C49
NOVAの解約訴訟、商取引の常識を否定した最高裁

 4月3日の読売新聞は、「NOVA割高清算は違法 受講料訴訟で最高裁判決 『解約、契約単価で』」と言う見出しで、次のように報じていました。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------
 英会話学校大手「NOVA」(統括本部・大阪市)との受講契約を中途解約した東京都北区の男性(39)が、未受講分の受講料約31万円の返還を求めた訴訟の上告審判決が3日、最高裁第3小法廷であった。那須弘平裁判長は「中途解約時に、既に受講した授業分の単価を、契約時より高額で清算して差し引くことを定めた規定は、特定商取引法に違反し、無効」とする初判断を示し、・・・

 NOVAの受講契約は、購入ポイント数に応じて授業が受けられ、まとめて多くのポイントを買うと単価が安くなる「大量購入割引制度」を取っている。しかし、中途解約した場合、使用済みのポイントを購入時より高い単価で清算して差し引くため、「返還金が不当に少ない」とする受講者との間でトラブルが頻発していた。

 特定商取引法は、サービス提供期間の長い外国語会話教室、エステティックサービス、家庭教師派遣・・・の6業種の中途解約について、「事業者は実際に提供したサービスの額と、解約損害金の合計しか請求できない」と規定している。最高裁が「実際に提供したサービスの額」について、「契約時の単価で計算すべきだ」とする初判断を示したことで、今後、「大量購入割引制度」を導入している他業種でNOVAと同様の清算方法は認められなくなる。

 判決などによると、男性は2001年、英会話レッスンを600回受講できる600ポイントを、単価1200円で税込み計75万6000円で購入するなどした。386回分を使った後、04年に解約したが、NOVAは清算規定に基づき、受講済みの授業料を契約時よりも高い1回約1680円の単価で清算し、手数料などを差し引いて約12万円しか返還しないとしたため、男性が提訴。1、2審は「清算規定に合理的な理由はない」として、NOVA側に請求全額の返還を命じていた。
---------------------------------------------------------------------------------------------------------

 裁判所は、「清算規定に合理的な理由はない」と言っていますが、この規定の意味するところは、長期契約、大量購入契約の割引制度であり、極めて合理的で常識的な規定だと思います。

 たとえば、1個100円のコップを100個まとめて買えば、1個あたり70円の単価で販売するとして売買が行われた後で、顧客が翌日になって99個をキャンセルすると言ってきた時に、売り手は1個あたり70円で清算し、6,930円を返金するでしょうか。そんなことは絶対しないと思います。そんなことをすれば1個100円のコップを1個70円で売るのと同じ結果になってしまいます。70円の単価で購入したものを1個100で清算するの当然のことで、不当でも何でもありません。

 最高裁の言っていることは、商取引の常識に反します。特定商取引法に言う、「『実際に提供したサービスの額』について、『契約時の単価で計算すべきだ』とする初判断」は、割引制度の否定であり、法律の趣旨とは無縁の解釈と言うべきです。このような判断は意志が弱く約束を守らない受講者を甘やかす一方で、最初から短期契約で割高な受講料を支払った受講者に対して不公平であることは言うまでもありません。今後、割引制度がなくなることで、まじめで意志が固い長期受講者の利益を損なうことにもなると思います。

平成19年4月8日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ