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逸失利益の「男女格差」、責任を放棄した最高裁

 7月10日の読売新聞は、「逸失利益の『男女格差』」、「最高裁、統一判断示さず」、「下級審判決、ばらつき懸念も」と言う見出しで、次のように報じていました。

 
「交通事故で死亡した少女の逸失利益の算定が争点となった二件の訴訟で、最高裁第三小法廷は、9日各訴訟の上告を受理しないことを決定した。男女合わせた全労働者の平均賃金を算定基準とした東京高裁判決と、女子労働者の平均賃金を基準にした別の同高裁判決がそれぞれ確定した。未就労の女子の逸失利益の算定基準について、最高裁が統一した判断を示さなかったことで、今後判断は下級審に委ねられ、各地で異なる判決が出ることも予想される」

 最高裁はどっちでもいいという判断を下したことになりますが、裁判で当事者同士で争いのあることに、どちらでもいいとは無責任きわまりないことだと思います。裁判官によって判断に違いがあり、当たりはずれがあることになります。これでは法の下の平等が保たれません。下級裁判所で異なった判断があっても、最終的には最高裁が統一した判断を示すからこそ、法の下の平等は保たれていると言えるのです。

 最高裁はなぜ判断を避けたのでしょうか。それは、「今判断をするとすれば、男女別平均を採用した判断を支持せざるを得ない。過激な男女平等判決を下せば、最高裁への批判が高まること懸念される。しかし、かといって男女平等の機運に水を差して、悪役を演じたくはない」。そう考えたあげくの責任放棄だと思います。

 これぐらいの問題で、判断を避けるようでは、最高裁判事としての自覚と適性を欠いていると言わざるを得ません。判断力、決断力を欠いて問題を先送りするような人間は、トップに立つべきではありません。下の者が迷惑します。
 彼らは、しばらく下級審に責任を転嫁しておいて、男女平等判決が徐々に増えていったタイミングを見計らって、批判を浴びそうもない頃合いを見計らって、“画期的”な最高裁判決を出そうと言う魂胆だと思います。

平成14年7月14日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ