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憲法が想定していない事態

 人事院が公務員の給与引き下げを勧告したことを受け、裁判所も裁判官の給与を引き下げることになりました。ご承知のように裁判官は憲法で、在任中は報酬を減額することが出来ないと決められているため、憲法問題が議論されました。今日(9月5日)の産経新聞を見ると、最高裁も減額を了承したとのことです。

 憲法をそのまま読めば、理由がどうであろうと裁判官の給与を減額することは憲法違反だと思います。しかし、それが正しい解釈だとは思いません。憲法はデフレを想定していなかったのです。その意味では欠陥憲法と言うことになりますが、完璧な憲法などあり得ませんから、これはこれでやむを得ないと思います。憲法の想定していない事態が生じたときは、憲法を字句通り解釈して判断するのは誤りであると言うことです。

 平成7年、在日韓国人が地方参政権を求めた裁判で、最高裁は、憲法は外国人の地方参政権を禁じていないという判断を示しました。確かに、今の憲法には外国人の地方参政権を禁じる条項はありませんが、それは、憲法制定当時、外国人に地方参政権がないのは自明のことで、このような議論が起きることを想定していなかったからに他なりません。自明のことは憲法に規定する必要はありません。憲法制定当時想定していなかったことが生じたときに、憲法を字句通り解釈して判断するのは同じように誤りです。

平成14年9月5日     ご意見・ご感想は こちらへ     トップへ戻る     目次へ