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日本ハムに対する集団リンチ

 食肉偽装事件を引き起こした日本ハムの製品が、各地のスーパーなどから続々と引き上げられはじめ、このまま推移すれば雪印食品の二の舞になりそうです。詐欺事件はもちろん許せませんが、この事件はそれほど重大な事件でしょうか。偽装した1.3トンの牛肉の価額は90万円程度だそうです。
 外務省の職員が詐取した2億円をはじめ、全国の国家公務員、地方公務員が組織ぐるみで詐取した金額に比べれば、微々たるものではないのでしょうか。外務省では詐取した金は返せばいいと言うことで、ほとんどの職員は罪を問われることも失業の憂き目を見ることもなく、形式的な処分でことを済ませました。

 今回の事件では製品に欠陥があったわけでも、製品を購入した消費者に食中毒等の被害が出ているわけでもありません。企業が詐欺事件を起こしたから、その企業の商品をボイコットするというのは、本来の消費者による制裁とは異質の制裁であると思います。消費財(食品)を扱っている企業だけが法的制裁以上の過酷な制裁を受けるのは不公平です。

 今回の詐欺事件で消費者による制裁が必要・妥当であったとしても、消費者によるボイコット(制裁)はあくまで個々の消費者自身が加えるもので、取引業者が加えるものではありません。消費者の買い控え反応が出る前から商品を撤去するのは消費者の意向を無視するもので、消費者のボイコットとは無縁の集団リンチであると思います。

 各地のスーパーが、性急に日本ハムの製品を撤去するのはなぜでしょうか。スーパーにとっては商品の撤去は、売り上げの減少につながるもので、性急な撤去は極めて不可解です。スーパーがこのような集団リンチに加わるのは、参加しないと次にリンチの標的になるのは自分たちだと感じているからだと思います。

平成14年8月11日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ