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最高裁のFAX抗議書

 「週刊現代」が神戸の少年事件に関し、犯人の少年の精神鑑定書主文を掲載したことについて、最高裁判所家庭局長は「少年法の趣旨に反し、少年審判への信頼を著しく損なうものであって、誠に遺憾」とする抗議書を講談社にFAXで送ったそうです。

 新聞の報道は簡単すぎて、なぜ精神鑑定書を掲載したことが少年法の趣旨に反するのかよく分かりません。少年審判への信頼を損なっているのは裁判所の秘密主義の方だと思います。裁判所も意地になって少年審判はアンタッチャブルにしたいのでしょうか。しかし、いくら裁判所が「法の番人」とはいえ訴訟当事者でもないものに対して、法廷外でいちいち法の趣旨に反する行為に警告していたのでは、FAXが何台有っても足りないのではないでしょうか。それに、裁判所といっても裁判官ではない、事務方の局長が法律違反を云々するのは、越権行為であると思います。

 それにしてもFAXとはずいぶん安直な方法を選んだもので、最高裁のやる気のなさが窺えます。文春、新潮の時は抗議したのに「週刊現代」の時はおとがめなしというわけにも行かず、かといって世論の大勢は少年法改正へと流れている中で、あまり強硬なこともできずと思い悩んだ末のFAXだと思います。(ところで、裁判所はFAXを正式な文書送付手段として認めるのでしょうか。国民に対してはFAXを認めず、郵便で送れなどと言うことがないようにしていただきたいと思います。また、各裁判所のFAXの番号を公表していただきたいと思います。

 法務省も歩調を合わせて「少年の矯正及び人権擁護の見地から看過できない。被害者遺族の感情面からも問題がある。」という関係三局長連名の「所見」を発表したそうです(法務省には社会防衛の見地はないのでしょうか)。こちらも前回の文春の時のような「謝罪と再発防止策の作成を勧告」などという居丈高な言い方から低姿勢になっており変化が窺えます。

 言論の自由、報道の自由は勝利を収めつつあると思います。日本の言論の自由は、800万、900万部の大新聞に拠ってではなく、出版社の雑誌によって維持されていると言っても過言ではありません。
 本来議論を戦わせるべき裁判所と法務省、日弁連の三者が同じ事しか言わなくなっては救いがないと思います。業界関係者が全員同じ学校(司法修習所)の卒業生という、閉鎖的な戦後の司法制度が「制度疲労」を起こしていると言えます。

平成10年5月26日     ご意見・ご感想は   こちらへ      トップへ戻る     C目次へ