D128
韓国人に罵声を浴びせることは「ヘイトスピーチ」、「外国人差別」か −カウンター達のデモ妨害と大阪弁護士会の介入は非難されるべき−


 7月3日の読売新聞は、「ヘイトスピーチ 差別か 表現の自由か ネット介し集結、デモ 各地でトラブル」と言う見出しで、次のように報じていました。
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〈7月3日 読売新聞 大阪朝刊〉
 在日韓国・朝鮮人の排斥を訴えるデモが広がっている。特定の民族や人種に対する差別を正当化し、助長する行為は「ヘイトスピーチ」(憎悪表現)とも呼ばれる。「韓国粉砕」「朝鮮人撲滅」。彼らはなぜ、過激な言葉で非難するのか。
 ■過激な言葉
 6月22日午後、買い物客や観光客でにぎわう週末の大阪・ミナミの御堂筋に、日章旗や旭日(きょくじつ)旗を手にした集団が現れた。Tシャツの若者や白髪頭のお年寄り、サラリーマンやヒールを履いた女性ら約70人。彼らは列をなして御堂筋を練り歩き、大声で連呼した。
 「竹島を返せ」「韓国を許さないぞ」「朝鮮人は今すぐ日本を出て行け」
 過激なデモの理由は何なのか。主催した「日韓断交共闘委員会関西」の代表世話人は「日本人は差別、人権へのアレルギーが強すぎて思考停止している。悪い人には悪いと言うことが必要」と説明。「ヘイトスピーチでは」との指摘については「差別主義とのレッテル貼りは表現の自由に反する」と語った。インターネットでデモを知り、参加したという男性会社員(33)も「建前の言葉では人の心に響かない。無関心な日本人に在日の問題を知ってもらいたい」と同調した。
 沿道の賛否は分かれた。買い物中だった神戸市灘区の男性会社員(45)は「最近の領土問題などを考えると、不満がたまるのも当然。これぐらいしないと国は動かない」と理解を示したが、大阪府東大阪市の無職男性(63)は「冷静に議論できない時点で彼らの負け。不快なので早く規制してほしい」と話した。
 そして、在日韓国人の男性(23)はこうつぶやいた。
 「私は日本が好きなのに。ごく一部の暴走だろうけど、ただただ悲しく、つらい」
 ■背景には
 2週間前の6月8日には、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)京都支部が京都市の繁華街で同様の街宣を行った。2006年12月に結成された在特会は、活動の先駆的存在で、22日のデモも協賛した。
 在特会などはネットで参加者を募り、東京や大阪などの都市部でほぼ毎週末にデモを決行。さらにその様子を動画で掲載し、新たな賛同者を増やしている。
 一方で、デモに反発する
カウンターと呼ばれる集団も登場。やはりネットの呼びかけで集まり、デモの参加者に対し、「レイシスト(人種差別主義者)は帰れ」「日本の恥や、消えろ」などの激しい言葉をぶつけて応酬している。
 各地でトラブルも起こっている。
 10年8月には、街宣活動で京都朝鮮第一初級学校の授業を妨害したとして、在特会幹部ら4人が威力業務妨害容疑などで逮捕(有罪確定)される事件が発生。今年6月16日に東京都新宿区であったデモでは、
在特会幹部と反対派が小競り合いになり、計8人が暴行容疑で逮捕(3人は罰金刑)された。
 在特会に関するルポ「ネットと愛国」の著者でジャーナリストの安田浩一さんは「彼らは在日韓国・朝鮮人のせいで、日本人が不当に虐げられていると思い込んでおり、生真面目な分、被害者意識を募らせている」と指摘。さらに「ネットと現実社会の区別がなく、ネット上の炎上と同じように物言いを暴走させる。『愛国』をファッションのようにとらえ、差別しているという自覚が乏しい」と分析した。
 ■世界の状況
 1965年、国連で採択された人種差別撤廃条約は第4条で、各国にヘイトスピーチを規制する法律の制定を求めており、条約締約国175か国(5月現在)中、英国やフランス、カナダなどで規制法が存在する。
 これに対し、日本や米国は条約を締約したものの、「集会、結社、表現の自由」を尊重する観点から第4条の一部については留保しており、規制に慎重な姿勢を示している。刑法の名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪に当たる可能性もあるが、攻撃を受ける対象が特定の個人や団体ではない場合は取り締まることはできない。
 ヘイトスピーチに詳しい小谷順子・静岡大教授(憲法)は「被害者の人権や民主主義を支える議論空間に及ぶ害悪を考えると、悪質なヘイトスピーチを規制することは憲法上可能かもしれない。しかし、政府がそれをきっかけに、表現規制に乗り出す恐れなどにも留意しなければならない。法規制の是非の前に、ヘイトスピーチの実態を調査する必要があるだろう」と指摘する。
 ◆「法的に許されない」 大阪弁護士会が会長声明 
 大阪弁護士会(福原哲晃会長)は2日、JR鶴橋駅など大阪市内の街頭で、在日コリアンに対する民族差別を扇動する言動が繰り広げられているとして、「基本的人権を尊重するわが国において法的に許されない」とする会長声明を発表した。
 声明は「憲法13条
保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷つけ、在日コリアンの自由や安全を脅かし、日本人も含めた居住者の平穏に生活する権利を侵害するものだ」と指摘。市民的及び政治的権利に関する国際規約や人種差別撤廃条約と照らして、「表現の自由として保護される範囲を逸脱している」としている。
 
 〈ヘイトスピーチ〉
 過激なデモや街宣を巡っては、安倍首相が5月の参院予算委員会で「他国の人々を誹謗(ひぼう)中傷するのは全く間違い。結果として自分たちを辱めている」と指摘。その後、国連社会権規約委員会も日本政府に対し、憎悪表現や汚名を着せる表現を防ぐよう求めた。
 
 写真=日章旗などを手にデモ行進する参加者(6月22日午後、大阪市浪速区で)
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 特定の人種、民族である事だけを理由とした罵声ではなく、政治的理由があって罵声を浴びせることが「差別」や「ヘイトスピーチ」になるはずがない。この点はD126「韓国人に罵声を浴びせると“ヘイトスピーチ”になるのか」に書いたとおりです。

 記事では、「デモに反発する『
カウンター』と呼ばれる集団も登場。やはりネットの呼びかけで集まり、デモの参加者に対し、『レイシスト(人種差別主義者)は帰れ』『日本の恥や、消えろ』などの激しい言葉をぶつけて応酬している。」と報じていますが、現場で暴力事件が起きたのは、これらの人たちの行動が直接の原因と思われます。

 記事はこのカウンター達の行為を論評していませんが、
他人の正当なデモ行進に対して、抗議、対抗、妨害行動を取ることは、正当な行為と言えるのでしょうか。

 言うまでもなく我々には表現の自由が
保証(保護ではありません)されています。従ってカウンター達が別の時間、別の場所で抗議行動をする分にはそれは彼等の正当な行為と言えますが、在特会のデモ行進に抗議・対抗するために、同一の場所・時間で行動することは、他人の正当な権利を侵害することになると思います。
 例えば駅前で許可を得て
選挙演説をしている候補者に対して、執拗なヤジや怒号で演説を妨害することは、正当な権利の行使とは言えません。これと同じです。
 もし、カウンター達の対抗行動が、暴力事件の引き金になったのであれば、
彼等の行動は強い非難に値します。

 該当でのデモ行進は警察の許可が必要ですが、カウンター達のデモは警察の許可を取っていたのでしょうか。もし、許可を取っていたのであれば、今後は同一の場所・時間のデモ行進は不許可とすべきだと思います。もし、許可を取っていなかったのであれば論外です。

 記事の中である通行人の、「冷静に議論できない時点で彼らの負け。不快なので早く規制してほしい」と言う意見が紹介されていますが、デモ行進は“示威行進”とも訳されるように、本来冷静な議論とは別のものです。

 記事は、「彼らはなぜ、過激な言葉で非難するのか」とも言っていますが、彼等の行動が当初から過激だったわけではありません。平穏なデモ行進の段階で、すべてのマスコミが黙殺し続けたことが、デモ行進過激化の原因であり、今になって「冷静な議論」と言うなら、もっと早い段階で言うべきだったと思います。

 また1人の韓国人の「私はこの国が好きなのに・・・」と言う言葉も紹介されていますが、そういう言葉は困ったときだけ言っても信用されません。本当にそう思っているのなら、普段から、「強制連行」、「地方参政権」、「年金差別」、・・・などとほざいている同胞に対して言っていれば、多少は耳を傾ける価値があったと言うべきでしょう。ただし、彼等が日本を好きだからと言って、日本人が韓国を好きになるとは限りません。

 大阪弁護士会が誰にも頼まれもしないのに(あるいは密かに誰かに頼まれたのか)、「憲法13条が
保障する個人の尊厳や人格権を根本から傷つけ、・・・表現の自由として保護される範囲を逸脱している」と言ってデモ行進を非難していますが、憲法13条は「すべて国民は・・・」とあるとおり、日本国民の権利を尊重(保障ではありません)すると謳っているのであり、「在日コリアン」は国民ではありません。憲法を持ち出すのなら、21条の「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障(保護ではありません)する」に言及すべきです。
 ちなみに憲法の該当する条文は下記の通りであり、大阪弁護士会は、
「尊重」を「保障」と、「保障」を「保護」と言い換え、重要な点をごまかして虚偽の主張をしています。

〈日本国憲法〉
第十三条  すべて
国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 仮に在日コリアンが憲法13条の対象であったとしても、個別の事件・事案で、言論の自由と個人の尊重という、双方の人権が対立する場合に、弁護士
業者の独占的団体が一方に肩入れする発言をすることは、業務上の立場を悪用した不正行為と言うべきです。

平成25年7月4日   ご意見ご感想は こちらへ   トップへ戻る    目次へ