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諫早湾開門問題−司法の常識は国民の非常識−


 1月23日と2月10日のNHKニュースは、それぞれ「諫早湾 開門にかかわらず国に制裁金 最高裁」、「諌早湾干拓 国の制裁金1億円超える」と言うタイトルで、次のように報じていました。
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ニュース詳細
諫早湾 開門にかかわらず国に制裁金 最高裁
1月23日 18時32分

諫早湾 開門にかかわらず国に制裁金 最高裁

 長崎県の諫早湾の干拓事業で、堤防の排水門を開門すべきかどうか裁判所の判断が分かれていることについて、最高裁判所は国の不服申し立てを退け、開門してもしなくても国に制裁金を科すことを認める決定を出しました。
決定の中で最高裁は、国や地元の関係者に対して自発的に問題の決着を図るよう促しました。

 諫早湾の干拓事業を巡っては、堤防の排水門の開門を求める漁業者側と、開門に反対する農業者などの双方が、それぞれ国に開門を命じた福岡高裁の確定判決と、逆に開門を禁じた長崎地裁の仮処分決定に基づいて、国が従わない場合に制裁金を科す「間接強制」を申し立てています。
 これにより国は開門してもしなくても、どちらかに制裁金を支払わなければならない異例の事態になっています。
国は去年6月以降、開門を求める漁業者側に1日当たり45万円を払い続けていて、これまでの総額は9000万円を超えています。

 国は「相反する司法判断が障害となって対応ができないのに、制裁金を科すのはおかしい」と不服を申し立てていました。
これについて、最高裁判所第2小法廷の千葉勝美裁判長は「
当事者が異なり別々に審理された民事裁判で、判断が分かれることは制度上あり得ることだ。開門するかしないかはそれ自体、国の意思のみで決められることで、相反する司法判断に左右されるものではない」と判断し、国への制裁金を認める決定を出しました。
 今回の決定は、最大の焦点となっている開門すべきかどうかの判断をしたものではありませんが、最高裁は「
今の事態を解消し、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待される」と述べ、国や地元の関係者に対して、自発的に問題の決着を図るよう促しました。


漁業者側「極めて当然の結論」

 開門を求めている漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は23日午後、佐賀県庁で会見し、「極めて当然の結論で、開門する以外にわれわれを満足させる方法はない。開門に向けて、国は農業者に被害が出ないよう早急に対策工事を行い、漁業者側、農業者側、ともに納得がいくようにすべきだ」と述べました。

 農業者側「国の努力不足を暗に批判」
開門に反対している農業者側の弁護団は「開門した場合、国に支払い義務があることを確定させるもので、当然の結果だ」というコメントを出しました。
そのうえで、「今回の決定は最高裁判所の判断に丸投げし、一向に積極的な解決策を提示しようとしない国の努力不足を暗に批判しているものと考えられる。国は決定の内容を真摯(しんし)に受け止め、『開門しない』という形で有明海の再生を目指す具体的な解決策を示すことを強く求める」としています。

 農相「統一的判断を得る必要」
西川農林水産大臣は「国は、開門してもしなくても制裁金を支払う義務を負っている状況に変わりはなく、引き続き厳しい立場に置かれている。一連の訴訟において、速やかに、開門に関する最高裁判所の統一的な判断を得る必要があり、引き続き、関連する訴訟に適切に対応するとともに、問題の解決に向け、関係者の間の接点を探る努力をしていきたい」というコメントを出しました。
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ニュース詳細
諌早湾干拓 国の制裁金1億円超える
2月10日 12時54分

諌早湾干拓 国の制裁金1億円超える

 長崎県の諫早湾で行われた干拓事業で、国が裁判所の命令に従わず堤防の水門を開けないことに対して国に科せられている制裁金が、去年6月からの総額で
1億円を超えました。

 諫早湾の干拓事業では、漁業被害との関連を調べるため国に堤防の水門を開けて調査するよう命じた福岡高裁の判決が確定していますが、国は水門を開けていません。
このため国は去年6月以降、佐賀県と長崎県の漁業者45人に1日当たり合わせて45万円を支払う制裁金を科せられていて、10日、先月分の1395万円を振り込んだことで総額は1億530万円となりました。
一方で、国は干拓地の農業者が申し立てた仮処分で開門を禁じられたため、開門した場合にも制裁金を払うよう裁判所から命じられています。

 国は開門すべきかどうか裁判所の判断が分かれているとして不服を申し立てましたが、先月、最高裁判所に退けられ、開門してもしなくてもどちらかに制裁金を支払わなければならなくなりました。
この結果、国は、開門を求めている漁業者側と反対している農業者側の双方に配慮した解決策を示せないかぎり、
際限なく制裁金を払わなければならない事態となっています。
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 ニュースが、「最高裁は『今の事態を解消し、全体的に紛争を解決するための十分な努力が期待される』と述べ、国や地元の関係者に対して、自発的に問題の決着を図るよう促しました」と報じているとおり、
裁判所に問題解決の意思も能力も無いことは間違いありません。 解決能力のないものが、訴えを受理して意味の無い判決・決定を出しているというのが根本的な問題だと思います。
 これは、
司法のテクニック(常識)としては問題が無いのかも知れません。その為かマスコミや、司法関係者は騒ぐだけで問題意識を持って論じているようには見えません。

 仮に今の法廷での争いが法律論、裁判のテクニックとしては「問題ない」としても、裁判所に解決能力が無い以上、
日々国家に巨額の無意味な損害を与続けているだけであり、当事者にしても解決がいたずらに長引くだけで、裁判所の関与は時間とお金の無駄遣い以外の何ものでもありません。
 裁判所が最初の段階で、裁判所が関与できる問題ではないとして、
農民、漁民双方の訴えを退け、政治に判断を委ねていれば何の問題も無かったのです。
 それを
ハイエナのような弁護士と、無能を自覚せず何にでも口を出そうとする判事の支離滅裂な行動により、当事者に時間と税金の浪費を強いて、国家に莫大な損失をもたらしているのです。

 そもそも行政訴訟なるものが、大きな問題を抱えていると思います。
 行政訴訟の原告達は、あくまで一個人であり、国民の代表でも、農民の代表でも、漁民の代表でもありません。あくまで一個人の利害を訴えているだけです。しかし、行政は一個人の利害だけで判断するわけにはいきません。すべての利害関係者はもとより、全国民の意見を踏まえて判断しなければなりません。

 そうであるにもかかわらず、行政訴訟の法廷にいるのは原告個人と被告の国だけで、
その他の利害関係者は不在です。そのような利害関係者が不在の法廷で、訴えた個人の利害だけを基に国民の代表でもない一介の司法官僚に過ぎない判事の判断で、各地の裁判所がバラバラに判決・決定を出していれば、このような混乱が生じるのは必然的と言うべきです。

 最高裁自身が
当事者が異なり別々に審理された民事裁判で、判断が分かれることは制度上あり得る」などと呑気なことを言っていますが、判断が分かれるなどという程度の問題ではなく、一つの事案について「相反し、相容れない結論が出されていて、その矛盾した結論により日々出血が続いているのです。
 最高裁は
「制度上あり得る」と言って、この矛盾した決定を支持していますが、1億円もの税金が浪費され、更に今後際限もなく無駄金が支払われ続けているこの事態に、最高裁は何の感じるところもないのでしょうか。公務員根性もここに極まったと言うべきです。

 巨額の無駄金の支出はいかなる制度であっても
正当化できません。制度が誤っているのであれば、誤った制度は改められなければなりません。日頃、立法府や行政府のすることを、独断で「誤り」と断定して、排除している最高裁が、この事件については「裁判制度」を理由に「制度上の矛盾」に沈黙するのは、自分に甘いと言わざるを得ません。

平成27年2月12日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ