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アメリカ人権外交のダブルスタンダード

 10月16日の読売新聞夕刊は、パキスタンの軍事クーデターに対するアメリカの対応を次のように伝えました。

 「クリントン大統領は15日、ロイター通信とのインタビューで、軍事クーデターの起きたパキスタンの早期民政移管の必要性を強調する一方、解任されたナワズ・シャリフ首相の復帰には必ずしもこだわらない姿勢を示した。大統領は『原則として、米国を含むいかなる国も他の国の指導者を選ぼうとしてはならない。それらは彼らの(その国の人々)の仕事だ』と述べ、パキスタンの指導者選びはパキスタンの国民にゆだねるべきだとの考えを示した」

 軍人のクーデターを支持するわけではありませんが、クリントン大統領の言うことは当然のことだと思います。しかし、それではアメリカ(欧州諸国も)は、なぜミャンマーに関してはアウンサン・スーチーにあれほどこだわっているのでしょうか。軍人政権が選挙の結果を無視して政権に居座ってから9年も経っているのに、執拗に経済制裁を科したり、国際社会から締め出そうとしたりして圧力をかけ続けているのはなぜでしょうか。

 それは一つには、パキスタンが、伝統的に反米、親露的なインドに対抗する、アメリカにとって重要な国であり、歴代の軍事政権も親米的であったのに対して、ミャンマーはアメリカにとって重要な国ではなく、過去の軍事政権も親米的ではなかったからだと思います。そして、もう一つはアウンサン・スーチーは、イギリスに留学し、イギリス人と結婚している親欧米的な人物であるからだと思います。アメリカは「人権」だけでアウンサン・スーチー女史を支援しているわけではないのです。

 一方、わが国にとってミャンマーは、先の大戦でわが国が独立を支援して以来の友好国で、一般国民、軍人共に親日的な人々が多い国です。アメリカに追随して厳しい制裁を続けることは、わが国にとって必要がないばかりか、国益を損なうものであると思います。

平成11年10月17日   ご意見・ご感想は   こちらへ     トップへ戻る      目次へ