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単なる反日に過ぎない朝日新聞の「大局」論

 9月22日の朝日新聞は社説で、「大局を見失うまい」と言う見出しで、次のように言っていました。

 
「小泉純一郎首相の訪朝結果をどう見るか、世論にはなお戸惑いがある。悲惨な拉致の国家犯罪が分かれば、普通なら「国交断絶」になりかねないのに、今回は国交正常化に向けて乗り出すという。引っかかりがあっても無理はない。・・・拉致事件の究明や対策にいっそう神経を使うべき事は言うまでもない。同時に大局を見失ってはならない。ためらわず、国交正常化を進めるべきである」

 「大局を見失う」とはどのようなことなのか、朝日新聞ははっきりとは言っていませんが、文脈から考えると、日本は拉致問題が完全解明に解明されない限り、国交正常化とそれに伴う北朝鮮に対する経済援助をすべきでないと言う考え方を指しているのだと思います。

 さて、「大局」とは何でしょう。大局がどのような状況であるかは人により見方が異なります。今回北朝鮮に譲歩を促したのは、自らの経済破綻とアメリカの強硬姿勢であって、太陽政策によるコメ支援の成果ではありません。そのような観点に立つとき、拉致問題をはじめとする北朝鮮のさまざまな国家犯罪(覚醒剤密売や不正送金など)を曖昧なままにして経済援助をし、結果的に独裁者の延命を図ることが、「大局を見失う」ことにならないか疑問がありますが、仮に、北朝鮮と早期に国交正常化を図り、経済援助をすることが、大局を見据えた判断であるとするならば、朝日新聞は、「大局を見失う」ことがないようにと、北朝鮮に対して言うべき事は何もないのでしょうか。北朝鮮に対して、大局を見据えて面子にこだわらず、日本に対して無条件に全面的に拉致査察を認めるようにすべきだとはなぜ言わないのでしょうか。北朝鮮は拉致問題で日本の世論が硬化したことを受けて、「過度に騒ぐと予測不能の事態になる」と言って恫喝しましたが、朝日新聞はこのような行為は「大局を見失う」ものだと言ってなぜ非難しないのでしょうか。

 結局、朝日新聞が「大局を見失うな」と言ってることは、日本に拉致疑惑の徹底解明という立場を譲歩するよう主張しているだけで、北朝鮮に対して譲歩を迫るようなことは何も言っていません。
 以前、小泉首相が靖国神社を参拝したときや、扶桑社の歴史教科書が検定に合格したときに、中国や韓国は、日本の政治家の訪問を断ったり、自衛艦の寄港を断ったり、市民交流を中止したりとさまざまな抗議行動をしましたが、朝日新聞は中国、韓国のかかる行為に対して、近隣国との友好という「大局を見失っている」とは決して言いませんでした。近隣国との良好な関係という「大局」のために、小泉首相は靖国参拝を慎むべきだと言っていました。「大局」のために譲歩すべきは常に日本であって、決して中国や韓国に対してそういう主張はしません。朝日新聞の「大局云々」は、結局、形を変えた反日の主張でしかないと思います。

平成14年9月29日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ