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民主政治に反する「密室裁判」

 7月11日の朝日新聞夕刊第一面トップに、「戦後補償 最高裁で和解」、「強制労働の韓国人に『解決金』」と言う見出しの記事があり、第二次大戦中、女子勤労挺身隊員として日本で働いた韓国人が、当時の雇用企業である工作機械メーカー「不二越」に対して、未払い賃金などを求めていた裁判で、和解が成立し解決金が支払われることになったと報じられました。

 しかし、和解の内容はほとんど明らかにされず、わずかに、「企業側の責任や謝罪には触れず、不二越が『解決金』を支払うことで合意した模様だ」とあるだけです。

 このニュースが、一面トップであることは多くの人の関心事である事を意味しています。また、12面の関連記事で、「・・・下級審での同種訴訟にも大きな影響を与えることになるだろう」とも書かれています。
 そのような重要な裁判が密室(非公開)で行われ、和解の内容も、事実の認定も、時効に対する裁判所の判断も、国民に明らかにされずにいてよいのでしょうか。内容が明らかにされなければ、主権者である国民は、裁判所の判断が妥当であったかどうかを判断することができません。

 今回の訴訟の原告について、記事は、「・・・学校へは行けず、仕事も大人の男性と同じ旋盤での金属の切断作業。外出は許されず、旋盤に巻き込まれて右手人差し指を失った。他の2人も同様で、一・二審判決は『勤務は昼夜二交代性で労働時間も長く、頻繁に空腹を覚えつらい思いをした』と述べた」と報じています。

 当時の労働環境は戦時下でもあり、今と比べればはるかに劣悪であったことは容易に想像できます。一般の日本人でも、空腹で労働時間が長かったのは大差なかったのではないでしょうか。今と比較すれば、労働災害は比べものにならないほど多かったと思います。そして、それらの「被害者」すべてが、十分な補償を得ていたわけではないと思います。
 今回の和解が、時効の成立を否定したものであるならば、その効果は一般の日本人にも及ぶのでしょうか。それとも、韓国人にだけ時効はないのでしょうか

 朝日新聞が記事の中で、ドイツの連邦保障法と比較して日本の対応を批判しているように、この問題で、論じられているのは、一企業、一個人の問題ではないのです。争われているのは、「戦争と補償」、「戦争と時効」の問題なのです。
 和解による解決は好ましくありません。最高裁判所は判決により司法としての明確な回答を出すべきであったと思います。

平成12年7月20日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ