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法律を無視する最高裁

 韓国人が、第二次大戦中の未払い賃金の支払いを求めていた「不二越訴訟」で和解が成立し、被告の機械メーカー「不二越」が、原告の韓国人に3千数百万円の「解決金」を支払うことになりました。一・二審とも時効の成立を認め、被告勝訴であった裁判が、和解に持ち込まれ、原告実質勝訴になったのは、最高裁の意向によるものと思われます。最高裁は、法に基づく「時効」を無視し、被告の企業に義務なきことを強いたことになりますが、判決ではなく和解であるため、その理由、根拠は一切明らかにされず、闇の中になっています。このようなことが許されて良いのでしょうか。

 7月11日の朝日新聞の記事にもありますが、最高裁は今回と同じように「時効」が争点となった、平成10年の「予防接種被害東京集団訴訟」の判決でも、「・・・単に20年経過したと言うことのみをもっていっさいの権利行使が許されないこととなる反面、心神喪失の原因を与えた加害者は、20年の経過によって損害賠償義務を免れる結果となり、著しく正義・公平の理念に反するものといわざるを得ない」といっていますが、時効とはもともと逃げ得を許す制度です。それを正義・公平に反するというなら、時効そのものを止める以外にありません。民事だけでなく刑事においても、犯罪者の逃げ得を許す「時効」は正義に反すると言わなければなりません。

 裁判所には、法律を無視したり、法律の無効を宣言したりする権限があるのでしょうか。最高裁が法律の無効を宣言できるのは、法律が憲法に違反しているときのみのはずです。それ以外は、裁判は法律に基づいて行われなければなりません。「正義」とか、「公平」を根拠に、裁判所が法律を無視すれば、三権分立は有名無実となります。もはや法治国家とは言えません。それは「反革命」を根拠に政治犯を処罰している中国の裁判所と同じです。

平成12年7月22日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ