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最高裁判事指名のニュース、 −“知らせない権利”を行使し、選考の経緯や人物像を何も伝えない日本のマスコミ−
2月10日の読売新聞は、最高裁判所判事に戸倉氏が指名されたことを、次のよう報じていました。
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最高裁判事に戸倉氏
2017年2月10日15時0分 読売
政府は10日の閣議で、3月9日に定年退官する大谷剛彦・最高裁判事の後任に、戸倉三郎・東京高裁長官を起用する人事を決めた。発令日は未定。
◆戸倉三郎氏(とくら・さぶろう)80年一橋大法。最高裁事務総長、さいたま地裁所長。山口県出身。62歳。
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記事は戸倉氏の裁判所内での経歴を簡単に紹介するのみで、過去に関わった主要な裁判での立場や、司法業界での評価、候補者選考の経緯、指名に至った背景などが何も報じられていません。これは早い話が何も報じていないのと同じです。
ここで思い出されるのが、1月31日日アメリカのトランプ大統領が、ニール・ゴーサッチ氏を連邦最高裁の判事に指名した時のニュース報道です。読売新聞は下記のように報じていました。
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トランプ大統領、連邦最高裁判事に保守派指名へ
2017年2月1日11時13分 読売
【ワシントン=岡部雄二郎】トランプ米大統領は31日夜(日本時間2月1日午前)、空席となっていた米連邦最高裁判所の判事に保守派のニール・ゴーサッチ連邦控訴裁判事(49)を指名すると発表した。
最高裁判事は、終身制で国政の重要課題に大きな影響力を持つ。上院で承認されれば、連邦最高裁判事9人のうち保守派が5人と多数を占めることになる。トランプ政権に反発する民主党は抵抗する構えで、承認手続きは難航する可能性もある。
連邦控訴裁は日本の高等裁判所に相当する。ゴーサッチ氏はブッシュ共和党政権下の2006年に控訴裁判事に就任した。米メディアによると、ゴーサッチ氏は、オバマ政権による医療保険制度「オバマケア」が避妊薬・器具を保険の適用対象に加えたのに対し、中絶を認めない宗教上の理由で事業者が適用を拒否できるとの控訴裁判決に関わるなど、保守的な立場で知られる。
トランプ氏は31日、ゴーサッチ氏とともに記者発表に臨み、「大統領にとって国防に次いで重要な決定が連邦最高裁判事の指名だ。ゴーサッチ氏は卓越した法律のスキルを持ち、人柄もすばらしい」と述べた。
今回の指名は、保守派判事の代表格だったアントニン・スカリア氏が16年2月に死去したことに伴うもの。オバマ前大統領が16年3月に中道派とされる判事を後任に指名したが、上院で過半数を占めていた共和党が次期大統領に指名を委ねるべきだと主張し、審議に応じなかった。1年近くも空席が続く異例の事態で、現在、保守派とリベラル派の判事が4人ずつとなっている。
ゴーサッチ氏が就任すれば連邦最高裁は保守派が優勢となり、銃規制や同性婚など全米を二分するテーマで保守派寄りの判決が出る可能性がある。イスラム圏7か国からの入国を制限するトランプ氏の大統領令を違憲とする訴訟の行方にも影響を与えそうだ。
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自国日本のニュースとは天地の違いがある報道ぶりです。
最高裁判所が時には立法府、行政府の上位に位置するほどの強大な権限を持っていることは、日米ともほとんど違いがありません。最高裁判事の選任が極めて重要で有り、国民の関心事であり、マスコミが国民の知る権利に答えなければならない最重要ニュースのはずです。
アメリカの最高裁判事指名を報じる記事を見れば、マスコミが何を報じなければならないかはよく分かります。
しかるに日本の最高裁判事指名を報じるニュースが、わずか数行で、内容的にもほとんど意味の無いことだけというのは一体なぜなのでしょうか。
日本のマスコミは国民・読者に知らせることと並んで、知らせないことを大きな任務にしているのです。知らせることと知らせないことを峻別しているのは、別の言い方をすれば情報操作です。その点では中国のマスコミと同じなのです。
一般国民は重要な決定についてその是非を判断する必要は無い、それは有害である、国民はただ新聞を読んで、専門家(マスコミ、学者)が判断したことを黙って受け入れていればそれで良いと言うのが彼等の考え方なのです。
一方それに対して、政治家などが直接国民に訴えかける行為は、“〇〇劇場”、“劇場政治”、ポピュリズムと呼ばれて非難の対象になるのです。
国民はただ“読売劇場”だけを見て“拍手をしていれば良い”と言うのが彼等のやり方なのです。
平成29年2月14日 ご意見・ご感想は こちらへ トップへ戻る 目次へ