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嫡出子と非嫡出子の相続格差 司法の領域を逸脱している違憲論議

 3月28日の毎日新聞は、「非嫡出子の相続分 民法の『嫡出子の半分』は合憲 最高裁判決」と言う見出しで、次のように報じていました。

 
「法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた『非嫡出子』の遺産相続分を嫡出子の半分と定めた民法の規定の合・違憲性が争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(北川弘治裁判長)は28日、合憲判断を示し、非嫡出子側の上告を棄却する判決を言い渡した。しかし、5裁判官のうち2人は『法の下の平等を定めた憲法に違反する』と反対意見を述べた」

 
「一方、反対意見を述べた梶谷玄、滝井繁男両裁判官は『家族関係や相続を巡る社会状況の変化は著しく、大法廷決定以降も、嫡出子と非嫡出子の区別をなくす方向に進んでいる』と指摘した。そのうえで『国際化が進み、価値観が多様化して、両親と子供の関係も変容を受けている状況下では、親が結婚しているか否かという子供が自分で決められない事情で相続分に差異を設けることに格別の合理性は見いだせない』と指摘した」

 少数意見の判事は、「子供が自分で決められない事情で相続分に差異を設けることに格別の合理性は見いだせない」と言っていますが、子供が親が結婚しているかどうか自分で決められないと言うのは当たり前のことで、今に始まったことではありません。それを不合理と言うならば今の民法は制定当初より違憲であったと断罪すべきです。国際化とか価値観の多様化とは何の関係もありません。
 相続のこの点に関しては、戦後民法が改正されて以来、憲法も民法も改正されていないのですから、今まで合憲であった民法が一転して違憲になるというのは、従来の憲法判断が間違いであったという場合以外はあり得ないと思います。

 また、4月1日の産経新聞はこの裁判について次のように報じていました。

 
「島田裁判長(裁判官出身)は最終的に合憲と判断したが、補足意見を述べ、相続分の区分について『社会事情や国民感情などの変遷を踏まえ、絶えず吟味することが必要』と指摘。『立法当時と比べ、そうした事情はもはや失われたとすら思われる状況に至っている』と述べた」

 社会の変化や国民の価値観の変化によって、法律が実情に合わなくなると言うことは十分あり得ますが、それは法律が憲法に違反しているか否かとは別の問題だと思います。
 裁判所が現実の変化を理由に、今まで合憲であった法律の無効を宣言するのは、法律が憲法に違反しているかいないかの審査と言うよりも、法律が現状に合致しているか否かの審査になると思います。そのような審査は違憲立法審査権の領域を逸脱した裁判所の越権行為であり、立法権の侵害であると思います。

平成15年5月18日  ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ