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裁判の長期化に対する憂慮は本当か

 旧国鉄職員の不採用問題をめぐる訴訟で、JR各社が全面勝訴しました。これに対して裁判の長期化を憂慮する声がきこえてきます。この点で思い出されるのは甲山事件です。この裁判も24年目で二度目の一審判決が出たという長い裁判です。裁判で被告が無罪となりましたが、判決が出ると、これ以上の長期化を避けるために、検察に控訴を断念するよう求める主張がありました。検察が控訴を決定するや非難の嵐となりました。

 今回の裁判では、勝ったのは民間企業のJR各社で、負けたのは中労委ですが、長期化を憂慮しているというなら、中労委に対して裁判の長期化を避けるために控訴を断念し、一審判決に従うよう求める、という主張が出てきてもよさそうです。中労委が控訴したら、一斉に非難を浴びせるのでしょうか。しかし、そういう動きは全くありません。逆に訴訟に勝ったJR各社に政治的圧力をかけるよう求めています。

 彼らの言う裁判の長期化を憂慮するというのは口実で、実際は単に、訴訟当事者の一方の肩を持ち、その勝利を求めているに過ぎません。それをストレートに言わず、話しをすり替えているのだと思います。

平成10年5月30日      ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る     C目次へ