C57
国民の裁判を受ける権利を侵害する、裁判所の「和解の強要」
−青色LED“大幅減額”和解 中村教授「怒り心頭」−
−当事者が「怒り心頭」で、何が「和解」なのか(裁判所の手抜きの手段になっている和解)−


 
平成17年1月13日の読売新聞は、「青色LED“大幅減額”和解 中村教授『怒り心頭』都内で記者会見」と言う見出しで、次のように報じていました。
-----------------------------------------------------------------------------
 青色発光ダイオード(LED)の製法を開発し、勤務先だった日亜化学工業(徳島県)から発明の対価約6億円を含む約8億4400万円を受け取ることで和解した米カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授(50)が十二日、都内で記者会見し、複雑な心境を明らかにした=写真=。
 中村教授は、米国からの帰国途上だったため十一日の和解成立には間に合わず、この日に会見した。一審判決の200億円から大幅減額された形となったことについて「まったく不満で怒り心頭だ」と切り出し、「東京高裁は、6億円という上限をはじめから決めていたように思う」と、裁判所への不信感も見せた。最高裁まで争うことも検討したが、弁護士から「あと一年はかかる」などと説得され、和解に応じたという。・・・
----------------------------------------------------------------------------------

 又、その前日1月12日の読売新聞は、「青色LED和解 発明対価、経営に配慮 東京高裁、競争力維持を重視」と言う見出しで、次のように報じていました。
---------------------------------------------------------------------------------
 ・・・ この和解案は、昨年十二月二十七日に双方に示された。日亜側は、〈1〉支払額が大幅に減額されている〈2〉和解対象には中村教授が在職中に行った個人発明や共同発明がすべて含まれ、今後紛争が起きる可能性がない――ことから、和解に応じる意向を比較的早く固めたとみられる。
 一方、「自分一人の力で発明した」と主張してきた中村教授には、5%という貢献度はあまりに低く、「過去の判例などから裁判官が事前に決めていたのだろう」と落胆を隠せなかった。しかし、「訴訟を早期に終結させ、研究に専念したい」という思いから和解を決心した。
「判決になれば和解案より金額が下がる可能性がある」という、知的財産訴訟の経験豊富な弁護団の判断も働いた。
--------------------------------------------------------------------------------

 中村教授はこの和解に、怒り心頭と言っています。和解という言葉とはかけ離れたコメントです。彼はなぜ判決ではなく、「和解」を選択したのでしょうか。それには記事にもあるように、
「判決になれば和解案より金額が下がる可能性がある」からだと思います。
 弁護士の言葉通り、これは裁判を経験したものの多くが経験する、苦い思いだと思います。

 裁判所は、なぜ判決予定額よりも高額な和解金額を提示するのでしょうか。なぜ、判決の金額と和解案の金額は異なるのでしょうか。裁判が公正なものであるならば、両者は一致するはずではないのでしょうか。
 判決を選択すると、和解案よりも金額が下がるのは、裁判所が判決を回避し当事者に和解を強要したいからだと思います。
 今回のケースでも、
和解案を渋るのが会社であれば、裁判所は、和解を拒めば判決の金額は和解案を上回ると言って会社を脅迫するに違いありません。

平成25年2月25日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ