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読者に選択の自由を与えたくない読売新聞

 読売新聞が2月12日の休刊日に、「特別朝刊」を発行し、宅配もすることになりました。2月11日の朝刊には、「あすは新聞休刊日ですが、特別朝刊を発行します」と題して、次のように書いてありました。

 「読売新聞社は、あす12日(火)に特別朝刊を発行します。当初は・・・あすの朝刊を休刊とする予定でしたが、ソルトレーク五輪が熱戦を繰り広げており、連休中のニュース報道が欠かせないとの立場から、32ページの特別朝刊を発行することになりました」

 オリンピックの日程も、3連休の日程もずっと前から決まっていたことで、読売新聞が急遽予定を変更して、特別朝刊を発行する理由にはなりません。産経新聞が12日の新聞休刊日に、即売版(店頭での1部売り)のみの朝刊を出すことに対する対抗措置であることは明らかです。読売新聞に連動して朝日新聞も宅配、即売を決め、毎日、日経、東京新聞も追随するそうです。新聞業界の人達は「新聞販売店で働く人達の休日の必要性」を強調していましたが、この問題はどこかへ行ってしまったのでしょうか。新聞は、日頃、銀行業界などの「横並び意識」を厳しく批判していますが、新聞業界に他の業界を批判する資格はありません。

 産経新聞が新聞休刊日に朝刊を発行することにしたのは、あくまで1部100円の即売版のみで、宅配の休刊日を無くしてしまおうと言う訳ではありません。読売が「休刊日に宅配する」という過剰反応の対抗策を取る必要があったとは思えません。産経新聞の狙いは、日頃、産経新聞を見たことのない他紙の読者に産経を見てもらい、産経新聞の良さを知ってもらうことだと言っていました。それならば、読売新聞も店頭売りの即売版を発行して、他紙(産経新聞)の月極購読者に読売新聞の良さを見てもらえば十分ではないでしょうか。他紙も追随すれば、新聞休刊日は「いつもと違う新聞を読む日」として意義があったと思います。

 それにもかかわらず、読売新聞がこのような特別朝刊を宅配すると言う対抗措置をとったのはなぜでしょうか。それは、自紙の読者の目に、たとえ休刊日の一日だけでも産経新聞を触れさせたくなかったからだと思います。自紙と他紙を比較されたくなかったのです。読売新聞は紙面に自信がなかったのだと思います。読売新聞の巨大部数は、紙面に対する読者の支持に依ってではなく、強力な販売網(拡張団)によって築かれたものであることを知っていたのです。

 読売新聞は読者が複数の新聞を読み比べると言う事態を避けたいのだと思います。新聞休刊日が「偶然」各社一斉である理由はこの辺にあると思います。新聞によって書いてあることが違うことを読者が知るようになると、当然新聞に対する疑問が生じます。それは、確実に新聞神話の崩壊につながると思います。読売新聞社は産経新聞の休刊日即売版の発行が契機となって、新聞の読者に対する影響力に陰りが生じることを懸念したのだと思います。

 新聞社は自分たちの読者に対する影響力が、ほとんどの読者が一紙しか目にする機会が無いという、かつての社会主義国のような不自由な販売形態によってもたらされたものであることを知っており、この不自由な販売形態のもとで、読者に新聞を比較する機会を与えず、自由に選択させないと言うことが、新聞の影響力の源泉であることを知っているのだと思います。

平成14年2月11日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ