されることになる。
○廃止になれば小売店間や地域間で価格差がでるというが,一般の商品のように価格差があっても消費者が混乱することはなく,また,地域によっては他の物価が安いということもあるので,トータルでは問題視する程ではない。
○最近は電話料金や航空運賃でさえ一律ではなくなってきているのであり,そのような時代に再販制度で価格を拘束するのは消費者に不利益を与えるのではないか。

 <再販制度の維持を求める意見>
○再販制度が廃止されると,新聞については,過疎地・高齢者等への戸別配達を維持するため再販制度を維持すべき。少なくとも慎重な考慮が必要である。
○再販制度が廃止されると,書籍・雑誌については,最寄り書店が失われていき,子供や高齢者等が書籍等に接する機会が減少するおそれがある。
○再販制度が廃止されると,都市と地方との価格差が出て,遠隔地における商品の価額が高くなるのではないか。全国同一価格は安心感がある。

 <現在の流通・取引のあり方について是正すべき点を指摘するもの>
○書籍・雑誌は,古いものはすぐに店頭からなくなってしまうが,消費者利益の確保の観点からは,自由価格にして,安く販売すべきではないか。
○本やCDは本当に必要なものと,かなり娯楽性の高いものがあり,それらを全て一緒に議論するのもいかがなものか。児童書,老人用の本など文化の普及等に必要な書籍に限って再販を認めるようなシステムとすべきではないか。
○新聞について,頻繁に購読紙を変更する方が,長期間購読しているよりも多くのサービスを受けることができるのは不合理であり,長期購読者に対して値引き等のサービスを行うべきである。


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別紙3

著作権者の団体から聴取した意見の具体的内容

 <再販制度の維持を求める意見>
○定価制度下の契約という安定した基盤がなくなるため,印税の支払慣行等が不透明になり,創作活動に専念できなくなる。
○再販制度が廃止されれば,制作コストのかかる作品は発行できなくなる。
○再販制度がなくなれば,価格競争で売れ筋の商品のみ制作されるようになり,需要の見込めない分野の商品は発行されなくなる。また,その他の分野でも発行企画の多様性と人材の新たな参入がなくなり,芸術文化の維持が困難になる。

 <現在の流通・取引のあり方等について是正すべき点を指摘するもの>
○本を注文すると1〜2週間も掛かることを競争がない再販制度の弊害とする声があるが,流通の問題であり,流通は改善されなければならない。
○海外では文化に補助金を出しており,日本で文化を崩壊させないよう国から補助金を出してもよいのではないか。
○ある程度時期が経過した作品を値引き販売する場合は,必ず著者の了解を取るようにしてほしい。著者は自分の作品が値引き販売されるとプライドが傷つくので裁断される方がいいと思っている人も多い。


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別紙4

地方公共団体の議会による意見書の具体的内容

 <意見書の内容>
○出版物は,一般消費財とは性格を異にする文化性を有し,その品質の保存と全国同一価格の維持は,国家の文教政策に重要な関わりを持っているので,単に経済効率のみを問題にするべきではない。
○再販制度は,多様な内容・種類の商品を日本中どこでも同一価格で,安定的に手に入れることができることを保障しており,これが廃止されると,地方の住民ほど新聞・書籍・CDの入手が困難になったり,地域間で価格差が生じることも招きかねず,地域間に情報伝達等の不均衡をもたらすおそれがあり,国民の知る権利の確保や自由な世論形成を阻害することが懸念される。
○再販制度が廃止されると,企業間競争の激化を招き,体力のない中小企業の衰退,寡占化を促進し,憲法の保障する言論・表現の自由や思想の多様性が損なわれ,文化水準の地域間格差を生じさせるおそれがある。