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“人種・平等”の矛盾と欺瞞に鉄槌を下すアメリカ連邦最高裁の革命的判決 −求められる平等は“機会”の平等であり“結果”の平等ではない−

 6月30日のNHKテレビニュースは、「“大学が入学選考で黒人など人種考慮は違憲” 米連邦最高裁」と言うタイトルで、次の様に報じていました。
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“大学が入学選考で黒人など人種考慮は違憲” 米連邦最高裁
2023年6月30日 6時32分  NHK

 アメリカの大学が入学選考を行う上で黒人などの人種を考慮している措置の是非をめぐる裁判で、連邦最高裁判所は29日、措置は
法の下の平等を定めた憲法に違反するという判断を示しました。アメリカでは長年、多くの大学で多様性を確保するためなどとして同様の措置がとられていて、大きな影響が出ることが予想されます。

 この裁判は、アメリカのハーバード大学やノースカロライナ大学が入学選考をする上で、
黒人ヒスパニック系などの人種を考慮している措置について、学生などでつくる保守派の団体がアジア系白人不利になり、差別にあたるなどとしてそれぞれの大学を訴えていました。

 れに対し、大学側は「人種は選考する際の1つの要素にすぎず、措置がなくなれば黒人ヒスパニック系の学生が大幅に減り、
多様性が損なわれる」などと反論していました。

 これについて連邦最高裁判所は29日「生徒は
人種としてではなく、個人としての経験で評価されなければならない」などとして、措置は法の下の平等を定めた憲法に違反するという判断を示しました。

 9人の判事のうち、保守派の6人全員が憲法違反との判断を示したということです。

 今回の判断は45年前に連邦最高裁が示した「大学の入学選考で人種を基準の1つとすることは合憲だ」とした判断を覆した形です。

アメリカでは長年、志願倍率の高い多くの大学で同様の措置がとられていて、今回の連邦最高裁の判断を受けて選考方法の見直しなど大きな影響が出ることが予想されます。

バイデン大統領「裁判所の判断に強く反対」
 連邦最高裁判所の判断を受けてバイデン大統領はホワイトハウスで演説し「
裁判所の判断に強く反対する。アメリカにはまだ差別が存在し、その事実は今回の判断によって変わるものではない」と述べて批判しました。

 そのうえで「今回の判断は多くの人をひどく失望させるものだが、これによって国を後退させるわけにはいかない。多様性こそがわれわれの強みだということを忘れてはならない」と述べて、大学は引き続き多様性の確保に努めるべきだと強調し、関係省庁にそのための方策を検討するよう指示すると明らかにしました。

 一方、野党・
共和党マッカーシー下院議長はツイッターに投稿し「これによって生徒は平等な基準と個人の功績に基づいて競争できるようになり、大学の入学選考はより公平になる」として連邦最高裁の判断を歓迎しました。

連邦最高裁の判断に賛否の声
 今回の訴訟で原告団を率いた保守派の団体の代表は会見を開き「今回の判断は
多様な人種や民族からなるアメリカ社会を結びつける、肌の色を問わない法的な仕組みの回復の始まりだ」と述べ、裁判所の判断を歓迎しました。

 一方、措置の必要性を主張していたハーバード大学は「変革的な教育や学習、そして研究は
さまざまな背景、視点、経験を持つ人々からなるコミュニティーによって成り立つという基本原則は、これまでと同様に今後も真実かつ重要であり続ける」とする声明を発表し、大学内の学生の多様性重視する立場に変わりはないと強調しています。

 また、ハーバード大学の2年生で黒人女子学生のナーラ・オーエンズさんは連邦最高裁の近くで抗議集会を行い「大学で多様性が確保されなければ議会裁判官、大手企業のCEOたちの
多様性も確保されなくなる。私たちのような黒人の声が社会に反映されづらくなる」などとして措置の必要性を訴えていました。

人種考慮「容認されるべきではない」が7割
今回の訴訟で争点となったのは大学の入学選考で導入されていた「アファーマティブ・アクション」=積極的差別是正措置と呼ばれるものです。

「アファーマティブ・アクション」は1960年代、黒人への差別撤廃を求める
公民権運動を経て導入されたもので、長年、不平等な待遇を受けてきた黒人など少数派の人々に教育や雇用などの機会を積極的に与えるものです。

大手調査会社のユーガブとアメリカのCBSテレビが6月行った
世論調査によりますと、大学の入学選考におけるアファーマティブ・アクションについて
▽「
容認されるべきだ」と答えた人が30%だったのに対し、
▽「
容認されるべきではない」と答えた人は70%にのぼっています。

支持する政党別に見ますと
民主党支持層の55%が「容認されるべきではない」と答える一方
共和党支持層では82%が「容認されるべきではない」と答えていて、共和党の支持者の間でより反対が多くなっています。

一方、アメリカにおける人種差別について
▽「依然として大きな問題だ」と答えた人が53%
▽「やや問題だ」と答えた人が37%
▽「全く問題ではない」と答えた人が10%と、90%の人が人種差別の問題が残っていると答えています。

また、大学の入学選考に限らず、雇用や昇進など幅広い分野で考慮するアファーマティブ・アクションそのものについては、53%の人が継続すべきだと答えています。
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1.
 記事には“人種を考慮”とありますが、アメリカ国民全員の
“人種”戸籍謄本などのような公文書に明確に記載されているのでしょうか。以前、フランスではそのような記載は一切無いと言う報道を見た記憶があります。

2.
 また、
混血の場合はどう取り扱われるのでしょうか。先祖を遡って調べて、その中に1人でも黒人がいたら“黒人”になるのでしょうか。

3.
 日系人を含む
アジア系の人は「アファーマティブ・アクション」は適用されず、白人と同じ“逆差別”の対象となっているのはそれで良いのでしょうか。

4.
 
多様性と言う言葉が頻繁に出てきますが、何を基準にして“多様性”というのでしょうか。人種は多様性の要素の一つに過ぎません。人種にかかわらず国民の中にはIQ(知能指数)が高い人もいれば低い人もいて、高い人に偏るべきではないと言い出したら、入学試験そのものが“差別”になりかねません。多様性を重視し徹底させるのなら、くじ引きにする他はありません。“多様性”不平等、逆差別隠蔽・正当化する方便に使われているのではないでしょうか

 以上の4点はアファーマティブ・アクションの
正当性・合理性に疑問を感じさせます。また、現在の日本で暴走している大学や職業における“女性特別枠”の設定についても疑問の声が出てくるべきだと思います。

令和5年7月1日   ご意見・ご感想は こちらへ   トップへ戻る   目次へ