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議員はなぜ夫婦別姓問題に関心がないのか(選挙における争点隠し)

 9月25日の読売新聞は「政界ウォッチング」と言う欄で、「選択的夫婦別姓、『時代の波』に敏感に」と言う見出しで、次のように報じていました。

 「選択的夫婦別姓制度に、
 『反対』       約15%、
 『賛成』       約15%、
 『どちらでもいい』  約70%
 自民党の野田聖子・元郵政相が顧問を務める・・・が、総勢237名の自民党衆参院議員を対象に8月から進めている聞き取り調査の仮集計結果だ。・・・『反対する議員は確固たる意志で反対しているけれど、そもそも関心がないという議員がほとんど』と言う自民党内の実状には、やや意外な感がある」


 夫婦別姓問題は新聞で大きく取り上げられている問題なので、国民の関心は決して低くないと思います。それなのに議員はどうして無関心なのでしょうか。それはこの問題が選挙で争点になっていなかったからだと思います。選挙で争点になっていなかったため、意見を求められたこともなく、どちらの主張をすべきか決めかねているのだと思います。

 では、この問題はなぜ選挙の時には争点にならなかったのでしょうか。夫婦別姓を推進しようとする女性議員達は国民の支持が得られると思っているのなら、選挙の時に声を大にして訴えるはずです。ところが彼女らはこの問題について選挙の時は声を潜めていたと思います。大阪府知事の太田房江さんも昨年の知事選挙の時に、夫婦別姓の実行者であることを隠していたと思います。少なくとも積極的に訴えることはしていませんでした。

 夫婦別姓を主張する多くの女性議員が、選挙の時に積極的に訴えなかったのはなぜでしょうか。それは、国民の支持を得られないと知っているからだと思います。政府の世論調査にしたって夫婦別姓を志向する者が7.7%しかいない現状で、夫婦別姓を訴えたところで有権者の反発を買うだけでプラスにならないことは明らかです。

 候補者が選挙の時に口をつぐむのはこの問題に限りません。国民の関心事である定住外国人の地方参政権の問題について、これを積極的に推進している公明党は、参議院選挙期間中は自民党との不協和音を懸念して、有権者に何も言いませんでした。その他の賛成議員も選挙期間中は何もこの問題で有権者に訴えてはいなかったと思います。政治家が国民の判断を仰ぐべき選挙の時に限って口をつぐみ、選挙が終わってから行動を起こすのはペテンと言っていいと思います。

 また、この定住外国人の地方参政権の問題については、実に多くの地方自治体が推進決議を採択していますが、有権者である日本国民に何の利益もない問題で、なぜ多くの地方議会が次々と推進決議を採択するのか不思議です。地方選挙において外国人参政権の是非が争点になることはまず有り得ず、地方議会のほとんどの議員はこの問題に無関心であると思います。地方議会の決議は民意を反映したものとは言えないと思います。

 民意を反映しない定住外国人地方参政権実現決議が採択されたり、ほとんどの国民が望んでいない夫婦別姓を容認する法律が実現しようとしているのは、選挙が有効に機能していないことが一因だと思います。そして、その原因は争点を隠して選挙が行われているからだと思います。国民の声が政治に反映される機会を奪われているからだと思います。国民が主権者として主権を行使する唯一の機会が奪われているのです。

 それでは、一体争点を隠しているのは誰でしょうか。新聞は定住外国人の地方参政権や夫婦別姓問題を日頃は大きく取り上げていますが、選挙の時になるとこの問題は紙面から消えてしまいます。全く取り上げていません。そして、選挙が終わると再び大きく取り上げます。反対に、選挙が終わってしまえば誰も振り返りもしない問題(例えば“神の国問題”)を、あたかも選挙の最大の争点であるかのように報じています。
 こうして一部の議員や新聞により争点隠しが行われ、選挙が国民の審判の機会として有効に機能していないことが、政治に民意が反映しない最大の原因だと思います。

平成13年11月11日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ