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高裁にも裁判員制度を−判事の常識は国民の非常識である−


 6月21日の産経新聞は、「裁判員裁判の死刑破棄 高裁で初『前科重視しすぎ誤り』」と言う見出しで、次のように報じていました。
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 妻子に対する殺人罪などで服役し、出所から半年後に男性を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われ、1審東京地裁の裁判員裁判で死刑とされた無職、伊能和夫被告(62)の控訴審判決公判が20日、東京高裁で開かれた。村瀬均裁判長は「前科を重視しすぎた1審判決には誤りがある」として、1審判決を破棄、無期懲役を言い渡した。
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 裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄されるのは初めて。弁護側は無罪を主張しており上告する方針。

 伊能被告は捜査・公判を通じて黙秘していたが、1審は被告の犯行を認定。「前科を特に重視すべきだ」として求刑通り死刑を言い渡していた。

 村瀬裁判長も被告の犯人性を認め、量刑を検討。「よく似た重大犯罪を重ねた場合」に前科を重視して死刑とする傾向があると指摘した上で、「前科と今回の事件に類似性はなく、更生可能性がないとはいえない」と判断した。

 判決によると、伊能被告は
妻を刺殺した後自宅に放火、子供を焼死させたなどとして懲役20年の判決を受け服役。出所後の平成21年11月、東京・南青山の飲食店経営、五十嵐信次さん=当時(74)=方に強盗目的で侵入し、首を刺して殺害した。
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 この判事は「前科を重視しすぎた1審判決には誤りがある」、「前科と今回の事件に類似性はなく」と言っていますが、「妻を刺殺した後自宅に放火、子供を焼死させた」前科と、「飲食店経営、五十嵐信次さん=当時(74)=方に強盗目的で侵入し、首を刺して殺害した」今回の事件とに、類似性があるかないかと言えば、「ある」というのが
健全な常識を持つ素人の判断です。

 凶悪犯罪を日常的に扱っている為に
正常な感覚が麻痺している判事などの業界の人間の目で見れば、些細な違いに着目して、類似性はないという屁理屈も可能だというに過ぎません。このようなときにどちらの判断を採用すべきか、素人の健全な感覚を重視すべきとして採用されたのが裁判員制度です。

 判事は「前科を重視しすぎ」と判断しましたが、反対に裁判員の常識から言えば、この
判事の判断は「前科を軽視しすぎている」と言うことになります。

 そもそも裁判員制度は、裁判所は被告人に甘すぎて判事の常識には任せておけない、
裁判所の常識は国民の常識に合致しないという、裁判所に対する国民の不信から始まったものです。
 その裁判員の判断をこのような理由で覆すようでは、
何のための裁判員制度か分かりません。裁判員制度の否定に他なりません。

 このように高裁判決が許されるのであれば、今後は
高裁にも裁判員制度を設ける必要があります。

平成25年6月28日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次