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政治に介入した大阪地検

 大阪地検特捜部が、横山ノック知事のわいせつ事件で強制捜査に着手し、大阪府庁の知事室や知事公館などが、15人の捜査官により一斉に家宅捜索されました。はたしてこの事件はそのような重大事件なのでしょうか。この種のわいせつ事件は詳しい統計はわかりませんが、全国至る所にいくらでもある事件だと思います。そして、政治家の中にもそういう行為をする人間が、今までにもいなかったわけでもないと思います。

 検察庁はそれらの事件の捜査に当たっては、その都度多数の捜査官を派遣して強制捜査をしているのでしょうか。決してそんなことはないと思います。たとえば万引き事件では、被疑者が容疑を否認しても、検察庁が家宅捜索などの強制捜査をすることは通常ないと思いますが、被疑者が知事の時にかぎって、大勢の捜査官を派遣して自宅の家宅捜索をしたら、それは法の下の平等に反するのではないでしょうか。

 検察は強制捜査に踏み切った理由として、今回の女子大生の供述は信憑性が高いと言っていますが、今までの他のわいせつ事件の被害者の供述には、信憑性が乏しかったのでしょうか。そんなことはないと思います。そんなことを言うのは他の被害者に対する侮辱です。違うのは検察の熱意だったと思います。

 では検察はなぜ今回の事件に熱心だったのでしょうか。それは被疑者が大物の政治家で世間の注目度が高かったことと、被疑者が検察は起訴できまいと高をくくっていると見られたからだと思います。検察はそれを「なめられている」と受け取ったからだと思います。いずれにしても、被疑者の罪の重さ、悪質さとはあまり関係ないことだと思います。今回の犯人が普通の人だったら、80人の弁護士が集まることもなかったでしょうし、被害者も1000万円の損害賠償を要求をして、徹底抗戦することもなかったと思います。

 知事がしても、普通の人がしてもわいせつ事件は、刑事事件としてはあくまでわいせつ事件でしかありません。知事だから重罪と言うことはないはずです。政治家を特別寛大に扱うのは誤りですが、特別厳しく扱う必要もないはずです。法の下では平等に扱わなければなりません。政治家としてふさわしいか、ふさわしくないかとは別の問題です。政治家としてふさわしいか、ふさわしくないかを決めるのは有権者であって、検察庁でもなければ裁判所でもありません。

 横山知事は選挙で選ばれた知事です。「セクハラ行為」をした知事は罷免されると言うルールがあるわけではありません。しかも、彼はセクハラ行為を否定しています。裁判で有罪が決まったわけでもありません。建前上は被疑者、被告人は有罪が確定するまでは「無罪の推定」を受けることになっているはずです。選挙で選ばれた政治家に、検察が引導を渡すようなことはすべきではないと思います。罷免するのであれば、民主政治のルールに則り、リコールすべきであると思います。

平成11年12月23日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る      目次へ