C50
国籍法の違憲訴訟(婚外子の日本国籍認定)−外国人は憲法14条の対象外

 6月5日の読売新聞は、一面のトップ記事で、「国籍法は違憲」、「婚外子に日本籍認定」という見出しで、次のように報じていました。
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 結婚していない日本人男性とフィリピン人女性から生まれた後、日本人男性に認知されたフィリピン国籍の子供が、両親が結婚していないことを理由に日本国籍の取得が認められないのは違憲だとして、日本国籍の確認を求めた2件の訴訟の上告審判決が4日、最高裁大法廷(裁判長・島田仁郎長官)であった。大法廷は、父母の婚姻を国籍取得の要件とする国籍法の規定は、憲法14条が保障する「法の下の平等」に反するとし、10人の原告全員の日本国籍を認めた。
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 裁判所は判決の根拠として、「憲法14条」を挙げていますが、憲法14条は、
「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と言うものです。対象者が日本国民であることが前提です。
 しかるに今回の裁判は、原告が日本国民であるかどうかが争われた裁判ですから、原告の主張を容認する根拠として、日本国民であることを前提とした憲法14条の条文を持ち出すのは、論理的に矛盾しています。

 新聞社はこの判決を記事として報じるのであれば、「憲法14条」を掲載して読者の判断の参考に供するべきだと思いますが、読売新聞の記事は、憲法14条の条文を掲載していません。この点は他紙(産経新聞)も同様です。読売新聞も、産経新聞も問題となった国籍法の条文は、四角く囲った記事で報じているのに、違憲の根拠となった憲法14条の条文を報じないのは不可解と言う他はありません。彼等が憲法14条の条文を報じれば、少なからぬ読者が判決の根拠に疑問を持つと思います。

 続いて報じられている「判決要旨」を見ると、裁判所は次のように言っています。
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 ・・・諸外国では、非嫡出子(婚外子)に対する法的な差別的取り扱いを解消する方向にあり、我が国の批准した条約にも児童が出生によっていかなる差別も受けないとする趣旨の規定が存在し、さらに、多くの国で認知などで自国民との父子関係が成立すれば国籍の取得を認める法改正が行われている。このような国内的、国際的な社会環境の変化に照らせば、準正を日本国籍の取得要件にすることについて、立法目的との間に合理的な関連を見いだすことはもはや難しくなっている。
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 要するに裁判所が言っていることは、今の日本の国籍法が、現代にふさわしくないというと言うことであって、これは憲法に違反しているかどうかとは全く別問題です。法律が合理的であるか否かを判断するのは、裁判所のすることではありません。合理的でないと言って批判する根拠に、いちいち「差別」を持ち出して違憲判決を出すのは、憲法の拡大解釈・論理の飛躍であり、裁判所の越権行為です。

平成20年6月7日   ご意見・ご感想は   こちらへ    トップへ戻る   目次へ