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言論の自由を脅かす「差別」と「人権」

 4月17日の産経新聞は、「差別助長の恐れ高い出版物 訴訟通じて差し止め」という見出しで、次のように報じていました。

 「法相の諮問機関で人権救済のための政府機関新設を提言している人権擁護推進会議(会長・塩野宏東亜大通信制大学院教授)は16日の会議で、差別を助長、誘発する恐れの高い出版などは、新設機関が裁判所に差し止め訴訟を起こすなどして阻止する方針を決めた。・・・昭和50年に売買が発覚した被差別地区を対象にした地名総鑑のような出版物には@新設機関の裁定・命令で差し止める。A裁判所に提訴するのふたつの方法を検討・・・」

 「人権」や「差別」を理由に言論、出版の自由を制限することは許されるのでしょうか。このような制約をしようとする発想は、「反革命」、「国家転覆」を理由に言論・出版の自由を制限している中国政府の考え方と本質的に変わるところがないのではないでしょうか。地名総鑑のような出版物を禁止するのは大変危険な前兆だと思います。人権擁護推進会議の考え方は言論・出版の自由の尊さに対して鈍感です。言論・出版の自由に対する制約は、具体的な個人に対する権利侵害があったときに限定すべきだと思います。

 それに、「差別」とか、「助長」、「誘発する」などと言う言葉は非常に曖昧です。明確な定義が出来るのでしょうか。人によってどのようにでも解釈・運用される恐れがあります。

 かつて、「従軍慰安婦に強制連行はない」と言う櫻井よしこさんの発言に反発し、櫻井さんの講演に反対して講演会を中止させた「神奈川人権センター」の人達は、「櫻井差別発言は言論の自由以前の問題」、「言論の自由は差別発言の自由ではない」といって、言論の自由を侵害したことを正当化しています(下記参照)。何が言論の自由“以前”で、何が“以後”なのかはっきりしませんが、このような理由で人の発言を封じることが出来ると考えるのは、「『反革命』は言論の自由“以前”の問題だ」という、中国政府の思考と何ら変わりはありません。

 新設される機関において、このように妨害活動が正当化されないと言う保障はあるのでしょうか。差別禁止の名の下に、「同和問題」や「従軍慰安婦」を批判する者に対する妨害行為が正当化され、言論・出版の自由が侵害される恐れがあると思います。

平成13年4月21日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ


 社民党のホームページ http://www5.sdp.or.jp/central/topics/sakurai.html より(太字強調は安藤)
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唖然とする櫻井差別発言の中身
神奈川人権センターが怒りの抗議続ける
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「言論の自由と」と「差別発言の自由」はき違える一部マスコミ
三浦商工会議所講演会の中止は当然
 「従軍慰安婦に強制連行はない」などと問題発言したジャーナリストの櫻井よしこさんを講師に予定していた講演会(神奈川県・三浦商工会議所主催)が一月二十八日、「神奈川人権センター」(日高六郎理事長)の講師再検討の要請によって中止になった。一部マスコミは、これに関し「言論の自由を封じる」などと人権センターを名指しで誹謗中傷したが、人権センター側は、人権を守る立場から「言論の自由は差別発言の自由ではない」と勇猛果敢に反論した。桜井差別発言に対する人権センターの一連の取り組みをレポートする。

  問題の櫻井差別発言が飛び出したのは昨年十月三日、横浜市教育委員会主催の教職員研修講演でのことだ。

 テープ起こしをもとに問題部分を注出してみると「従軍慰安婦」に関して「強制連行ではないという信念なんです」とか、かつての中国、朝鮮侵略について「対ロシア戦闘としてやむをえなかった」、朝鮮侵略について「日本人として朝鮮人を日本人並みに引き上げようとした」「慰安婦たちは、それなりのビジネスとしてやっていた」−−−などと許しがたい差別発言を連発している。

 聞いていた教員の一人は、唖然として開いた口がふさがらなかったという。

 それは「公娼制度」発言の梶山静六官房長官や「慰安婦は商行為だ」と言い放った板垣正・自民党参院議員を想起させる暴言ぶり。

 また、櫻井女史は「従軍慰安婦」問題で謝罪談話を出した河野洋平元官房長官や国策の誤りをうたった談話を出した村山富市前首相らを「謝罪外交」として一方的に批判する。

 女史は「強制連行ではない」と言い切る根拠として「外務省の資料を隅から隅まで読んでみたが、強制連行という資料は、どこにもなかった」からだという。つまり、お役所の提出する資料にないから「強制連行ではない」と我田引水の論理を展開するのみなのだ。

 とともに軍の連行責任者で自らの犯した連行行為を赤裸々に証言した吉田清治氏の著書について、事実をねつ造していると断定。その根拠に「自由主義史観」グループの黒幕ともいえる秦郁彦氏の著作を引用する。

 こうした差別発言を繰り返す櫻井女史に対し人権センターは昨年十二月に「かつての植民地侵略を美化し、民族差別、女性差別を扇動するものだ」と厳しく抗議した。続いて人権センターと県朝鮮人強制連行真相解査団は、講演を主催した横浜市教委に「今後は人権擁護の観点をもった講師を選択すべきだ」などと申し入れた。

 この申し入れに二月五日、市教委側から、(1)櫻井氏の講演が、旧日本軍の朝鮮侵略などに触れた市教委の「在日外国人にかかわる基本方針」と異なる歴史認識で展開されたことは大変残念である(2)今後も差別を許さず、人権を尊重する観点で講師を選んでいく−−−などとする回答が出された。

 さらに人権センターは一月二十七日、櫻井女史を講演会の講師として招く予定だった神奈川県三浦市の三浦商工会議所に対し、講師の再検討を文書で申し入れた。三浦商工会議所側も、この申し入れを受け入れて二十八日に講演会の中止を決めた。

 これに関し読売新聞など一部マスコミは「言論の自由を封じる」などと人権センターを名指しで誹謗中傷した。人権センター側は「言論の自由は差別発言の自由ではない。言論の自由の名のもとに差別、人権侵害の扇動を行なうことは許されない」と反論し、謝罪を求めた。産経新聞・週刊新潮のいずれも現時点で回答していない。

 高橋孝吉・神奈川人権センター事務局長は「櫻井差別発言は言論の自由以前の問題。公的な機関や社会的な影響力をもった団体の場合、講演会の講師選定は人権擁護の観点をきちんともって行なうべきだ。櫻井発言は、いま全国的に動き出している「自由主義史観」グループの宣伝に利用されている可能性がある。このグループの動きを放置すれば危険だ。一歩も引けない闘いだ」と語っている。
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社団法人「神奈川人権センター」
部落、民族、障害者、患者、女性、海外援助協力などの問題に取り組む県内の人権NGO二十九団体と八個人の正会員で構成され、それに協力する賛助会員によって支えられている。世界人権宣言四十周年(一九八八年)記念行事開催を契機として結成準備が始められ、九〇年に任意団体として「神奈川人権センター」を設立、九三年には社団法人となった。
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この記事は、「社会新報」(2月26日号)からの転載です。
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