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被爆者援護法、日本の国内法の効力は外国に住む外国人にも及ぶのか

 3月9日の産経新聞は、「在韓被爆者 葬祭料申請認める 長崎地裁初判断 『援護法』国外も適用」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 海外での死亡を理由に被爆者援護法に基づく葬祭料の支給申請を却下したのは違法として、韓国人被爆者の故崔季K(チエゲチョル)さん=昨年七月に七十八歳で死去=の遺族が長崎市を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の判決で、長崎地裁の田川直之裁判長は八日、却下処分を取り消す原告側勝訴の判決を言い渡した。
 田川裁判長は「長崎市に居住していないことを理由にした却下処分は違法だ」と判断した。
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 裁判所は、「長崎市に居住していないことを理由にした却下処分は違法だ」と言っていますが、問題の本質は長崎に住んでいるか否かではなく、日本に住んでいるか否かの問題です。このような捉え方は問題を矮小化するものです。そういう言い方ではなく、そもそも日本の国内法が外国に住む外国人にも効力が及ぶのか、という観点で考えるべきだと思います。

 たとえば、日本で交通事故の被害者を(賠償とは別に)経済的に支援する法律ができたとしたら、そして、その法律に国籍条項がなかったとしたら、日本に滞在中に交通事故に遭い、その後韓国に帰国した韓国人にも適用されると考えるのでしょうか。そんなことは誰も考えないと思います。
 日本政府が韓国に住む韓国人を経済的に支援するのは、税金の無駄遣い以外の何ものでもありません。

 日本の国内法の効力が韓国に住む韓国人に及ぶと言うことが、どういうことなのか韓国人は考えたことがあるのでしょうか。もし、日本政府が韓国に住む韓国人被爆者に対して、給付ではなく何らかの負担や制限を命じたら、彼らはそれに従うでしょうか。

 平成14年に兵庫県の鶴林寺と言う寺から、高麗時代の仏画が韓国人によって盗み出され韓国に持ち込まれた事件がありましたが、仏画は未だに日本に返還されていません。鶴林寺が日本の裁判所に訴えたら、日本の裁判所は日本の国内法に基づき判決を下すでしょうか。そして、韓国人はその判決に従うでしょうか。彼らは、たぶん主権の侵害と言って受け入れを拒否するでしょう。自分の利益になるときだけ日本の国内法の適用を主張するのはあまりに身勝手です。

 裁判所の言うとおり、確かに被爆者援護法には日本国内居住者に限るとの条文はありませんが、日本の国内法の効力が外国に及ばないと言うことは、自明のことなので明文化されていないだけのことだと思います。この点は他の法律でも同様だと思います。韓国人の主張は明文化されていないと言う法の盲点をついたものに過ぎず、この主張を是認した裁判所は問題の本質を見誤っていると思います。

平成17年3月13日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ