C18
裁判官は逸失利益の算定方法で談合するな

 東京、大阪、名古屋の3地裁が、交通事故の損害賠償に於いて、今までバラバラだった死亡や後遺障害の逸失利益の算定基準を、統一することになったと報じられました。中間利息の控除方法を複利で計算するライプニッツ方式で統一するとともに、若年者の計算基礎を全年齢平均賃金の他に、学歴別平均賃金の採用も可能としたものです。

 読売新聞では、「・・・3地裁は東京地裁の基準に統一すると発表した」となっていますが、産経新聞では、「3地裁の裁判官が統一方式を決め、発表した」となっています。決定したのは裁判所なのか、それとも、裁判官なのか、また、決定はいかなる法的根拠、権限に基づくものなのか明確ではありません。このような決定は拘束力があるのでしょうか。裁判所あるいは裁判官(法廷外では裁判官ではなく、判事だと思います)がこのような基準を作るのは合法なのでしょうか。

 このような基準が必要で合法であれば、後遺障害の認定基準にバラつきがないように、裁判所が後遺障害と逸失利益(労働能力の喪失割合)の認定基準を作ることが必要と言うことにもなります。さらに、刑事事件に於いても、殺人事件について量刑にバラつきがないように、死刑から懲役3年までの運用基準を作ることが必要と言うことになりかねません。

 裁判官がこのような法令と判例以外の基準を自ら作ることは越権行為だと思います。タクシー運転手の「雲助判決」の処分問題では、裁判官の独立性が強調されましたが、このような基準作りは裁判官の独立を侵すことになると思います。

 逸失利益の計算方法に2通りの考え方があり、統一しないと不便、不利益であるならば上級裁判所(最終的には最高裁判所)が判決で統一すればいい話しで、下級裁判所の裁判官が話し合いで決める問題ではないと思います。それは裁判官の談合に他なりません。

 現在、日弁連が同じように交通事故について、過失割合や損害額の認定について、「日弁連基準」と称して統一した基準を作っていますが、業者団体が統一基準を作って運用することはカルテル行為であり、公正な競争を阻害し、消費者の利益に反するものだと思います。

平成11年11月21日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ