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雪印食品が被った究極の「報道被害」

 雪印食品がとうとう消滅することになってしまいました。多くの従業員や株主は大変気の毒だと思います。

 雪印がしたことのうち13.8トンの輸入牛肉を、狂牛病対策の買い上げ制度を悪用して1460万円で国に買い取らせたことは、明らかな詐欺行為ですが、その他の不当表示は、残念ながらわが国の食品業界ではよくあることだったのではないでしょうか。
 それを裏付けるように、その後も次々と各種の不正表示が報じられています。

 高松市の食肉加工販売会社「カワイ」(河合政弘社長)が米国産輸入牛肉を讃岐牛などの国産牛に偽装して三越などを通じて販売していた。(2月16日毎日新聞)
 全国有数のミニトマトの産地、熊本県八代市の複数の青果物業者が昨年、韓国産ミニトマトを「熊本産」や「八代産」と偽装して関東などの市場に出荷していた。(2月16日朝日新聞)
 大阪市や大阪府、兵庫県の公立小学校の学校給食向けに「国産牛」として納入された牛肉に輸入牛 が混入している疑いが強いことが20日、わかった。(2月21日朝日新聞)

 福島県いわき市の食肉小売業者が、産地不明の国産牛を米沢牛や山形牛と偽って売っていた。(2月22日朝日新聞)

 コメも最近はほとんど産地別に、ブランドをつけて売られていますが、中身に偽りがないか大変怪しいものだと思います。

 要するにこれらの不正表示は氷山の一角であって、決して雪印だけがしていたわけではないと思います。それにもかかわらず、運悪く一番先に目立つような形で発覚してしまった雪印だけが「死刑」で、後は「罰金刑」というのは不公平この上ないことだと思います。
 詐欺行為の被害額にしたって外務省職員の不正(2億240万円)から比べれば、微々たるものです。外務省職員のほとんどが戒告、訓告などの口だけの処分に終わっていることと比較しても、雪印に対する社会的制裁は過酷に過ぎます。

 今回の執拗な報道は、この種の不正表示が日常、食品業界で行われていることはない、という思い込みがあっての報道であったと思いますが、その後各種の不正表示が続々と発覚し、この思い込みが誤りであったということは明白であると思います。
 マスコミの雪印へのバッシングは不当であり、雪印の被った損害は「報道被害」と言う他はありません。マスコミによる報道被害というと、少年事件の被疑者や被害者のプライバシー侵害ばかりが注目されますが、今回の被害はその被害者の人数、被害金額の大きさから言って究極の報道被害であったと言えると思います。

平成14年2月24日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ