E13
矛盾している「人権外交」

 オーストリアで“右翼政党”自由党が連立政権に参加することに対して、EU14カ国は、もし同党の連立参加が実現すれば、オーストリアとの公的関係の凍結などの制裁措置を科すことを警告しました。2月2日の読売新聞は、「欧州委員会は緊急討議後の声明で、欧州委が、アムステルダム条約で規定された民主主義、自由、基本的人権、・・・の『後見人』であることを強調し、これらの基本理念が侵害されることは許容できないとしている」と報道しています。
 アメリカ政府も国務省のフォーリー副報道官が、「もし、連立政権が成立すれば、対米関係に影響をきたす。我々は必要な行動を検討することになろう」と述べ、モスクワ訪問中のオルブライト国務長官が、連立協議をしている保守系国民党のシュッセル党首に直接忠告したそうです。

  EU諸国やアメリカは一体いかなる根拠で、オーストリアに対してこのような干渉をするのでしょうか。EU諸国は「民主主義、自由、基本的人権」を根拠にしていますが、民主主義のルールに基づいて行われた選挙結果に干渉することは、「自由と民主主義」の否定に他なりません。アメリカやEU諸国はミャンマーの軍事政権が、民主主義のルールに基づいて行われた選挙結果を踏みにじったと言って、今なお経済的、外交的な制裁を科しています。選挙結果を尊重するのが民主主義だというなら、オーストリアの選挙結果をも尊重しなければなりません。

 オーストリア国内の連立政権協議に外国が干渉することは正当化できません。外国政府による抗議や制裁は、連立によってできたオーストリア政府が、実際に人権と人道に反する行為を行ってからにすべきです。 

平成12年2月3日   ご意見・ご感想は  こちらへ     トップへ戻る      目次へ